野球肩

野球肩がノースローでも治らないときの原因と手術法

更新日:

野球肩、それは野球という投球動作が多いスポーツにおいて、
どうしても負担が繰り返しかかるために肩に痛みがでてしまう

という状態です。

それは野球に限った話ではなく、ボールを投げるという動作、
または腕をスイングするという動作で
ときに肩が痛くなりますが、

そのときに肩の中で起こっていることというのは、
結構共通点が多いというのがわかっています。

 

そのため、野球肩という通称から、
より病態を反映した投球障害肩という言葉が専門家の間では
よく使われるようになっています。

その共通して起こっている状態は、
ある程度重症になると、「何かが損傷しています」

当たり前のような話ですが、

重症ではない投球障害肩の多くは「損傷までいかず、炎症や働きの低下にとどまっている」
ということもあります。

ある程度の何かしらの損傷があったとしても、安静を目的に
投球中止(ノースロー)にしていると治ってくれることもあれば、

やはり、手術しないと治らないということもあります。

 

今回は野球肩の基本をまとめながら、
手術が必要なケースについて
手術の方法などを解説していきます。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

野球肩(投球障害肩)とは?

野球肩とは、
先ほども述べたとおり、別名、投球障害肩と言います。

要は、投球動作の繰り返し(オーバーユース)で起こる
肩の痛みの総称です。

つまり、ザックリな言葉なので、

野球肩と言っても、様々な病態があるわけです。

野球肩の原因は投球動作にあり

野球肩には様々な状態があります。

ただ、いろんなところが傷むにしても、その原因は
結局、

投球動作の繰り返し(オーバーユース)です。

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投球動作中の肩:回旋運動(内外旋)+α

投げるという動作(投球動作)において、

一番大きく動いているのは、
肩(厳密には肩甲上腕関節)の回旋運動、すなわち外旋と内旋という動きです。

こちらの動画での外旋から内旋が、実際の投球動作でも起こっています。

もちろん、この動画のようなゆっくりとできる範囲の内外旋ではなく、
日常生活では経験しない可動域(動く範囲)とスピードで回旋しています。

その回旋運動を繰り返せば、
様々なところに無理が来てしまうというのが最も多い原因です。

その結果、投球動作中の痛みにつながります。

それが典型的な投球障害肩=野球肩というわけです。

 

詳しくはこちらの記事もご参照ください。

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野球肩の治療の前提はノースロー

そんな野球肩の治療の基本、前提はノースローになります。

投げすぎが野球肩の原因であるわけですから、
一旦投げない状態(=ノースロー)にするのが最初になります。

しかし、当然のことながら、ノースローにするだけで治るというほど簡単なものでもありません。

野球肩がノースローで治らない時の原因とやるべきこと

野球肩の原因を考えると、まずノースローというのは必須の方法ですが、

しかし、一旦痛みが引いても、
また投げはじめれば、同じことになるのは目に見えています。

つまり、このノースローの時期に、
投球を再開しても痛みが出ないという状態を作らないといけません。

その常套手段はいくつかあります。

投球フォームの修正

野球肩になる選手の多くは投球フォームに問題を抱えています。

ですから、野球肩を繰り返さないための投球フォームをノースローの時期に獲得すべく
フォームチェックから改善点をあぶり出し、
最初はイメージトレーニングを徹底し、さらにシャドーピッチングというボールなしでの投球動作の繰り返し、
そして、ネットに向かって投げる・・・

と段階を踏んで投球フォームを改善していく必要があります。

フィジカル面の改善

また、フィジカル面にも問題があることが多いです。

それは肩の可動域が狭いとか、肩甲骨の動きが悪いとか、股関節がカタいとか、体幹が弱いとか、様々な問題が考えられます。

その改善方法はこちらもご参照ください。

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手術が必要になることがある野球肩の病態

そんな中でノースローの間に適切な治療をしてもなお治らない場合は手術を考える必要があります。

野球肩においては、
手術をせずに
自然治癒力の中で治しつつ、
リハビリテーションなどで

痛みなく投げられる

という状態を目指すことが基本です。

 

しかし、それでも
手術的に修復しなければ治らない
というケースがあります。

そんな代表的な3つの病態について
解説いたします。

SLAP病変(スラップびょうへん)

SLAP病変(SLAP損傷)とは?

