スポーツ傷害

治らない突き指にしないために絶対に守ってほしいこと 専門医解説

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この記事を書いた人
歌島 大輔ADMINISTRATOR
景翠会 金沢病院
整形外科専門医 / 認定スポーツドクター / CSCS(米公認トレーナー) / 苫米地式コーチ 補
肩 / スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療 / 手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

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突き指はスポーツをしていれば誰もが一度は経験したことがあるものかもしれません。
そのくらいありふれた怪我なので「とりあえず引っ張っておけ・・・」で済まされることもあって、逆に注意が必要です。

整形外科の専門医として外来をやっていると「単なる突き指だと思って放置していたんですけど・・・治らなくて・・・」というご相談が結構多いです。それが1週間で治らないという人もいれば、1ヶ月、下手したら半年治らないんですけど・・・というご相談でいらっしゃることもあります。
突き指と思いきや・・・ということで言えば、ここでも解説する骨折や腱断裂というホンマもんの、放置したら治らない怪我があるわけですが、放置期間が1週間ならまだしも、1ヶ月、半年となってくれば、治るものも治らなくなります。

でも、整形外科に行く時間もないしなぁ・・・
という気持ちもわからなくはないので、

まず、こちらをお読みいただき、どれだけ放置すると危険なのかをザックリご理解いただいてから、お近くの整形外科の受診もご検討ください。

さらに後半には「残念ながら、治らないかもしれない突き指・・・」と判明したときに、どう付き合っていくべきかということについてもスポーツコーチングのをしている立場から解説してみたいと思います。

突き指したらまずは指がフルに曲げ伸ばしできるか確認!

突き指した場合に最初にすることは、指の動きの確認です。

多少の痛みがあれど、完全にグーになるくらい指が曲がって、完全にパーになるくらい指が伸びるようであれば、大きな骨折や腱断裂の可能性は低いと言えます。 指には第一関節から、第三関節まで(正確には先端からDIP関節、PIP関節、MP関節と言います)が、他の指と同様に完全に曲がり、完全に伸ばせるか?を確認してください。 確認してみたら、痛いせいで曲げ伸ばしが十分にできないケースと、痛みもあるけど、なにより力が伝わらず伸ばせないケースと、痛みはあれどフルに曲げ伸ばしできるケース この3つのケースが主に考えられます。

前者二つ、つまりフルに曲げ伸ばしできないケースは「整形外科」をすぐに受診してください。それは次に述べるようなホンマもんの可能性があるからです。

 

骨折している可能性 十分あり

まずは単なる突き指と思いきや、骨折だったというケースです。これが一番避けたいケースです。

指の骨折はよっぽどじゃない限り、大抵くっついてくれますが、しかし、ちゃんと治療しないと、変形してくっついてしまいます。 また、単純に骨折がくっつくまでの期間も長引いてしまう結果になりかねません。 治らない突き指の代表が「実は骨折だった」というケースだったと思ってもらってかまいません。

骨性槌指(こつせいつちゆび;こつせいマレットフィンガー)

特に見逃されやすい、放置されやすい突き指と思いきや骨折パターンの代表が骨性槌指(こつせいつちゆび)、bony mallet finger(ボニーマレットフィンガー)です。これは指の第一関節(DIP関節)を伸ばす伸筋腱がくっつく末節骨(まっせつこつ)の骨折で、いわゆる伸筋腱に引っ張られて骨が剥がれる「裂離骨折」と呼ばれるものです。

骨性マレットフィンガー 骨性槌指

これによって伸筋腱の力は伝わりませんから、第一関節(DIP関節)は自力では伸ばせなくなります。

この骨性槌指は基本的に手術を行います。局所麻酔の日帰り手術で行えますので、比較的簡便な部類の手術になります。石黒先生という日本のお医者さんが開発された「石黒法」というのが完全なスタンダードになっています。これは2本の細い針金(ワイヤー)で折れた骨片を挟み込むように固定する方法で、骨がくっつくまでの1.5−2ヶ月はワイヤーを入れっぱなしにすることになります。この手術で骨が完全にくっついてしまえば、また、指は伸ばせるようになります。 骨性マレット 骨性槌指 石黒法 手術 この場合の治療経過としては、まず最初にレントゲンで診断します。レントゲンを見れば、骨性マレットフィンガーは一目瞭然です。

それが見つかると、次は手術日を設定します。骨がくっつく能力がなくならないようにできるだけ早めの手術日を検討することになります。できれば突き指してから2週間以内。最低でも1ヶ月以内でないと、特殊な処置などが必要になることがあります。

そして、手術当日は局所麻酔の注射後に15分から30分くらいの手術を受けます。先ほど述べたとおり、ワイヤーで骨を固定する手術です。

術後はワイヤーが指からちょこっと出てますから、それを保護するためにガーゼや包帯が巻かれています。傷は濡らさないように、患部には負担がかからないように生活をしつつ、1-2週間に一回程度、傷のチェックやレントゲンチェックに受診します。

