バストバンドの巻き方と期間は?肋骨骨折治療を専門医解説

  1. 骨折の症状と治療
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肋骨骨折や肋軟骨骨折は胸を打ったり、咳を繰り返して、
ヒビが入ってしまうことが多いわけですが、

肋骨自体が弱い骨ですから、かなり頻度が大きく、
折れてないと思ったら折れていたなんてことも少なくありません。

治療は基本的にバストバンド(胸部固定帯)
というものをやります。
このバストバンドの巻き方と、装着期間、
就寝時にも装着すべきかどうかという点について解説し、

その次に、肋骨骨折の治療期間のお話から、
万が一放置してしまった時の危険性についても解説します。

 

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肋骨骨折のおけるバストバンドの必要性

このバストバンドは
必ずやらなければいけないわけではないです。

やらなくてもほとんどの肋骨骨折はくっつきます。

これは他の部位の骨折とは異なりますね。

他の部位の骨折は、何かしらで固定をしないと
くっつかないリスクが大幅に高まります。

 

しかし、肋骨は、もともと大きく動く部位ではなく、
小さく呼吸性に動くという部位なので、
骨折部位を必ずしも固定しなくても
くっついてくれます。

しかし、呼吸性の動きや深呼吸、咳やくしゃみなどで
骨折部も動くことは動きます。

肋骨骨折の程度によっては、これが激痛で
耐えられないという人や、
痛みが強すぎてどんどん呼吸が浅くなるという人、
動くことが辛いという人がいます。

そういったケースでは、
適切にバストバンドを装着することによって、
少しでも楽に過ごす
(さらにもしかしたら骨折の治癒も促進?)

そういったことを期待して装着を提案します。

バストバンドの意義

当然、骨折部は動かないほうが
痛みは少ないですし、

また骨の癒合にも
グラグラしているよりも動かない方が
くっつきが早いです。

そういった意味では
胸郭の動きを制限するバストバンドは
理にかなった方法と言えます。

肋骨骨折時のバストバンドの巻き方

バストバンドの巻き方ですが、

基本は胸郭が広がることをおさえるものですので、

息を吐ききったところで
ある程度、バンドを引っ張りながら
装着します。

 

息を吐ききったところでは
肋骨で囲まれる胸郭は小さくしぼんでいます。

その状態で巻くことで
肋骨の固定性が増します。

 

逆に息を吸ったところで巻いてしまうと、
結局吐いたときの固定性は足りないので、
痛みが出てしまいます。

要は緩くなってしまうんですね。

巻く高さは、痛いところに合わせて巻きます。

 

市販されているものでは、
肩もかけて、落ちにくく工夫されていますね。

このバンドの引っ張り具合が難しいところですね。

きつく巻けば、それだけ胸郭は固定されますが、

そもそもその巻いたことで肋骨が押されて
痛くなりますし、
呼吸が必要以上に浅くなってしまいます。

ですので、もう試行錯誤しかありませんが、

  • 息苦しくなく、
  • 痛みが最小になる

という引っ張り具合で固定するということになります。

また、肌着の上から巻くことが基本です。
直接、地肌の上から巻くと、
皮膚トラブルの原因になります。

 

肋骨骨折時のバストバンド装着期間と装着時間は?

よくある質問としては、
いつまで巻かないといけないのか?
就寝時やお風呂の時もはずしちゃいけないのか?

ということですが、

痛みが落ち着けば巻かなくてもいい

基本は痛みが落ち着いてくれば、
巻かなくても大丈夫です。

痛みが落ち着いたと言うことは、
一般的には骨折部位が安定してきたことを表すので、
外しても大丈夫です。

外してみて、やはり痛いな、辛いなと
いうとき、

巻く場合と巻かない場合に
明らかに痛みに違いがあるときは
もう少し継続しましょう。

お風呂や就寝時は外していいか?