SLAP損傷のSLAPというのは、頭文字なんですが、

Superior:上方(頭側)
Labrum:関節唇(かんせつしん)
Anterior:前方
から
Posterior:後方

ということになります。要はSLAPとは肩の上の方の関節唇の前側から後ろ側を指し、

そこが傷んで病変ができあがれば、SLAP病変(損傷)となります。

肩の関節唇(かんせつしん)とは?

肩の関節唇(かんせつしん)というのは肩の関節の中で肩甲骨側の受け皿にあたる関節窩(かんせつか)にあります。関節窩とは肩関節の受け皿となる肩甲骨関節軟骨部分で、それを深くして外れにくくする役割は関節唇にはあります。関節唇の正体は柔らかめの軟骨です。

ちょっとわかりにくいかもしれませんので、もう少し詳しく解説します。

まず、肩関節は上腕骨と肩甲骨から成る関節です。肩甲骨側(関節窩)が受け皿のような形、上腕骨側(上腕骨頭)が受け皿に乗っかるボールのような形をしています。

これはボール&ソケットタイプの関節と呼ばれます。

この受け皿側の骨(関節窩)の形状はとても浅いです。
ですから、ボールがすぐに転げ落ちて(脱臼)しまいそうになります。

そうならないように関節窩をぐるりと取り囲むようにして、
受け皿に深さを与えているのが関節唇という柔らかめの軟骨
だということです。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

関節唇が損傷してしまう原因・メカニズム

この関節唇のそれも上方が損傷してしまう原因・メカニズムですが、

圧倒的に多いのはインターナルインピンジメントと呼ばれる状態です。
インピンジメントとは擦れ(こすれ)や衝突のことですが、

どこどどこが衝突するかというと、

上方の関節唇(=SLAP)

後ろ側、上側のインナーマッスルの腱です。
(下筋と棘上筋のスジである棘下筋腱+棘上筋腱

この2つの部位が投球のそれも腕がしなるリリース直前あたりの動きで近づき、擦れてしまう。
というのがインターナルインピンジメントです。

この衝突を繰り返すことで
上方のやや後方のほうから関節唇が剥がれてしまいます。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

 

もう一つのメカニズムとして、上腕二頭筋長頭腱の牽引力があります。

上方関節唇には実は上腕二頭筋(力こぶ筋)の長頭腱がくっついています。
この上腕二頭筋が収縮することで上方関節唇を引っ張る力が加わります。
その牽引力も加わって、SLAPも後方だけでなく、だんだん前方の方まで関節唇が損傷してしまう。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

これが典型的なメカニズムです。

SLAP損傷の手術は?

最後にSLAP損傷の手術ですが、これは主に関節鏡という肩関節の内視鏡を用いて行います。

それゆえ周囲の筋肉などの損傷を最小限にして手術を行うことができます。

関節鏡手術とは?

そもそも関節鏡手術って何?

というと、

かなりシンプルです。

関節鏡とは内視鏡のことです。
ペンよりも細い筒型のカメラ(関節鏡)を
関節の中や滑液包の中に挿入するわけですが、

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

胃や腸のように、
穴(口やお尻の穴)があるわけではありません。

そのため、小さく
1–1.5cmくらいは皮膚を切開して、
関節鏡や手術用の鉗子(はさみやメスなど)を
挿入して手術をします。

 

 

そして、関節唇が剥がれてしまった関節窩という骨に糸を埋め込んで、その糸を剥がれた関節唇に通して結ぶ。

という手術を行います。

それ以外にもカタくなっている部位に切れ目を入れたり、炎症している部位をクリーニングしたりという処置を追加したりします。

腱板損傷・インナーマッスルの損傷

多くの投球障害における
腱板損傷は
関節面の部分損傷で、

肩まわりの筋力強化や
投球フォームの改善などで

負荷を減らせられれば、
手術をしないでも
復帰することが期待できます。

 