骨のくっつきが見られてくれば、だいたい6-8週間でワイヤーを抜去します。このワイヤーは骨折部のみならず、第一関節も固定しているので、それまでは指の曲げ伸ばしもできない状態でしたから、ワイヤー抜去後から指の曲げ伸ばしをしていくことになります。多少は硬くなっているのは間違いないので、少しずつ可動域が広がるように動かしていくことになります。

腱性槌指(けんせいつちゆび;けんせいマレットフィンガー)

もう一つ、指が伸ばせないものの代表が腱性槌指(マレットフィンガー)です。これは先ほどの骨性槌指が骨ごと伸筋腱が剥がれるのに対し、腱性槌指は骨は剥がれず、腱だけが骨から剥がれます。そのため、レントゲンでは 異常がないことが多いですが、結局、第一関節が自力で伸ばせないことから、診断は容易です。 腱性マレット 腱性槌指

ただ、治療は骨性槌指より若干やっかいです。手術もあるにはあるのですが、骨性のようにくっつきがいい骨と骨ではなく、腱と骨をくっつけなくてはいけないので、ワイヤーではさみこむというような方法もとれずに難渋します。 そのため、多くは手術ではなく指を完全に伸ばした状態(やや伸ばしすぎくらい)で固定します。しかし、それも大変で、くっつくまでに一瞬でも曲げてしまえば、振り出しに戻る・・・という治療なので、患者さんも固定が緩んでないか間違って曲げてしまわないかを注意しないといけませんし、われわれも固定をやり直すときに、指が一瞬でも曲がらないように慎重に行います。

そして、そうやって、お互い頑張って治療して2ヶ月・・・それでも十分に治らないこともあったりするのが厄介なところです。

ただ、こうやって治療がやっかいな反面、「そもそも治療しないといけないか?」という議論があるのも腱性マレットです。
第一関節が曲がらないのは困りますが、完全に伸びきらなくても意外と困らないのが人の身体だったりするので、スポーツをやっている人はその動作において、どれだけ、その指の第一関節を伸ばす必要があるかという視点も同時に持っておく必要があります。

ちなみに骨性槌指の場合は治療しないと骨折が残ってしまうことになるので、こちらは原則治療が必要ということで異論は少ないです。

指がフルに曲げ伸ばしできる場合の整形外科受診基準

次に一応、痛みはあれど指がフルに自力で曲げ伸ばしできるという場合の考え方です。それでも、痛みが強かったり、腫れや内出血があるなら何かしら傷んでいる(骨、靭帯など)わけですから、病院受診をお勧めしますが、なかなか行けない場合はまず1週間だけアイシングや安静をしながら様子を見ます。

 

1週間治らない

一つの目安として1週間経っても、痛みや腫れなどが残る場合は病院へ行ってください。骨折があっても、よほどズレがなく、安定している骨折であれば、個人差の中でフルに動かせる人がいてもおかしくありません。また靭帯損傷の場合は曲げ伸ばしができる場合があります。靭帯は曲げ伸ばしを直接司る、筋肉や腱とは違って、極論、なくても指は曲げ伸ばしできます。しかし、靭帯が切れていると関節が安定しないので、脱臼してしまったり、変な方向(横方向)に曲がったりしてしまいます。 そういったホンマもんの可能性を考えて、整形外科を受診しましょう。

 

半年治らない

半年治らない・・・という場合で、

整形外科を受診していない場合は・・・

反省しましょう。 もっと早く行くべきでした。

と、過去を悔やんでも仕方ないので、今からでも受診してください。 また、何度か病院に受診して、「特に異常がない」と言われたのに、半年治らないということもあります。 この場合でも再度整形外科を受診して、納得いく説明が得られなければ、紹介状を書いてもらって他の病院で相談することも検討してみてください。レントゲンで見つけられない骨折もあれば、重症でない靭帯損傷や重症の打撲などが慢性的な痛みの原因になってしまったりします。

「整形外科」に行くべき理由

いずれにしても「病院を受診しましょう」が中心的な結論になるわけですが、病院(クリニック)も整形外科を受診してください。

他の選択肢、可能性として「接骨院」「整骨院」「整体院」「治療院」などがあると思いますが、それは診断がついた後、自己責任で選ぶ場所だと思ってください。中にはとても腕のいい先生(柔道整復師や整体師)もいらっしゃると思いますが、医師はいません。放射線技師もいなければ理学療法士もいませんから、診断はもちろん、レントゲンも撮れませんし、医学的なリハビリもできません。 また、整形外科の医師がいない病院、クリニックも診断能力は相当落ちます。医師はいても整形外科領域はかなり特殊な世界なので、骨のレントゲンもまともに読めない医師がほとんどです。それは当然で、僕ら整形外科医も胸が痛いという患者さんの心電図を最低限しか読めません(明かな心筋梗塞は診断できると思いますが、それ以外はなかなか厳しいです)。

ということで、突き指で行くべきは「〇〇病院の整形外科」、「〇〇医院の整形外科」、もしくは「〇〇整形外科クリニック」になります。

 

