腓骨筋腱脱臼の症状は?手術は必要? 専門医がわかりやすく

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こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。。
記事をご覧いただきありがとうございます。

 

2014年 ブラジルW杯前に日本代表入りが噂されていた
宇佐美貴史選手が直前で負傷してしまったことで
多くの方に知られた

腓骨筋腱脱臼

ですが、
名前もこむずかしいし、どういうことかわかりにくいのですよね。

 

腓骨筋腱ってなに?

脱臼って関節が外れたこと?

 

という疑問が湧いてきて当然だと思います。

宇佐美選手が怪我をしてしまった頃に、
解説した動画を貼り付けておきます。

参考にしてみてください。

 

腓骨筋腱脱臼が何か?

まず名前を分解してみましょう。

腓骨・筋・腱・ 脱臼

腓骨はこの骨です。

腓骨とは

足首では外くるぶしになってます。
そのすぐ外側を走る筋肉をそのまま腓骨筋といいます.
筋肉は骨にくっつく前により硬い筋張った組織になります。
それがです。
この図ではここにあたります。

腓骨筋腱脱臼
ご覧のとおり、
腓骨筋腱は外くるぶしの後ろを走っていますが、

それが前の方に乗り上げてきちゃうのを腓骨筋腱脱臼といいます。

 

つまり、脱臼とは関節が外れることというだけでなく、

「何かが、元の位置から外れてしまうこと」

を言うわけですね。

 

そして、腓骨筋腱脱臼の場合は、
腓骨筋腱がもとの位置から前に外れていしまうわけです。

 

普段は脱臼しないように
筋支帯というものが抑えています。
急激に足首に力が加わると、
この筋支帯が切れてしまいます.
キックによっては軸足に強い負担がかかることはよくあります。
宇佐美選手も軸足として踏み込んだ際の怪我のようです。

腓骨筋腱脱臼の症状は?

ここまでを理解していただくと、
腓骨筋腱脱臼の症状は想像できるかもしれません。

 

まず、「外れた瞬間」ですが、

これは先程も述べたとおり、
外れないように抑えていた筋支体が切れてますから、

シンプルに痛い!です。

それも場所的には外くるぶしが痛いです。

 

これは実は、足首の捻挫と非常に似ている症状です。

ですから、捻挫と思って放置してしまう人もいますから、
注意が必要です。

 

しかし、多くは、
外れた腓骨筋腱はもとに戻ります。

そして、力を入れたり、踏み込んだりした時に、
また外れるということを繰り返すことがあります。

そのたびに痛みが走りますから、
スポーツを続けることが困難になります。

腓骨筋腱脱臼とは腱が正常の位置から外れてしまうこと

ここまで説明したとおり、腓骨筋腱脱臼はこの正常な走行、位置から逸脱してしまうことを言います。

腓骨筋腱が外果を乗り上げてしまう

急激なカーブからして、脱臼するときは、このカーブがまっすぐに近づく方向に脱臼します。 腱がショートカットしようとするわけですね。

それはつまり、外くるぶしの後ろを走っていた腓骨筋腱が外くるぶしを乗り上げてしまうということです。

腓骨筋腱脱臼の原因

この腓骨筋腱はもともと、外くるぶしの後ろで筋支帯(きんしたい)という膜で脱臼しないように覆われています。

しかし、足首の捻挫の動きによって、筋支帯が損傷して、腱が脱臼してしまうというわけです。

その捻挫の動きは、

足関節背屈 + 内転

まず足首が背屈(つま先が上)の状態で腓骨筋腱のカーブが強まった状態(イラストのように走っていて踵までついて体重がかかっている状態や深く膝が曲がっているしゃがみ込みなどの状態)で、

Ankle pain concept

内転、つまり、つま先が内側(母趾側)に動く動きで、腓骨筋腱が前方に引っ張られることで脱臼します。

一番多い、足首の捻挫は足関節底屈(つま先が下)で内がえしという、足の裏が内側を向くように捻られる動きが主ですから、ちょっと違うわけですね。

 

 

こちらのイラストでは底屈、背屈でいえば、わずかに底屈、で内がえしですが、内転の要素も入っていますので、腓骨筋腱脱臼を起こしうる捻挫の仕方だと思います。

足を固定 + 下腿外旋

もう一つは、足がしっかり地面などに固定された状態で、下腿が外旋されてしまう動きです。

それは実際は足の位置は固定された状態で、膝が外側を向くような動きです。 これも足が固定されているだけで、結局、似たような足首の捻り方になっています。

腓骨筋腱脱臼なりたて(新鮮例)と時間が経ったケース(陳旧例)

