肩の石灰

肩の石灰を溶かす?治療法を解説

投稿日:

肩の激痛があるときにレントゲンを撮ると、

「肩に石灰が溜まってますね。これが痛みの原因です。注射しておきましょう。」

とサラッと説明、患者さんはよくわからないまま注射される・・・

なんて診療をしてしまう整形外科医がいます。

それは心配ですよね。

 

 

そして、そんな診療をする医師の注射はけっこう効かなかったりします。(これは何ら根拠のない僕の個人的印象ですが。)

ということで、今回は肩に石灰が溜まった状態、診断名「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」に対する注射について解説していきたいと思います。

 

ときには「石灰を溶かしましょう!」

と言って注射をする人もいるようですね。注射を溶かす注射は現状ではありません。
ただ、石灰を溶かすという表現が正しいかはわかりませんが、そのような状態を目指す治療はありますので解説を加えてまいります。

 

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩の石灰化(石灰性腱炎)での基本は注射治療

この肩の石灰化で痛みが激痛になっているときには、

「何でもいいからこの痛みをどうにかしてくれ!」と言わんばかりの剣幕でいらっしゃることがあります。

 

ただ、さきほど述べたように石灰が溶けるときに激痛になることが多いわけです。

ですから、

「この激痛は溶ける反応なのであと2週間我慢してください。」

と言いたくなるんですが、

そんなことはとても言えない痛がり方でいらっしゃるので、安心材料として、

「まずこの激痛を注射で抑えるようトライしてみます。でも、この激痛はどちらにしてもずっと続くものではないので、安心してください。」

というような説明をしています。

 

 

もちろん、激痛だからといって、「じゃあ、急いで手術で石灰を摘出しましょう!」というのはやり過ぎですね。

そこでどんな注射をするのか?
ということです。

石灰の周囲の炎症を起こしている部位にステロイドを注入

当然のことながら石灰の周囲に炎症が起こっています。
ですから、そこに強く炎症を抑えるステロイド薬を注入する注射が基本です。

大雑把には肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)というスペースに打ちます。ある程度いい位置に注射されていれば、これでほとんどの患者さんはだいぶ痛みが楽になったと、後日受診されたときに報告してくれます。

石灰そのものを吸引したり食塩水で洗浄したりも

もう少し直接的な石灰に対する方法としては、

石灰をそのものに少し太めの針を刺して、吸引して取り除いたり、滅菌された生理食塩水を注入しては吸引してを繰り返したり(洗浄)
ということをやる先生もいます。まぁ・・・これは、痛いです(苦笑)

この場合はよりピンポイントに注射を打たないといけないので超音波を使って見ながら注射をすることが多いです。
さらに、石灰がよっぽど柔らかい段階じゃないと意味がありません。

テキトーな注射では効果が足りないこともあり

これらの注射はしっかりといいところに注射をすれば、結構な即効性、高い効果が期待できます。

少なくとも激痛は治まることが多いのです。ただ、肩の専門でない先生などが注射をすると、
石灰からは距離のある場所に針先があったり、滑液包内ではなく三角筋内に針先があったりなどして、
効果が少ない
ということが起こりえます。

肩の専門でない先生だと、肩の注射は慣れた方法1種類しかやらない先生もいます。

ありがちなのは・・・ 肩の後方から打って、大結節の前方よりに存在する石灰とその周囲の滑膜炎部分に届いてないケースです。

しかし、石灰もさまざまな部位にできますし、注射を主にする肩峰下滑液包というのも関節のように完全なスペースというよりは滑膜に満ちた領域ですから、どこからどこに打つのか?針をどれほど進めるのか?ということはとても大切です。

つまり、注射の針先の位置というのは重要です。

ですから、もし注射の効果がかなり少ない、効いたか効いてないのかわからないという程度であれば、早めに肩の専門に相談してみていただくのもいいかもしれません。

肩の石灰化(石灰性腱炎)で注射が効果ないときの治療法

激痛が続いてしまうとき

激痛が続くときは
これまで解説したように注射が正しく石灰周囲の炎症部位に届いていない

というケースが圧倒的に多いです。

 

ですので、まず肩を専門とする医師にかかっていただくのをオススメします。

 