ただ、これも同様で、
損傷の程度によっては、
手術が必要です。

腱板損傷については
こちらで手術についても解説しております。

腱板損傷(断裂)のトレーニング&リハビリを中心に手術まで解説

今回は肩腱板損傷のトレーニングとリハビリ方法のポイント ということで、 手術を行わない、行っていない保存療法におけるリハビリと 手術におけるリハビリテーションについてお伝えします。 さらに保存治療や手 ...

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肩腱板損傷の部分損傷が野球肩では多い。

肩腱板損傷にも
損傷の重症度というものあがります。

その中でもわかりやすい境界線が、

完全断裂か部分断裂か

ということです。

 

野球肩では圧倒的に部分損傷が多いです。

完全損傷、完全断裂にまで至っているケースは少ないです。

 

若いアスリートの腱板はそれだけ強靱だとも言えます。

野球肩に多い部分損傷は3種類のうち・・・

この野球肩に多い部分断裂というのは、
浅層、もしくは、深層、
もしくは、その間(腱内)が切れてしまう

という3種類があります。

 

それぞれ、浅層の断裂を滑液包面断裂
深層の断裂を関節面断裂
その間の断裂を腱内断裂

と呼びます。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

 

 

この中で、野球肩に多いのは
関節面断裂です。

これはインターナルインピンジメントのメカニズムを考えると当然かもしれません。

肩腱板損傷 -部分損傷(野球肩に多い)-の手術法

【関節鏡下腱板修復術】内視鏡だからこそ縫える

基本は関節鏡下腱板修復術と呼んでいる手術です。

これはそのままシンプルに
先ほども出てきた関節鏡(関節用内視鏡)を使って、

腱板の切れた(剥がれた)ところを修復するということです。

修復の方法は
細かく言えば、いくつかの方法がありますが

基本は
骨に腱板の切れ端(断端)を縫い付ける

ということが必要になります。

腱板断裂は
骨から剥がれるように切れるのが特徴ですから、
そういったちょっと難儀な修復をしないといけません。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

カタい骨に糸を通すのは
厳しいので、

一般にはアンカーという
糸が装填されたスクリュー(ネジ)を骨の中にねじ込みます。

そして、そこからでた糸を腱板に通して、
結んだりして固定します。

関節面断裂など部分損傷の多くは関節鏡でなければ縫えない

関節面断裂や腱内断裂は
関節鏡を使わないと縫えない

と言っても言い過ぎではないでしょう。

 

昔は腱板断裂は、
皮膚を数cm切って、三角筋(さんかくきん)という
アウターマッスルをこじ開けて(スプリット)

腱板を直視下に観察して縫っていました。

 

今もその方法で縫う先生もいますが、

関節面断裂や腱内断裂は関節内と外が交通していないので、
関節の中と外を行ったり来たりして、縫合しないといけません。

しかし、直視下で手術するには
腱板を完全に切らない限りは関節の中は見えません。

それは本末転倒ですよね。

治してるのか、壊してるのか・・・

そういう意味では、
この野球肩に多い部分損傷の治療においては、
特に関節鏡手術に圧倒的な優位性があります。

腱板疎部損傷

また、野球肩に多い損傷として、忘れてはならないのは、
腱板疎部損傷です。

腱板疎部とは?役割は?