腓骨筋腱脱臼は受傷直後のなりたて状態(=新鮮例)時間が経って、診断がついたり、ちょくちょく外れるのが困って受診するケース(=陳旧例)があります。

新鮮例はギプスなどの固定もあるが再発率高い

新鮮例は腱脱臼が整復された状態で固定すれば、損傷した筋支帯が修復されて治る可能性があります。

ただ、手術に比べると、再発率が高いと言われています。

テーピングだけで治すのは難しい

この新鮮例を手術せずに直す場合は、ギプスが必要です。

少し底屈位での足首のギプス固定外くるぶしの後ろにパッドを当てて腱が乗り越えないようにすること、さらに腓骨筋の収縮で腱に張力がかかるので、免荷(=松葉杖などで体重をかけない)ということが必要です。

これよりやや底屈位での固定になるケースが多いです。

これを6週間くらいというのが一般的な方法です。

なかなか長い固定期間ですが、高い再発率を少しでも下げるために、固定期間や固定方法など様々な方法が試されています。

そう考えると、テーピングだけで外れないように足首を固定したり、腱をサポートすることは難しいということがわかります。

陳旧例でテーピングで外れにくいように固定するには?

陳旧例では時間が経っているため、自然に筋支帯が修復されるのを期待するのは無理があります。

そのため、根本的には手術が必要ですが、ただ、外れる頻度を下げることはテーピングでも狙えます。

腓骨筋腱が脱臼してしまうのは、足首背屈+内転ですから、その動きを制限するようなテーピングをすればいいということになりますが、現実問題、足首の背屈を制限してしまうと多くのスポーツパフォーマンスに影響を与えますので、足首の内と外への不安定性を制御するようなテーピングが基本となります。

ただ、それでもパフォーマンスが制限されてしまうのでは考え物ですし、テーピングでは脱臼を完全に防げるモノでもありません。

腓骨筋腱脱臼は手術が必要か?

手術をする方法としない方法の両方があります。
手術をしない場合
基本的にはギプスなどで固定と安静をして、
脱臼を繰り返さないような状態を目指します。

そうすると、固定期間も1ヶ月以上を要することが多く、
その間に足首が硬くなり、
また、筋力も落ちてしまいます。

さらに、それだけしっかり固定しても、
やはり筋支体が切れてしまっていますから、
再脱臼のリスクが高いと言われています。

 

そういう意味で、
早期復帰を目指すケース、再脱臼を出来る限り防ぎたいケースでは
手術が選択されることが多いです。

手術は様々な方法が開発されていますが、
基本的には、脱臼しないように筋支体を縫い付けるか、
別のもので代用するというのが一般的です。

腓骨筋腱脱臼の手術を考えるとき

では、もう少し手術について掘り下げます。

腓骨筋腱脱臼の治療において手術を積極的に考えるとき、手術した方がいいかなと考えるときは主に2つです。

新鮮例で早期復帰を目指すとき

まず新鮮例、つまり腓骨筋腱脱臼を受傷して間もない時期ですが、この時期はギプスなどの固定でも治せる可能性があります。

しかし、その場合は再脱臼率を下げるために固定期間が長くなり、そのため足首がカタくなってしまい、筋力も低下します。つまり、早期のスポーツ復帰に保存治療は向かないわけですね。

そのため、新鮮例でも早期復帰を目指すときは手術を積極的に考えます。

陳旧例で困っているとき

もう一つは陳旧例です。これはつまり、時間が経ってしまった腓骨筋腱脱臼です。

よくあるケースは、足首の捻挫後になんか痛みが残るなと思って、病院を受診してみたら、腓骨筋腱脱臼が判明するケースです。 捻挫後すぐは腫れているので脱臼に気付かないということはよくあることなんですね。

このように時間が経ってしまった場合は、ギプスなどで固定しても、自己治癒力が落ちているので、期待できません。そのため、脱臼しないようにするには手術が必要になります。

手術方法:腓骨筋腱が外れるルートを閉じてしまう

手術方法はいくつか報告がありますが、基本コンセプトは腓骨筋腱が脱臼してしまうスペース(仮性嚢と呼ばれます)を閉じてしまうという方法です。

閉じるというのは糸を使って、切れてしまった筋支帯を骨に縫い付けるというような方法が一般的です。

また、腓骨という外くるぶしを形成する骨を削ったり、切ったりして、より外れにくい骨格に外くるぶしを変えてしまう手術をすることもあります。

手術後は6週間くらいでの復帰を目指す

手術後はどれだけ強固に縫えたかにもよりますが、2週間程度のギプス固定ののち、足首の可動域訓練などを段階的に行って、6週間くらいでのスポーツ復帰を目指します。

まとめ

今回は腓骨筋腱脱臼について、
基本的なことになりますが、解説いたしました。

参考になりましたら幸いです。

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