そして、いい位置に注射はされているにもかかわらず
激痛が続くというときには
別の原因も念頭に入れないといけまえん。

それは

  • 腱板断裂(腱板というスジが切れてしまった)
  • 椎間板ヘルニア(首の神経を圧迫している)
  • 肩の中が化膿してしまった(化膿性関節炎)
  • 痛風発作

などを念頭に精密検査を進めていくことになります。

激痛ではないけど動かしたときの痛みなどが残るとき

また激痛ではないけど、

痛みが続いてしまうというとき。

 

この場合に考えるのは

  • 石灰によるインピンジメントが起こっている可能性
  • 実は石灰は痛みの原因でない可能性

です。

前者の石灰によるインピンジメントが起こっていると判断した場合の治療は、
石灰を摘出する関節鏡手術を行うことも選択肢です。

インピンジメントについてはこちらをご参照ください。

肩のインピンジメント症候群の症状と治療を解説

今回は肩関節の痛みの1つの原因である インピンジメント症候群について 解説いたします。 肩の腱板損傷との関連もあるのが インピンジメント症候群です。 そこらへんも含めて できるだけていねいに解説いたし ...

続きを見る

肩の石灰化 手術に踏み切るポイント解説

それではまず肩の石灰化の手術に踏み切るポイントについて解説いたします。

初回の激痛の時点で急いで手術はしない

救急外来にいらっしゃるような突然来る肩の激痛。この多くは石灰が吸収される反応、そのときの炎症が原因とお話ししましたが、

それゆえ、この時点で痛みが強いからと言って手術をするということはお勧めしません。時間経過を待ったり、適切な注射を行えば痛みが引くことが多いわけですから。

注射も含めた治療で痛みが改善しない場合

注射や消炎鎮痛剤の内服、リハビリなどを行っても痛みが改善しない場合は手術を考えるというのは基本ですが、

その痛みがどの程度で、日常生活、もしくはスポーツ、仕事にどの程度の支障が出ているのか。
そして、どのくらいの期間、改善しないのか?

ということを総合的に判断して手術を決めます。

少なくとも痛みが2週間経っても続いてしまうから、という理由では手術はオススメしません。一般には3ヶ月くらいは経過を見てみることが推奨されています。

激痛は改善しても可動域制限が長期に残る場合

強い痛み改善しても、肩をなかなか挙げられないというような可動域制限が残ることがあります。

 

その場合は主にリハビリテーションを行いますが、それでも改善しなければ、これも手術が選択肢になります。

肩の石灰がどれくらい残っているかの評価は必要

ここまで説明したように痛みや可動域制限が改善しないとして、ご相談の結果、手術をしましょうとなることはあります。

そのときに初回のレントゲンで肩の石灰を確認しただけだと、実際、手術の時には吸収されてほとんどなくなっているというケースがあり得ます。

要は症状は残っているけど、石灰は実は吸収されていたというケースです。

その場合は特に残った症状(痛みや可動域制限)の原因を特に注意深く調べる必要があります。

それは関節包という関節の膜が分厚くなって肩の可動域が狭くなるような凍結肩と呼ばれる状態だったり、腱板損傷があったり・・・
いろいろな可能性を考えます。

 

更に言うと、そもそも石灰化が残ってしまって肩の痛みも残ってしまったとして、それが本当に石灰化を取り除くような手術で改善できる痛みなのかは常に注意して見ています。

肩の石灰化の手術方法

肩の石灰化に対してここまで説明したようなポイントを踏まえて手術をするとなったときにどういった手術をするのでしょうか?

関節鏡を使って腱板の表面をよく観察し石灰を見つける

いまは関節鏡を使って石灰を除去する手術が主流です。

arthroscope surgery

関節鏡という内視鏡を使って肩関節の中から外から石灰が溜まっている腱板を観察します。

石灰が外に飛び出していることは多くなく、表面上は見えません。

しかし、炎症を起こしているので腫れていたり、充血して赤くなっていたりします。また、術前にMRIやCTなどの精密検査で3次元的にどこに石灰があるのかをしっかりとイメージして手術に望みますので、表面的に石灰が見えなくても石灰がどこにあるかを見つけることはできます。

石灰を見つけたら、できるだけ掻き出す

そして、石灰があると判断した場所の腱板に筋肉、スジの線維の方向に沿って切れ目を入れます。(線維の方向に垂直に入れてしまったらその時点で思いっきり腱板断裂ですから方向には気を使います。)

