膝の前(お皿周囲)の痛みの原因とテーピング法

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膝の前、すなわち、お皿の周囲が痛いという症状で、考えられる原因はそんなに多くはありません。この記事でかなり整理できると思います。

できるだけわかりやすく解説し、さらにそれぞれの原因に対してどんなテーピングが有効かということが理解しやすいように心がけております。

 

また膝のお皿の上が腫れるということも、ときに相談される症状ですが、これについてもわかりやすく整理しておきましたのでご参考にされてください。

こんにちは、整形外科医でスポーツメディカルコーチの歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

膝のお皿の上が痛い原因と適したテーピング

では、さっそく膝のお皿の上が痛い原因について解説していきます。

膝のお皿の上にあるものは?

もちろん、神経性の痛みや全身性の痛みなど、それ以外のこともありますが、大抵は

痛い場所に痛みの原因がある

と考えます。

 

とすると、膝のお皿の上にあるモノ、

すなわち膝蓋骨(しつがいこつ)という骨の上にあるのは、

  • 大腿骨(だいたいこつ)
  • 大腿四頭筋腱
  • 膝蓋上嚢(しつがいじょうのう)
  • 滑膜ひだ(たな)

これらがメインです。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第一版 医学書院

大腿骨はふとももの骨で、

大腿四頭筋腱は膝を伸ばす筋肉がお皿の膝蓋骨にくっつく部分のスジのことです。

また、膝蓋上嚢は聞いたことがないかもしれませんが、要は膝の関節というスペースの膝蓋骨の上にある部分です。関節というのは関節包(かんせつほう)という膜に包まれた1つのスペースであり、その中には関節液で満たされています。

そして、膝の場合はお皿の上にまでそのスペースが広がっていて、お皿の上で、袋のような形状をしているので膝蓋骨の上の袋で膝蓋上嚢という名称になっています。

この膝蓋上嚢は関節液が増えて、いわゆる「水が溜まった膝」の状態になると膨らみます。

 

 

滑膜ひだというのは、通称「たな」と呼ばれていて、膝蓋骨の上、内側に関節の中に飛び出すように位置するひだ状の膜です。

画像引用元:膝診療マニュアル 第5版 医歯薬出版

 

膝のお皿の上が痛いというときにはこれらの何かが原因になっているのでは?と考えます。

大腿四頭筋腱炎(だいたいしとうきんけんえん)

まず多いのは大腿四頭筋腱炎ですね。 大腿四頭筋腱が炎症した状態です。

多くはオーバーユース(使いすぎ)で疲労性に起こります。

走ったり、跳んだりというような瞬間的に大腿四頭筋を使うような、地面を蹴る動作が多いスポーツで起こりやすいです。

大腿四頭筋腱炎に対するテーピング

この大腿四頭筋腱炎に対するテーピングとしては、大腿四頭筋の作用をサポート、助けてあげるようなテーピングがメインになります。

テープの縮む力を利用して、太ももの前面からスネまで貼るのがシンプルな方法です。

 

https://youtu.be/VE7IEZ0Zxxw

ただ、お皿である膝蓋骨との兼ね合いも実際は重要になります。

 

例えば、同じ筋肉の緊張具合であれば、お皿が下にあるほうが上にあるときよりも大腿四頭筋腱にかかるストレスは強くなります。お皿が下にあったほうが大腿四頭筋が伸ばされますからね。

その性質を利用して、お皿自体をサポートするテーピングと縦に貼るテーピングを組み合わせて、お皿を上で安定させるのも効果的です。

そうするためには、お皿のサポートテープを膝を伸ばして、かつ四頭筋に力を入れた状態で貼るといいです。

たな障害(たなしょうがい)

たなとは滑膜ひだであると述べましたが、

この関節の中にあるお皿の内側からお皿の裏側に張り出す「ひだ」が、お皿と大腿骨の間で挟まるようにして痛みや炎症を起こすことを「たな障害」と呼びます。

正確には内側滑膜ひだ障害と言います。

 

この滑膜ひだは進化の過程で必要なくなったにもかかわらずまだ、残っている組織と考えられていて、たな障害が改善しない場合は関節鏡手術で切除してしまうことが多いです。

たな障害に対するテーピング

このたな障害に対するテーピングはお皿を安定化させることがポイントになります。

お皿が上下左右にグラつかないためにお皿の周りをグルリとテープで取り囲むようなテーピングが一般的です。

お皿の上が腫れる 腫れている気がするのはなぜ?

このお皿の上が腫れるということも、整形外科外来をやっていると比較的多い相談です。

特に膝のお皿の上が痛いという人はよく触れてみたり、左右を比べてみると腫れていることが少なくありません。

いろいろな原因がありますが、

大腿四頭筋の周囲の腫れ

1つは大腿四頭筋周囲の腫れです。

さきほど解説したオーバーユースによる大腿四頭筋腱炎ではあまり腫れることはなく、四頭筋腱が腫れているときは肉離れや腱損傷などを考えます。

この徴候があったら要注意 即病院へ!

前半で解説した痛みもそうですが、腫れにおいても、放置してはいけない徴候というモノがあります。

レッドフラッグサイン(赤旗徴候)と呼んでいますが、

  • 夜間痛(痛みで起きてしまう、眠れない)
  • 熱感がある(触れると熱い、左右差がある)
  • 腫れが強まってくる
  • 発熱がある(体温上昇)

これらがあるときは、膝の細菌感染や腫瘍など、見逃すと手遅れになりかねない重大なモノが潜んでいることがありますので、速やかに整形外科を受診しましょう。

膝に水が溜まっている

膝関節に水が溜まると膝蓋上嚢であるお皿の上の袋が膨らんでくると解説しました。

そのため、膝のお皿の上が腫れているというケースで一番多いのは膝に水が溜まった状態です。

水が溜まった状態は結果であり、その原因がなんなのかが大切です。

  • 靱帯や半月板損傷などの外傷
  • 関節の中の骨折
  • 軟骨がすり減った変形性関節症
  • 関節リウマチ
  • 痛風

などなど、様々な原因があり得ます。

まずその原因をハッキリさせないと治療になりませんから、この腫れが水が溜まった状態だとすれば、まずは整形外科で原因を明らかにさせたいですね。

お皿の上(表層)の滑液包炎

お皿の表層には滑液包(かつえきほう)という、膝の関節とは繋がっていない、別の袋があります。

普段は水はほとんど溜まってないんですが、外傷やちょっと擦れる刺激などで炎症が起こって、水が溜まって膨れることがあります。

これは滑液包炎(かつえきほうえん)と呼ばれます。

痛みや赤み、熱感がなければ、緊急性はなく、様子をみても問題ありませんが、

痛みや赤み、熱感などがある場合は滑液包の中に細菌が繁殖した、つまり化膿した状態の可能性があるので、速やかに整形外科受診が必要です。

まとめ

今回は膝のお皿の上が痛いという症状で考えられる原因を整理し、それに対するテーピングをご紹介いたしました。

テーピング方法は様々ありますが、痛みの原因を特定した状態で、そのメカニズムから逆算して、どのようなテープの貼り方でサポートすれば治療に結びつくかということを考えながら貼るということが大切です。

 

また同時に気をつけないといけない「膝のお皿の上が腫れる」ということについても原因と放置してはいけない注意すべきポイントを解説いたしました。

特にポイントは

  • 赤み+熱感
  • 腫れ+痛み
  • 夜間痛
  • 悪くなっていく

というような状態は早めの整形外科受診をして、手遅れにならないようにする必要があるということです。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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