腱板疎部とは
腱板の疎いところと書きますが、

実質は前方の肩甲下筋腱と前上方の棘上筋腱の間にある
薄い膜のことを言います。

 

この腱板疎部は薄い膜とは言え、
役割があります。

それは肩関節の中で上腕骨頭が前にスライドしないように
特に投球動作の中で、一番しなる(最大外旋位)あたりでの
安定性に貢献していると考えています。

腱板疎部損傷に対する関節鏡手術

この腱板疎部は関節鏡で関節の中から
よく観察することが出来ます。

関節鏡を入れると最初に見えるのは腱板疎部です。

そこで腱板疎部の中で傷んでいる部位を見つけて、
糸で縫合する
というのが一般的な方法です。

肩関節鏡の手術に習熟した整形外科医であれば、
そこまで難しい手術ではありません。

実際には傷んでいる場所を縫合するというよりは、
腱板疎部を縫い縮めて、より「締める」というイメージで手術をするので、

腱板疎部閉鎖術(Rotator Interval Closure)なんて表現されることがあります。

その他 野球肩の手術

そのほか、
野球肩の原因に対する手術には、

取り切れない炎症≒痛みの原因となり得る
増えた滑膜という膜をクリーニングする
クリーニング手術があります。

これはよくプロ野球選手もシーズンオフに受けて、ニュースになりますよね。

【関節鏡下肩峰下除圧術】いわゆるクリーニング手術

まずは通称、クリーニング手術というものについてです。

正確には関節鏡下肩峰下除圧術という
小難しい名前だったり、

関節鏡下滑膜切除術という名前だったりします。

肩峰下除圧術は滑液包面断裂に対して、特に効果的であり、
また、完全断裂においても腱を縫う前に行われますが、

野球肩に多い関節内病変についてのクリーニング手術は
後者の関節鏡下滑膜切除であることが多いです。

関節鏡下滑膜切除:野球肩に対するクリーニング手術

関節鏡下滑膜切除というのは、結構幅広い名前で、
炎症を起こしている部分をクリーニングすれば、大抵この名前になります。

しかし、その実体は

SLAP損傷に対する損傷部のリフレッシュだったり、
あとで述べる、後方関節包の切離術だったり、
腱板疎部のクリーニングだったりと、やっている内容は多岐に渡ります。

関節包切離術・リリース術

さらには、

カタくなった関節包を切開して、
柔軟性を上げる関節包切離術(関節包リリース術)

などもあります。

こちらの動画は凍結肩、拘縮肩に対する全周性の関節包切離術です。
実際、野球肩の場合は部分的(特に後方)の関節包を切離することが多いです。

結局、野球肩の手術は受けた方がいいのか?

結局、様々な病態において、
重症度というものがあって、

さらに、個人個人の体格や筋力、
異なる投球動作という

いわゆる個人差の中で、

 

手術を受けた方がいいのか?
手術をしない方がいいのか?

 

というのは

一概に正解はこれ!
とはいきません。

手術のメリット

これはものすごくシンプルです。

直接的!

ということです。

傷んだ組織、
もっというと
切れたり、剥がれたりした組織を
もとの位置に固定する、縫い付けることで
修復させることができる。

もしくはカタくなった組織も、
直接切れるし、

炎症を起こしている組織を、
直接掃除できる。

それは、じんわり自然治癒力を
期待しているより早いかもしれないし、

自然治癒力では治らないレベルも
治せるかもしれない。

そこにメリットがあります。

手術のデメリット

しかし、デメリットとして、

関節鏡という、
非常に低侵襲な手術が可能になっていますが、

一部、正常な部分にも負担をかけますし、

手術そのものがわずかでも
必ず肩にダメージを加えます。

また、手術とは言っても、
完全元通りにするというわけではありません。

修復も縫った後の
腱板や関節唇の緊張が、
損傷前より高まって、
肩の可動域が狭まったりすることもあります。

僕らは人間を創りだした神様ではないので、
完全元通りなんてことはできなくて、

現状の医療技術の中で、
できうる限りの修復をする

ということです。

 

これは実は大きな違いで、

完全元通りにできるなら、
手術した方がいいに決まってます。

でも、そうではないので、
メリットとデメリットがある中で
このできうる限りの手術による修復が

余計なこと、
つまり「やらなきゃ良かった・・・」

なんてことにならずに、
スポーツ復帰に繋がるということを
できる限りの確信を持ってやりたいし、
そういう確信を持って手術をしてほしい。

それが僕ら整形外科医の本音ですし、
受ける患者さんの当然の希望だと思います。

 

結局は主治医とよくよく相談して、
メリットもデメリットもリスクも
理解、納得して受けていただくのが
大切なのは言うまでもありません。

野球肩の手術費用の目安

当然、気になるところですよ。

野球肩の手術にかかる費用はどのくらいなのか?