そして、切れ目に細い棒や棒状のシェーバーという吸引しながら削る機械を入れて、石灰を掻き出し、吸引していきます

この方法でできる限りの石灰を取り除きます。

 

できる限りと言ったのは、徹底してゼロにすることにこだわると、石灰があるのは腱板の中ですので、大きな腱板損傷を作ることになってしまいかねません。

もし多少石灰が残ってしまっても、手術でこのように直接クリーニングすると、そこに再度炎症が起こりますので、その結果、残りが吸収されるというメカニズムも期待します。

掻き出した後に腱板にあいた穴をふさぐ≒腱板断裂手術

できる限り石灰を掻き出して吸引した時点で腱板の状態を評価します。

小さめの石灰であれば、ちょっとした最初の切れ目があるだけで縫う必要がないくらいのこともありますし、

大きめの石灰を除去した後はどうしても、腱板に穴が空いたような、まさに腱板断裂状態になることもあります。
その場合は腱板断裂の手術と同様に強い糸で縫合したり、骨に糸付きのネジ(アンカー)を挿入して縫合したりします。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この石灰を掻き出して、その後の腱板の穴を修復(糸で縫合する)という一連の流れを関節鏡で行うわけですが、その関節鏡カメラからの映像がこちらです。

肩の石灰化の手術費用はどのくらい?

気になるところですよね。

肩の石灰化の手術にかかる費用はどのくらいなのか?

 

これは病院の治療方針や入院期間などによって変わりますが、

3割負担の患者さんの場合は

20万円から30万円の間くらいではないかと思いますが、

 

ただ、それをすべて負担しないといけないかというとそうでないことが多いです。
医療保険や公的な助成で負担軽減ができることがあるからですね。

限度額適用認定という制度を活用しよう

とくに限定額適用認定という制度は知っておく必要があります。

これは、入院・手術等で診療費用が高額になる場合、あらかじめ保険者から『限度額適用認定証』の交付を受け、医療機関の窓口に提示頂くと、診療費用の患者様負担額が軽減される制度です。

診療費用が高額となった場合、全額をお支払い頂いた後でも保険者に対し申請を行えば、この制度で定められた自己負担限度額を超えた金額について払戻しを受けられます。

しかし、事前に申請を行い提出頂くことで、一時的な多額の現金の支払いを軽減できます。 (入院時の有料個室や食事等の保険対象外の医療費は対象外)

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat550/1137-91156

このようなサイトも参考にしながら、ご自身の健康保険の保険者にお問い合わせしてみてください。

肩の石灰化の手術は入院が必要?

石灰化の治療はさきほども述べたとおり関節鏡手術で小さい傷でできますから、

「入院は必要ですか?」

ということはよく質問いただきます。

 

結論から言うと、入院は必要とお答えしています。

 

病院によっては神経ブロック麻酔のみで、全身麻酔はかけずに日帰り手術を行う病院もあるようですが、

  • 神経ブロック麻酔の効き具合の個人差で術中の痛みが抑えきれない
  • 多少の鎮静(眠る)をするにしても手術中に意識が戻って怖い思いをしてしまう
  • 手術後の鎮痛処置が痛み止めを飲むか坐薬をするかという選択肢しかなくなる

というような可能性がありますので、肩の手術においてはすべて全身麻酔で行うため、

手術の前の日に入院し、手術翌日に痛み具合や体調の様子を見て、翌々日に退院。

という3泊4日をベースに、さらにリハビリや生活指導などの期間としてご希望あれば1-2週間(ときにもっと長く)というような感じで入院されるケースが多いです。

肩の石灰化の手術後はリハビリが必要?

肩の石灰化の手術は石灰を掻き出して終了と言うよりは、掻き出したあとの腱板も縫合していることが多いので、その腱板が修復され、肩の関節の機能(可動域や筋力)が回復した状態が目指す状態(完治)です。

ということからすると、やはり手術後にリハビリテーションは必要と考えています。

完全な腱板断裂ほどではないにしろ、腱板断裂に準じたリハビリテーションを行っていますので、こちらの記事もご参照ください。

肩関節鏡手術
腱板損傷(断裂)のトレーニング&リハビリを中心に手術まで解説

今回は肩腱板損傷のトレーニングとリハビリ方法のポイント ということで、 手術を行わない、行っていない保存療法におけるリハビリと 手術におけるリハビリテーションについてお伝えします。 さらに保存治療や手 ...