まず、お風呂ですが、
これは外していいですね。

外さないとびしょ濡れですし、
通常の骨折ほど厳密に固定しているものではないので、
原則外していいです。

また就寝時ですが、
これは緩めるか、外すか
どちらかです。

寝ているときの寝返りで
痛みが強くなって起きてしまうとか、
外すと痛みが強くて眠れない

というときは緩める程度にして、
装着を継続します。

ただ、通常は就寝時は
呼吸が浅くなりますから、
バストバンドを巻いていると余計に浅くなります。

そのため、眠れるようであれば、
外しちゃっていいと考えいてます。

 

次に肋骨骨折の治療、
特にその治療期間についてと

元通りに完治するのか?

後遺症が残ることはあるのか?

といったことについて解説いたします。

肋骨骨折の治療と治療期間について

肋骨骨折の治療ゴール

肋骨骨折に限らずですが、
骨折治療のゴールは、

骨折前の状態に戻ること。

つまり、その骨折部位の痛みがなくなり、
その骨が関係する関節の動きが完全に
幅広く、スムースに、力強く動かせる。

そういう状態に戻ること。

これは、僕のポリシーからは外れますが、
一般にはそうでしょう。

そう考えると、

呼吸時の痛みなどがなくなり、

激しい運動をして、
胸郭が激しく動いても、
体幹を激しく動かしても、

さらには多少の衝撃が肋骨に走っても

痛くない。

そんな状態ですね。

 

 

そのためのほぼ必須の条件とも言えるのが、

これまた当然ですが、

肋骨骨折がくっつく

ということです。

肋骨骨折がくっつくために必要なこと

肋骨骨折がくっつくために、
最も必要なこと。

それは 時間 です。

他の骨折の場合は、
しっかり固定して、
骨折部が動かないようにすること。

これが最も必要なものとして、
時間と迷うくらいのものですが、

肋骨骨折の場合は、
そもそもしっかりした固定はできませんし、
やるとしても先程解説したバストバンドという
コルセットのようなものです。

しかし、逆に言うと
放置しても多くの場合、
くっついてくれるのが
肋骨骨折の1つの特徴です。

肋骨骨折の治療の中心は痛みをおさえること

そう考えると、
肋骨骨折に特別な治療は必要ありませんが、

 

固定できない故に痛みが長引くのが
肋骨骨折の問題です。

そのために呼吸が浅くなったり、
活動性が必要以上に落ちて、

その間の体力の衰え、
筋力低下などが問題になります。

それであれば、
バストバンドをしたり

消炎鎮痛薬を内服したりして、

痛みを減らしながら、
日常生活、もしくは無理のないトレーニングを
していく。

そうしながら、骨がくっつくのを待つ。

それが治療と言えます。

肋骨骨折の治療期間は1から2ヶ月

そして、肋骨骨折がくっつくまでは、
だいたい4週間から6週間程度かかり、

さらに、そこから徐々に骨も、
新陳代謝をして強くなっていきます。

そのため、だいたい傷めてから1-2ヶ月の中で
重労働やスポーツ競技に復帰することを目指します。

肋骨骨折は完治するのか?

治療期間はわかったが、
そもそも完治するのか?

ということ、

つまり治療の一般的なゴールである、

元通り

これは達成できるのか?

という点ですが、

骨がくっつかないというケースは少ないので、
治療のゴールとしては、
多くの場合は達成できます。

しかし、骨がくっつく=元通り

ではないというのは注意が必要です。

肋骨骨折が完治しない場合

肋骨骨折が完治しない場合をいくつか
例にあげてみたいと思います。

肋骨骨折の程度が激しい場合

これは肋骨のズレが大きい場合や、
何本も折れている場合ですね。

この場合は胸郭の形が変わって、
スポーツ競技レベルでは呼吸機能、
たとえば 肺活量に影響がでることがあります。

また、骨がくっつかない可能性も、
ズレが大きければ出てきます。

肋骨周囲のダメージが大きい場合

これは、肋間筋や肋間神経と呼ばれる、
肋骨と肋骨の間にある筋肉や神経がダメージを
受けてしまい、

  • 肋間筋の痛み
  • 肋間神経痛

というものが後遺症として残ってしまうケースが、
稀にあります。

 