これは病院の治療方針や入院期間などによって変わりますが、

3割負担の患者さんの場合は

20万円から30万円の間くらいではないかと思いますが、

ただ、それをすべて負担しないといけないかというとそうでないことが多いです。
医療保険や公的な助成で負担軽減ができることがあるからですね。

限度額適用認定という制度を活用しよう

とくに限定額適用認定という制度は知っておく必要があります。

これは、入院・手術等で診療費用が高額になることが予想される場合、あらかじめ保険者から『限度額適用認定証』というものの交付を受け、医療機関の窓口に提示頂くと、診療費用の患者様負担額が軽減される制度です。

診療費用が高額の場合は、全額をお支払い頂いた後でも保険者に対し申請を行うことで、この制度で定められた自己負担限度額を超えた金額について払戻しを受けられます。

しかし、事前に申請を行い提出頂くことで、一時的な多額の現金の支払いを軽減できます。 (入院時の有料個室や食事等の保険対象外の医療費は対象外)

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat550/1137-91156

このようなサイトも参考にしながら、ご自身の健康保険の保険者にお問い合わせしてみてください。

野球肩の手術は入院が必要?

野球肩の手術のほとんどは関節鏡手術で小さい傷でできますから、

「入院は必要ですか?」

ということはよく質問いただきます。

 

結論から言うと、入院は必要とお答えしています。

病院によっては神経ブロック麻酔のみで、全身麻酔はかけずに日帰り手術を行う病院もあるようですが、

  • 神経ブロック麻酔の効き具合の個人差で術中の痛みが抑えきれない
  • 多少の鎮静(眠る)をするにしても手術中に意識が戻って怖い思いをしてしまう
  • 手術後の鎮痛処置が痛み止めを飲むか坐薬をするかという選択肢しかなくなる

というような可能性がありますので、肩の手術においてはすべて全身麻酔で行うため、

手術の前の日に入院し、手術翌日に痛み具合や体調の様子を見て、翌々日に退院。

という3泊4日をベースに、さらにリハビリや生活指導などの期間としてご希望あれば1-2週間(ときにもっと長く)というような感じで入院されるケースが多いです。

野球肩の手術後はリハビリが必要?

野球肩においては手術をしない場合もリハビリが大切ですが、手術をした場合もリハビリの重要性が半分以上を占めると考えています。

それには大きく2つの理由があります。

  • 手術で修復した部分が自然治癒力の中でしっかりくっつくのを待ちつつ、肩周りの筋力や可動域(動かせる幅、やわらかさ)を向上させる必要がある
  • 手術で修復しても同じフィジカルで同じフォームで投げれば、また傷めるに決まっているから

この2点の理由から段階的なリハビリで最終的には手術前よりもフィジカル面でもスキル面でも向上した状態での復帰を目指します。

ということからすると、やはり手術後にリハビリテーションは必要と考えています。

野球肩を診てくれる病院を探す

ここまで解説したとおり野球肩の病態は様々アリ、

それは原因となる投球動作が
複雑かつ高負荷なものであること

それゆえ、最重視されるべき原因追及が
簡単ではなく、
その結果、治療もとりあえず安静、投球禁止
のみとなってしまいがちという問題があります。

 

きっちりと原因追求をした上で、
投球禁止を提案する医師と、

よくわからないけど、
投げなければいいだろうと
投球禁止を提案するという医師では、

その後の展開が違います。

スポーツ障害を親身に豊富な知識と経験で診てくれるところは少ない

野球肩に限らず、
スポーツ傷害に対してしっかりと診察してくれる

そんな熱意と
知識と経験を持った整形外科医は

残念ながら多くはありません。

あまりに遠いところはオススメできない

では、全国的にも有名な
スポーツ傷害に強い病院に
片道何時間もかけて通院するのがいいか?

