肩の骨折

大結節骨折のアンカー手術とリハビリテーションを解説

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上腕骨大結節骨折(じょうわんこつだいけっせつこっせつ)とは?ということで解説いたします。聞き慣れないと少し複雑な名前ですが、骨にも細かくいろんな部位があり、部位によって治療法が違いますから、肩の骨折、手首の骨折・・・のような大雑把な表現は病院ではほとんどされず、このように「どの骨のどこが折れたのか?」ということを表す診断名が使われます。

今回の上腕骨大結節骨折は少しのズレも肩の機能、はたらきに影響を及ぼしやすいというのがポイントです。

それはなぜなのか?では、どういう治療・リハビリがあるのか?ということを解説していきます。

特に私の場合は肩関節鏡を専門にしており、
骨折をアンカーという糸付きのネジを使って固定する方法をよくやりますので、詳しく解説します。

 

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

上腕骨大結節とは肩の外側の出っ張り

上腕骨大結節(じょうわんこつだいけっせつ)というのは、上腕骨という腕の骨の肩よりで一番外側の出っ張りです。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

すぐ近くに肩甲骨の外側の出っ張りである肩峰(けんぽう)がありますので、外側からは注意深く触れないと間違えてしまいます。

上腕骨大結節に腱板が3つ付着している

この上腕骨大結節には腱板(けんばん)と呼ばれるインナーマッスルが3本くっついています。これが大結節の存在意義と言ってもいいと思います。

肩を安定化させるためには肩の周りで上腕骨側にも筋肉の付着する部位が必要ですが、上腕骨頭というボール状の軟骨には筋肉は付着できません。

そのため、関節からは離れた側に出っ張りをつくって、大事な腱板筋群を付着させたのだろうと思います。

上腕骨大結節骨折は腱板に引っ張られてズレる

そして、この上腕骨大結節が折れてしまうと、大きな上腕骨のメインの骨と欠けてしまった上腕骨大結節骨片(こっぺん)に分かれます。

そして、この大結節骨片には腱板という筋肉が付いてします。筋肉はもともと縮む作用を持っていますから、この骨片を引っ張って、結果として大結節骨片はズレます。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

骨折の程度によって、ズレ方は異なります。ヒビ程度で骨膜という骨の周りの膜が残っていたりすればズレはほとんどないことになりますし、最初っから派手にズレちゃっているモノもあります。

上に5mm以上ずれるとインピンジメントの原因になり得る

このズレの程度ですが、1つの境界線が5mmと考えられています。

特に腱板のうちでも棘上筋に引っ張られて上方に5mm以上ズレると、肩甲骨の肩峰(けんぽう)との距離が縮まり、肩峰下インピンジメント症候群の原因となり得ます。

そうなってしまうと、骨がくっついても、肩を動かしたときの痛みが残るか、肩を挙げられなくなってしまうという状況が考えられます。

その可能性が高いと判断すれば、5mm程度のズレでも手術をします。

上腕骨大結節骨折の手術は少し悩ましい

上腕骨大結節骨折の手術は少し悩ましい問題があります。

大結節は弱い、脆い骨

まず大結節は弱く、脆い骨の部位になります。われわれ、手術をやっていると実感することがありますが、骨を固定するために金属のネジや針金を打ち込む際に、この大結節が割れてしまうことが時々あります。

強い骨であれば、こういう金属を打ち込むと、骨折部位のすごくいい固定になるんですが、脆い骨の場合は、なんとか割れずに固定できても、術後、リハビリの過程でズレてきてしまうなんことも起こりえます。

腱板という筋肉に常に引っ張られている骨

もう一つ悩ましいのは腱板という筋肉が常に引っ張っている骨と言うことですね。

これは骨折を元の位置に持っていくのにも、時に筋肉の引っ張る力が強くて、カタくなってしまっているために苦労することもありますし、術後にだんだんズレてしまう原因にもなります。

大結節骨片がかなり小さいことがある

大結節骨片が欠け方によって、かなり小さいこともあります。そうすると骨片同士を金属で固定するにも太いネジや針金は、先ほども言ったとおり、入れた瞬間に骨片が割れてしまうということになります。