 

ポイントとしては、

多くの場合は1-2ヶ月の治療期間で肋骨骨折は完治するが、
しないケースもあるので、
痛みが続く場合は骨がくっついても受診を検討してください。

ということになります。

 

さきほど、肋骨骨折は特にギプスをすることもなく、
放置してもくっつくことが多いと話しました。

実際、肋骨骨折自体は
特に処置をすることなく、治ることがほとんどですが、

それと放置することは話が別です。

放置して、見逃してしまう危ない病態を3つお伝えします。

肋骨の大切な特徴:肺を覆っているということ

肋骨は左右12本ずつ、胸椎という背骨から、
前の方では肋軟骨という軟骨になって、
胸骨までぐるーんと回り込んでいる骨です。

大切なポイントは、そのすぐ内側深くに
肺がある

ということです。

心臓もそうですが、
特に肋骨骨折との関係では
肺が大切になります。

そして、肋骨でできている
胸郭という骨格が
呼吸によって膨らんだりしぼんだりします。

この肺・呼吸との関連が
肋骨骨折においては大切になってきます。

 

肋骨骨折で放置すると危ない3つの病態

この肺・呼吸との関連で
肋骨骨折の時に起こりやすい注意すべき
3つの病態についてお伝えします。

1.フレイルチェスト 動揺胸郭

これは肋骨が複数本、複数箇所で折れてしまった場合に
起こりうる重症型の肋骨骨折です。

引用画像:ビジュアル基本手技-カラー写真で見る!骨折・脱臼・捻挫-羊土社-

引用画像:ビジュアル基本手技-カラー写真で見る!骨折・脱臼・捻挫-羊土社-

普通は息を吸うと胸、胸郭は広がり、
吐くとしぼむわけですが、

それが胸郭をつくる肋骨がたくさん折れて、
形を維持できないために
逆に動いたり、ばらばらに動いたりします。

これをフレイルチェスト(動揺胸郭)と呼びます。

これは痛みは当然のことながら、
呼吸困難の大きな原因です。

救急外来での専門的な処置(気管挿管など)が必要になります。

 

2.気胸・血胸

次に、肋骨の内側にある肺に

穴があいて空気が漏れてしまう 気胸

引用画像:ビジュアル基本手技-カラー写真で見る!骨折・脱臼・捻挫-羊土社-

引用画像:ビジュアル基本手技-カラー写真で見る!骨折・脱臼・捻挫-羊土社-

肺から出血して血がたまってしまう 血胸

引用画像:ビジュアル基本手技-カラー写真で見る!骨折・脱臼・捻挫-羊土社-

引用画像:ビジュアル基本手技-カラー写真で見る!骨折・脱臼・捻挫-羊土社-

というものがあります。

これは比較的、肋骨骨折によくみられて、
時に入院して
専門的な治療が必要になります。

それはドレナージと言って、
空気や血を抜くという治療がメインになります。

3.肺炎

これは肋骨骨折直後よりも、
その痛みによって、

呼吸が常に浅くなってしまって、
風邪などを合併した際に起こりやすいです。

痰が溜まって、さらに痛みのせいで
痰を出せない。

その結果、肺炎になってしまう。

ということもあり得ます。

どれも、放置した結果、大変な治療が必要になることがあるものです。

 

 

フレイルチェストはさすがに放置も何も、
救急車に運ばれていることがほとんどですが、

気胸、血胸やその後の肺炎などは、
早めに見つけないといけません。

 

そのため、肋骨を強打して、痛みがある、
一度肋骨骨折と診断後も、
咳や痰が出る。息苦しい。

これらの症状があれば、
一度病院を受診することをお勧めします。

 

まとめ

肋骨骨折の治療として基本であるバストバンドの巻き方から、
治療期間のおおまかな目安、放置してしまった時の危険性について解説いたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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