肩関節脱臼

肩関節脱臼の痛みがいつまでも残るときの原因をわかりやすく

投稿日:

今回は肩脱臼後に
痛みがいつまでも残ってしまうことが時にあります。

この痛みがいつまで残ってしまうのか?
心配になってしまうと思います。

多くの肩脱臼後の痛みは安静時の痛みは1-2週のうちに相当軽減し、
肩を動かしたときの痛みも1ヶ月くらいで気にならなくなるくらいが一般的です。

それに比べて長期にわたって痛みが残る場合の
考え得る原因がいくつかありますので、
治療も含めてできるだけわかりやすく解説いたします。

こんにちは、肩を専門とするスポーツドクターの歌島です。
今回も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩脱臼の直後の痛み

肩の脱臼直後の痛みは、
そりゃ痛いですよね。

外れて安定した位置では
痛みが少なめで、
少しでも動かすと激痛が走る

というような状態だろうと思います。

それ自体は、ある意味当然な痛みです。

 

この外れている状態での心配な症状は
こちらで解説しておりますが、

肩以外に肘から先にしびれや
痛みが走っているときですね。

神経障害を疑います。

 

この場合の治療は何より早く整復(元の位置に関節をはめる)ことに尽きます。

整復についてはこちらもご参照ください。

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整復後の痛み

整復後は
強い痛みは引いているはずです。

ただ、脱臼の時に傷めた
関節唇や関節包、軟骨などが
痛みの原因として残りますから、

多少の痛みはあって当然です。

こちらも同様で神経障害を疑う症状を注意します。

 

この場合の治療は肩の安静です。
三角巾やときにバストバンドというバンド上のコルセットを腕ごと巻いてしまう
というような方法がとられます。

Portrait Of Young Man With Arm In Sling

初回脱臼後は3-4週間の安静をすることが一般的です。

整復後しばらくして痛みが残るケース

これが一番問題ですね。

冒頭でも述べたとおり

肩脱臼後の痛みは安静時の痛みは1-2週のうちに相当軽減し、
肩を動かしたときの痛みも1ヶ月くらいで気にならなくなるくらいが一般的です。

 

それでも整復後も
痛みが残るときは

可能性は高くないですが、
さまざまな問題が考えられます。

原因1:脱臼の時に骨折もあった

これは整復前後で
発見しておくべきモノですが、

脱臼時や整復のときに
骨折も起こっていることがあります。

レントゲンで最初はわからないような
骨折もあり得ますので、

レントゲンを何回か撮る
というのは基本です。
こちらで詳しく解説しております。

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肩の脱臼 + 上腕骨大結節骨折

一つ目は肩の脱臼とともに大結節(だいけっせつ)が骨折してしまった状態です。

画像引用元:J Shoulder Elbow Surg. 2002 Jul-Aug;11(4):389-400.

肩が脱臼しないように頑張ってくれている安定化装置はいくつかあります。

  • 関節唇(かんせつしん)
  • 腱板筋群(けんばんきんぐん)
  • 関節包(靭帯)

これらの中で腱板筋群がくっついてる骨が大結節です。

そして、この腱板筋群の頑張りもむなしく脱臼してしまったときに、腱板筋群に過剰に引っ張られてしまって大結節が裂離骨折を起こしてしまう。

というケースが1つ。

また、肩の脱臼はほとんどが前方脱臼ですが、その前方脱臼した時に上腕骨の後外に位置する大結節の根本が受け皿側である肩甲骨関節窩の前方と衝突します。

そのメカニズムでできる陥没病変をHill- Sachs病変というわけですが、それが陥没ではなくて完全に折れてしまえば大結節骨折になってしまう。

そんなケースもあります。

肩の脱臼 + 上腕骨頚部骨折

もう一つの肩の脱臼骨折は上腕骨の頚部で骨が折れてしまうケースです。

画像引用元:J Shoulder Elbow Surg. 2002 Jul-Aug;11(4):389-400.

上腕骨(肘から肩にかけての腕の骨)は肩の関節部分は骨頭(こっとう)という球形状をしていて、外側に大結節、前側に小結節という突起があり、その下(肘より)は骨幹部(こっかんぶ)という木の幹に相当する細長い部分になります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

その骨頭や大小結節と骨幹部の間を頚部(けいぶ)といいます。

解剖頚と外科頚に分かれていますが、ここではとりあえず頚部でいいです。

頭と体幹の間は頚(くび)というわけですね。

この頚部で折れてしまって、さらに、骨頭が外れてしまっているのがこのケースです。

合併した骨折が大結節骨折の場合との大きな違いは、脱臼した骨頭と骨幹部が分断されてしまっているということです。

そのため、こちらの方が一般的に重症です。

 

原因2:脱臼の時に腱板損傷もあった

脱臼のときに
腱板損傷を一緒に合併することがあります。

とすると、症状が残ることもあり得ます。

それを見つけるには、
最低でも超音波検査、
できればMRIで調べるのがいいでしょう。

腱板損傷については
こちらをご参照ください。

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注意すべきは肩腱板損傷は他の筋損傷、筋断裂とは違うということ