続きを見る

石灰を溶かす治療はあるのか?

石灰が溶けるということで言えば、前半で話したように身体の反応として溶かすということはあります。

これは炎症反応の一環ですので痛みが強かったりするわけです。

 

しかし、外から石灰を溶かすような成分の注射というものは現状ではありません。唯一、さきほども述べた太い針で吸引するなんていうのは溶かすかのようなイメージですが、それはむしろ「溶けている」石灰を吸い取るというようなイメージです。

カタい石灰は注射で吸引はできません。

 

もう一つは現状ではやっている場所が少ないのですが体外衝撃波という治療があります。これは元々、尿路結石の治療で行われているものの応用で、肩の石灰も数回で消失したという報告もありますが、まだ一般的とは言いがたいという段階です。また、大きい石灰には効果が少ないという報告もあります。これも溶かすというよりは、壊すに近いかもしれませんね。

まとめ

今回は肩の石灰化(石灰性腱炎・石灰沈着性腱板炎)を溶かす?ということで、実際に行われる注射療法、手術について解説してまいりました。

激痛をまず注射で抑えたとして、その後、自然と石灰が吸収され、痛みが残らなければいいのですが、石灰が残ってしまい、痛みもじわじわと残る場合は手術も考える必要が出てきます。

少しでも参考になりましたら幸いです。

Mail Magazine

より深い医学情報に加え、タフなフィジカルマインド
そして圧倒的なパフォーマンス・成長必要なすべてをお届けします。

こちらにメールアドレスを入力してご登録ください。

  • ※登録後、メールが届いていない場合は、迷惑メールフォルダに入っている場合がございますので、ご確認ください。
  • ※登録されたメールアドレスには、歌島大輔公式メールマガジンが配信されます。
    不要と判断された場合、メール下部の配信解除URLから簡単に配信を解除できます。

診察のご相談(神奈川/東京/静岡)

肩の診察・相談

今すぐCHECK

こんな方におすすめ

  • 肩を動かすと痛い
  • 腕が痛い
  • 肩が痛くて眠れない
  • 肩が上がらない
  • 肩が回らない
  • 腱板損傷と言われた
  • 肩が脱臼した
  • 鎖骨が骨折した

スポーツ復帰への
診察・相談

今すぐCHECK

こんな方におすすめ

  • スポーツ復帰の不安
  • パフォーマンス低下の不安
  • スポーツに支障がある
  • 肩以外の部位の相談希望

オススメ!

メールマガジン(メルマガ)はこちら

今すぐCHECK

得られる情報

  • 医師と病院の使い方(無料)
  • 革命的スポーツ復帰術動画講座(無料)
  • マインドの使い方有料教材
  • タフなフィジカルの作り方有料教材
  • パーソナルメディカルコーチングの案内
  • 日々の医学情報
  • 有名スポーツ選手の心と身体の秘密
  • この記事を書いた人

歌島 大輔

肩/スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療/手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

オススメ記事

肩関節鏡手術 1

肩という関節の治療を専門としている整形外科医は日本にどのくらいいると思いますか? 実は、整形外科医というのは日本全国に内科、外科に次いで多いんです。 意外かもしれませんね。 内科や外科なんていうのは、 ...

2

スポーツの怪我を予防するときに、まず考えるのは、トレーニングをして、ストレッチをして・・・身体を強く、しなやかにしていこうとします。 これは当然必要なことなんですが、 それだけではスポーツにおける怪我 ...

3

今回は肉離れをどう予防するか?ということの基本的な考え方から、具体的な予防方法までを解説いたします。 肉離れはスポーツパフォーマンスが上がれば上がるほど、リスクも高まると言っていい、厄介なケガです。 ...

4

今回は肩の腱板損傷の特に保存療法におけるリハビリテーションについて解説します。肩を専門とした外来をしていると、当然なんですが、肩腱板損傷の患者さんを多く診察します。 腱板損傷には程度があって、ちょっと ...

-肩の石灰

Copyright© 歌島大輔 オフィシャルサイト , 2019 All Rights Reserved.