強い糸(アンカー併用)や柔らかめの針金で腱板ごと固定しちゃう

このように悩ましい上腕骨大結節骨折ですが、それを解決するための1つは、腱板そのものに糸や細い針金を通して、それを使って、大結節骨片を固定してしまおうということです。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

実際、大結節よりもそれに付着する腱板の方が強いというのは良くあることで、これがスタンダードな方法といえます。
それに加えて、骨片同士も可能であれば金属(ネジやカタい針金、時にプレート)で固定するということになります。

おそらくスクリューだけでなく強い糸などを腱板にかけてスクリューと固定しているはずです。 画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

関節鏡手術でアンカーを使って治すこともできる

このように腱板が付着するという悩ましい問題を逆手にとって、腱板ごと固定するということは、腱板断裂の手術と少し似ている部分があります。

そうなると関節鏡も選択肢に入ります。

arthroscope surgery

僕の場合は骨片の大きさなどによりますが、関節鏡だけを使ったり、関節鏡を補助的に使ったりして、できるだけ低侵襲(皮膚の傷や周りの筋肉などの組織を傷めない)な手術を心がけています。

こちらは手術前のレントゲン写真で大結節骨片が上に上がってずれているのがわかります。1cm以上上がっていますので、これは手術した方がいいと判断して、関節鏡での手術を行いました。

それがこちらです。

ほぼほぼもとの位置に整復固定されています。ピーク素材という医療用プラスチックでできたアンカーとそこから出ている糸で固定しているのでレントゲンには何もインプラントが写りません。

 

この動画は僕のよく行う手術と同じような方法です。関節鏡を使って骨折部分をキレイにして、新鮮化(血流を良くしてくっつきやすくする)し、そして、骨の中にアンカーというネジを用いて糸を埋め込んで、ブリッジング法という方法で骨片を腱板ごと固定してしまうという方法です。

上腕骨大結節骨折のリハビリテーション

肩はカタくなりやすい

一番は肩の関節はカタくなりやすいということです。拘縮(こうしゅく)と言います。

この拘縮予防が上腕骨大結節骨折においてまず考えたいものです。

それにはできるだけ早くから肩をどんどん動かせばいいわけですが、それをすれば、骨折がズレてしまう可能性があります。

そのため、ある程度、骨折がズレないと言えるくらいにくっつくまで、もしくは手術で骨折部を固定するまでは動かせません

骨折がズレず、しかし、拘縮しないようにできるだけ早く動かす

という、絶妙なバランスが必要になります。

肩は完全な固定が難しい

他の関節と違って、肩はギプスのようなものでのしっかりした固定ができません。巻こうと思えば巻けなくはないですが、身体ごと巻かないと固定できないので現実的ではありません。

そのため、三角巾などで固定というか、安静というか・・・という状態が基本です。

それにバストバンドという胸用コルセットみたいなものを腕ごと巻いたり、ストッキネット・ベルポー固定と呼ばれるような方法が、もう少し固定性を高めた方法としてあります。

ストッキネットによるベルポー固定
画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

上腕骨大結節骨折後のリハビリは積極的に動かしていく

骨折がズレず、しかし、拘縮しないようにできるだけ早く動かす

という絶妙なバランスでリハビリをしていかなくてはいけないということを解説しましたが、そういう意味では、大丈夫と判断すれば肩は積極的に動かしていくことが必要になります。

その基本ポイントを2つほど解説いたします。

振子運動訓練

1つめは振子運動訓練と呼ばれるリハビリです。当サイトでも何度も紹介していますが、重力や慣性力を使って、力を抜くことができるのが一番のメリットです。

また、上腕骨の長軸方向に牽引力、つまり引っ張る力が加わるので骨折がズレにくいという作用も期待できます。そのため、上腕骨大結節骨折では骨がくっつく前の早期から行うことが多いリハビリテーション項目です

そのほか、肩の骨折後のリハビリテーション全般についてはこちらの記事もご参照ください。

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まとめ

今回は肩の骨折の中でも上腕骨大結節骨折についての基本から治療、リハビリについて解説しました。この大結節は腱板という肩の大事なインナーマッスル群の付着部であったり、ズレがインピンジメント症候群という痛みの原因になったりと、注意が必要な骨折であることを解説いたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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歌島 大輔

肩/スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療/手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

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