この肩腱板損傷、
それはつまり、腱板が断裂してしまう、
切れてしまうわけですが、

これを他の部位の筋肉や腱の断裂と
同じとは考えない方がいいです。

通常、筋肉が切れてしまっても(肉離れ、筋挫傷)、
自然治癒としてだんだんと修復され、

ある程度の強度を持って(時には完全に)筋肉が修復されます。

つまり、かなりの重症でない限りは、肉離れなどに対しては手術はしません。
その先の腱の損傷としては、
代表的な腱損傷が、アキレス腱損傷です。

このアキレス腱損傷は実は
手術でなくても、ギプスなどで治すこともできます。

肩腱板断裂(損傷)は時間がたってもくっつかない

しかし、肩腱板損傷については
自然治癒は厳しいというデータが出ています。

その大きな要因は、

肩腱板損傷は骨から腱板が
剥がれるように切れてしまうからです。

この剥がれた骨と腱・・・

この異質なものがくっつくというのは、
難しいということですね。

結果、
ほとんどの腱板損傷は
時間とともに、むしろ拡大(重症化)していきます。

原因3:脱臼の時に神経を傷めてしまった

これは可能性は高くないですが、

脱臼の時に神経を傷めてしまうことがあります。

特に腋窩神経という神経が
肩関節の近くを走っていて、
脱臼のときに傷めてしまうことがあります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

腋窩神経の支配している三角筋の麻痺、
つまり、肩を動かせないような状態があれば、

腋窩神経損傷をより強く疑います。

少し時間経過をみますが、
筋電図という神経の検査や
MRIなどで画像評価をすることがあります。

原因4:脱臼の後、関節がカタくなってしまった

脱臼の後、
初回脱臼であれば3−4週間は
肩をある程度固定します。

その後、関節がカタくなっていて、
それを動かす過程で痛みが走る

ということがあります。

 

拘縮肩と言います。

これは特に高齢の人に多くて、
若い人は、カタくなることよりも
やはり、クセになってしまうことが多いです。

拘縮肩(カタくなってしまった肩)の治療法

ではこのカタくなってしまった肩:拘縮肩の治療法です。

ザックリ言うと、、多くの拘縮肩は関節包(かんせつほう)に原因があります。

関節包は関節を全周性に前後上下と覆っている薄い膜のことですが、これが何らかの原因で拘縮肩の場合は分厚く、硬くなってしまっています。これは身体の防御反応と考えられていて、そのせいでカタくなってしまうんですね。

この関節包が原因の拘縮肩に対する治療法としては、じわじわと関節包に刺激(伸張刺激)を加えて、時間はかかっても(時に年単位)ハビリテーションやストレッチで柔らかくしていく方法と、

もっとシンプルに、分厚くなってしまっているのなら、切ってしまう、剥がしてしまうという意味での手術(主に関節鏡)があります。

通院リハビリテーション:病院に通ってリハビリする

ジワジワとかたくなった肩を柔らかくしていくリハビリテーションですが、結構大変で時間もかかります。。

ほぐすように肩こりのマッサージのようなことをするわけではなく、してもあまり意味はありません。

そうではなくて、肩がカタくて動かせない中でも少しずつでも動く限界を「攻める」ようなリハビリテーションになります。

例えば、この動画のようにセラピスト(療法士さん)が関節を徐々に動かしていくようなことを行っていきます。

それを病院に定期的に通院しながら専門の療法士(作業療法士や理学療法士)に肩を動かしてもらったり(他動可動域訓練)、自宅でもできるように指導のもとでのストレッチを練習したりします。
これは頻度としては毎日できれば一番いいわけですが、そうもいかないことが多いです。
病院のリハビリ患者さんの受け入れ可能な頻度もありますし、患者さん自身も毎日通院は厳しいですよね。

自宅でセルフストレッチ:自分でやれば毎日できる

そこで毎日、自宅などで自らのストレッチがとても重要になってきます。

通院リハビリテーションで指導を受けるのも1つの方法ですが、

この場でお伝えできるシンプルなモノもあります。

肩関節の動きとして、特に使いやすさのポイントになるのは挙上もしくは外転という前から横からバンザイまで腕を上げていく動作です。

この挙上、外転の練習、ストレッチとしての代表的なエクササイズが、
振り子運動訓練(pendulum exercise)と呼ばれるものです。

頭を下げて腕をだらんと垂らすところ(この時点で挙上されていることになります)から身体を揺らしながら腕を振り子のように前後だったり円を描くように振っていくわけですね。

特に頭を腰よりも低く下げるくらいに身体を前屈できれば、腕、肩をしっかり脱力したときの挙上角度が高くなり効果が高まります。極端な話、頭が下、足が上の状態で腕の力を抜くと、重力の力を使ってバンザイをするようなモノですよね。

さらに↓このように棒を使った可動域訓練エクササイズも効果的です。

こちらは肩の外転(がいてん)訓練です。棒を両手でもって、左手で右手を外に上に押し出すような動作で右肩を外転(外側から上げていく)させていくストレッチです。

こちらは右肩の外旋(がいせん)の可動域拡大訓練です。
ポイントは右肘を体側につけて固定して、手の位置を外側に開いているということです。肘を固定して上腕骨の長軸で回旋しているということですね。

 
今度は右肩の内旋(ないせん)の可動域拡大訓練です。棒を下で背中側にまわしてから、持っている右手を左手が棒をつたって、持ち上げていきます。
この右手の位置が背中側で高く上がれば上がるほど、肩関節は内旋していることになります。

拘縮肩の治療:注射して徒手授動術や手術など

次に手術のお話についてですが、まずは「切らない」手術:徒手授動術(としゅじゅどうじゅつ)というものと、手術らしい手術としては、今は関節鏡手術があります。肩のの前後に1–1.5cm程度の小さい創から関節鏡や専用の電気メスなどを関節の中に入れて、分厚くなってしまった関節包を中から切開していく方法です。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

凍結肩とは?五十肩で上がらない状態の治療と手術

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まとめ

今回は肩脱臼のあとに痛みが残る
ということについて、

考え得ることを解説いたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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歌島 大輔

肩/スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療/手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

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