というと、疑問です。

投球障害肩の原因追及に必要な「経過観察」

われわれ、医師の原因追及の方法は、
問診、診察、画像検査など様々、
総合的に行いますが、

その中でも重要なのは
「経過」です。

それは

ちょっと安静にすれば良くなっちゃうものなのか?
少しは良くなっても、全力投球すれば痛くなるのか?

さらに、治療的な試行錯誤も大きな「経過」です。

例えば、
肩関節内にステロイド注射をしたあとの数週間の経過は?
では、
腱板疎部への注射後は?

とか、

投げ方で「○○を意識しながら投げる」とどうか?

とか、

「○○の柔軟性を上げて」みると痛みはどうか?

など、

治療と組み合わせた「経過」が大切です。

 

逆に一発、外来で診察して、

「これこれやれば100%良くなります」

と本気で言い切っちゃう医師がいたら、
投球障害肩を甘く見すぎです。

ある程度頻繁に通える病院・クリニックを選ぼう

そういう意味で、
しっかりと「経過」を追えるよう

ある程度の頻度で通院できる
病院、クリニックを選ぶべきだと考えています。

整形外科にもサブスペシャリティーがある

整形外科専門医という
専門医制度がありますが、

そういった科の中にも
さらに専門がわかれています。

それは肩や肘、手、脊椎、膝など
部位による専門

また、小児整形外科、
スポーツ整形外科、
外傷、腫瘍など

患者さんや疾患のタイプによる
専門などがいます。

 

野球肩を診るときの専門性といえば、
スポーツ整形外科肩関節外科

ということになります。

その専門性は、
病院のホームページなどでも
ある程度は判断できます。

スポーツ整形外科(資格あり)

スポーツ整形外科については、
日本でも3つの資格があります。

日本整形外科学会の資格と
日本医師会の資格と
日本体育協会の資格があります。

これらの資格を所持している方は
たいていはホームページに書かれています。

肩関節外科(資格なし)

しかし、肩関節の専門については、
資格はありません。

ただ、肩を専門としている医師は、
少なくとも

日本肩関節学会

に入会していますので、
その情報をホームページに公開している
ことが多いです。

直接聞いてしまう

あとは直接、聞くというのも
オススメです。

病院に電話すれば、
そこらへんの情報は教えてくれますし、

素直に
「野球肩とかスポーツ選手の患者さんは多いですか?」
と聞いてみてもいいかもしれません。

受診してみての判断材料

次に実際に診察を受けてみて、

ここで大丈夫かどうか?
ということも判断しましょう。

問診や診察が丁寧か大雑把か

野球肩を診るときに、
原因追及がとても大切だと
何度も話していますが、

それがわかっていれば、

どんな痛みか
どういうときに痛いのか
投球動作のどのタイミングか
ポジションはどこなのか
どういう投げ方なのか

診察でも
どこが一番痛いのか
どの診察手技で痛みが走るのか

 

問診や診察が大雑把にはなり得ないわけです。

 

少なくとも

良くさわりもせず、聞きもせず、
レントゲンだけみて、
「骨には異常ないね」

で終わってしまう。

 

極端なことを言えば、
こういう医師では厳しいと思います。

 

自分がかかる病院・クリニックは
自分で選べるわけですから、
納得いかなければ変えればいいです。

ただ、変えるときは
今まで行った検査を無駄にしないためにも、
検査データ付き紹介状をもらいましょう。

 

まとめ

今回は野球肩の基本から
ノースローで治らない時の考え方、
手術が必要になり得る病態まで
解説いたしました。

手術そのものはどれもシンプルですが、
投球動作や投球での肩の痛みのメカニズムが
シンプルではないので、

手術に至るまでの診断や
その後のリハビリテーションが特に大切で
難しいモノであるということは
肝に銘じていきたいところです。

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肩/スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療/手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

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