突き指の治し方

突き指の治し方についてです。見逃してはいけない代表的なものとして骨性槌指、腱性槌指については治療についても述べました。その他の骨折や靭帯損傷について後述しますが、一般的な骨折でもない、靭帯損傷でもない、腱損傷でもない突き指については、怪我した直後から1−2日目くらいまでは応急処置の基本「RICE」処置を行い、その後は痛みに応じて動かしていって、段階的に負荷を高めて、元の生活、元の活動に戻っていくということが基本です。 ちなみにRICE処置は、

  • R:Rest=安静
  • I:Icing=冷却、アイシング
  • C:Compression=圧迫
  • E:elevation=挙上

の頭文字で、突き指の場合には包帯で巻いて圧迫しつつ、その上からでも氷水を当てて10分冷やして、凍傷にならないようにやすんで、また冷やしてを2-3回繰り返し、できるだけ心臓より高い位置に手を置いておいて、痛い指は動かさない。ということがRICE療法になります。

突き指と思いきや・・・骨折の治し方

その他の骨折であれば、原則通りに治療します。 原則とは、ズレがほとんどなければ、その骨折部の先端と根元の関節を骨がくっつくまで固定するということです。指の固定はアルフェンスシーネと呼ばれる金属の板にスポンジがくっついたものを添え木にしてテープで固定するパターンが多いです。また、ズレがある骨折であれば徒手整復といって、医師の整復操作によってズレが戻れば、そのまま固定となりますし、戻らなかったり、戻ってもまた ズレたりするようなら手術します。手術は細いワイヤーでの固定がメインになります。

突き指と思いきや・・・靭帯損傷の治し方

骨折・腱損傷についで重症、厄介なのが靭帯損傷です。靭帯は指の関節がおかしな方向に曲がらないように、脱臼しないように安定化させてくれていますが、それが損傷して、治らないと、その関節だけおかしなほうこうに曲がってしまうことがあります。それを防ぐためによくやるのが、バディーテーピングと呼ばれるテーピングです。これは、突き指した指とその隣の指(人差し指なら中指、中指なら人差し指か薬指など)と一緒にテープで巻いてしまうという方法です。そうすると隣の指が添木となって、少なくともおかしな方向に曲がってしまうことが防げるというわけです。

後遺症「治らない突き指」になってしまったときの今後

もし、時期を逸してしまったり(手遅れ)、しっかり治療を受けたにもかかわらず残念ながら「治らない突き指」となってしまった場合・・・それは指を動かした時の痛みだったり、指の関節の変形だったり、指が自力で伸びないなどの運動障害であったり、いろいろなケースがあると思います。

僕も整形外科専門医として日々、治療する中ですべての人を元どおりに治せているわけではありません。むしろ、元どおりに治るというのは稀なケースかもしれません。

 

この「治らない突き指」に直面したときに間違っても過去の自分や過去の治療を責めないで欲しいんです。

もちろん、反省すべきところは「未来」に向けて整理しておくべきですが、過去を責めても何にもなりません。ですから、「治らない」とわかれば、その指とともに「どういう未来を描くか、進むか」にすべての意識を100%集中していければ、果たしてその突き指がマイナスだったのかどうか、怪しくすらなってきます。

このレベルの話は心情的にも日々の外来で、我々医師が安易にできるものではないので、逆にこういう情報発信の中で伝えられればと思っています。

だいぶ昔になりますが、巨人のエースとして活躍した堀内恒夫投手(その後、監督や解説者をされていますね)は幼少期に人差し指に大怪我を負います。しかし、その大怪我でできた人差し指の変形のために、カーブが常人レベルでない曲がりを見せるようになり、伝説的な投手になったことは有名な話です。

人の身体はあらゆるスポーツやあらゆる活動をするために理想的なフォルム(形状)、機能を持っているとは限りません。進化の過程で生きながらえるために(それは獲物を獲得する動きだったり、エネルギーを節約することだったり、コミュニケーションをとることだったりするわけです。)必要なフォルムや機能ではあれど、理想系、完成系ではありません。 もし「治らない怪我」をしてしまったとしたら、このレベルで人の身体を認識して、捉え直して、その上で未来を描く。「自分はどうしたいのか?」を徹底的に追及する。その結果、きっと見えてくるものがあるはずです。

このプロセスをコーチングという方法論の下、僕自身も指導したり、情報提供していますので興味があればメールマガジンに登録してみてください(当サイトでご紹介している電子書籍プレゼントのご請求で登録できます)。

そういった「未来」を描くことに集中するために必要なのは、やはり「しっかりした、やるべき治療を受けている、やっている」という事実と実感です。これがないと不安や後悔に襲われる原因になってしまいますので、治療は治療としてしっかりやるべきことをやる、その上で、未来を描く。これは突き指が治ろうが、治るまいが、一番大切なマインド、考え方になると思います。

まとめ

ここまで治らない突き指にしないために大切な知識をお伝えしてきました。 そして、絶対に守ってほしいことは、

  • 指がフルに動かせるかを確認すること
  • フルに動かせても1週間以上痛みが残れば必ず整形外科受診すること

この2点になり、 そして、さらには 「治療は治療としてしっかりやるべきことをやる、その上で、未来を描く。」 というところを意識してもらえらたら嬉しく思います。

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