今回は手首の骨折の治療に必要な知識をギッチリお届けしたいと思います。
特に痛みと腫れがいつまで続くのか?っていう不安をお持ちの人に対して、
わかりやすい内容からスタートしていきます。
手首の骨折に限らず
痛みと腫れ、正確には疼痛と腫脹と言いますが、
これは必ず起こります。
しかし、手首の場合は
それが目立つために
気になってしまう方が多いですし、
手首特有の注意点もあります。
こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。
本日の記事をご覧いただきありがとうございます。
それではいきましょう!
手首の骨折後の痛みがいつまでも引かない原因と対策
手首の骨折をしてしまったときに、骨折した瞬間やその直後は痛いに決まっています。
そこに疑問を挟む余地はないかもしれません。
でも、病院で治療を受けてからは、できればすみやかに痛みが引いてほしいですよね。
しかし、応急処置後にすみやかに痛みがひいてしまうケースもあれば、
数日は痛みが強いケース、
もしくはギプス固定や手術を受けたのに、
いつまでも痛みが残ってしまうケースなど、
治療経過は千差万別です。
そんななかで「いつまでも」というのは個人個人感じ方が違うわけですが、
ある程度の期間、痛みが残ってしまうケースの、その原因について解説します。
痛みがいつまでも引かない原因
手首の骨折部が不安定である
まず多いのは手首の骨折部が不安定な場合です。
骨折部がグラグラしていたら、動かすたびに痛いです。本来動いちゃいけない部位ですから。
それを防ぐために応急処置でもしっかり手首を固定しますし、
その後、より固定性を上げるためにギプスを巻くこともあれば、
手術として金属で固定することもあるわけですね。
これらの「固定」というものがうまくいっていないか、
太刀打ちできないくらい不安定な骨折であれば、痛みが残りやすいと言えます。
手首の骨折部の腫れのコントロールがうまくいってない
次に述べるような腫れがうまくコントロールできないと、
それは炎症反応が長引きやすいので、痛みが残りやすいです。
手首の骨折部の変形がある
手首の骨折がくっついたとしても、
もとの形からはだいぶ異なるような変形を起こすと、
手首を動かすときに通常の動きとは変わってくるために、
動かすたびに痛い、のような症状が出ることがあります。
また、変形は可動域制限(つまり、カタい状態)の原因にもなりやすいです。
手首や指の関節が拘縮している
骨折の治療の基本は「固定」、つまり、動かせなくするわけですから、
その治療において関節はカタくなります。可動域が狭くなるわけですね。
その状態のままだと、動かせる範囲以上に動かそうとしたときに
毎回痛い、ということが起こりえます。
痛みがいつまでも引かない場合の原因別対処法
不安定な手首はあらゆる手を尽くして安定させる
骨折部が不安定だと痛いと言いました。
であれば、安定させるために治療があるわけですが、これを考えるのは主に医師の仕事です。
あまり患者さん自身がここを不安に感じてしまうと、あまり良いことはないですが、
実際、われわれ医師がこの不安定性をどう判断しているかを簡単にお伝えしておきます。
まず第一に骨折そのものの重症度です。
最初の診断時に骨折が大きくズレていれば、その時点で不安定性:大と判断します。
次に整復して固定したあと、数日から1週間後にレントゲンを撮り直します。
この時点で固定直後からまったくズレてなければ不安定性:小と判断しますが、
徐々にずれてくるようであれば不安定性:大ということになります。
そして、不安定性の大きさでざっくり治療法を区別すると
- 不安定性:大 → 手術
- 不安定性;中 → ギプス(最初からギプスをすることは少ないですが)
- 不安定性;小 → シーネと包帯や装具
という形になります。もちろん、不安定性だけで治療を決めるわけではありませんが。
腫れのコントロールを徹底する
腫れのコントロールの徹底については、次の項目で腫れについて解説していますので、ご参照ください。
変形が残らないような初期治療と変形後の骨切り術
変形が残るケースのほとんどはそもそも骨のズレが大きい場合です。
骨折のズレが大きければ、頑張って徒手整復してガッツリ固定するか、
それは厳しいと判断すれば手術をする
という初期治療の判断をしっかりして変形を残さないように注意しています。
それでもなお、変形を残してしまう重症型の骨折は存在します。
その場合に変形した形で骨がくっついてしまった後に、
骨折部の角度を正常に近い形に戻すように、骨を切って固定し直す
という「骨切り術」が行われることもあります。
拘縮を改善していくのはひたすらリハビリ
手首や指の拘縮(関節がカタくて可動域が狭い状態)を改善していくには、
ひたすらリハビリ、つまり、ひたすら動かしていくということになります。
また、手首の骨折の場合は指は動かしてもいいケースが多いです。
特に親指以外の指は関節が3つありますから、3つともしっかりと曲げ伸ばしをする
ということをギプスなどで固定しているときから、
どんどん積極的に動かしていくことが
拘縮を防ぐ上でも、腫れやむくみを減らす意味でも重要です。
手首の骨折後の腫れを2つに分類
次に手首の骨折後の「腫れ」についてですが、
2つにわけて考えたほうがいいので、
それぞれ解説して参ります。
手首骨折後の腫れ:腫脹
1つめは腫れそのものですが、
正確には腫脹というものです。
骨折をすれば、当然、
そこから出血します。
それによる内出血、
それによる腫れ
これが最初に起こりますが、
その後の腫れは、
炎症というものを表します。
炎症とは、骨折を治そうとする体の
自然な生体防御反応で、
必要なものです。
骨折でダメージを食らって、
どうしようもない部分はお掃除して、
また、治すべき材料(細胞や物質)を
どんどん集めてきます。
それは主に血液や滲出液など液状成分
であるため、
どんどん骨折部はふくれあがり、
つまり、腫れるわけです。
まったく炎症が起こらない人は、
骨折も治りません。
ただ、どうしても人の体は
守ろうとするあまり、
行き過ぎる傾向があって、
骨折後は治癒に悪影響が出るくらいに、
腫れが強くなってしまったりするわけですね。
手首骨折後の腫れ:浮腫(むくみ)
もう一つは、
腫れと混同する患者さんがほとんどですが、
浮腫
すなわち、むくみです。
これは炎症で起こる腫脹とは異なります。
骨折時の浮腫(ふしゅ)は
血の巡りが悪くなるのが原因です。
手首の骨折では、
当然、折れた手首の骨の周囲に
どんどん炎症による液状成分
(出血や滲出液)が集まります。
これは腫脹と説明しましたが、
そのせいで、
その部分だけ圧が上がって、
手の指の方から、
静脈を通って、
心臓にかえる 血の巡り
これが障害されます。
つまり、手首でストップしちゃうんですね。
そのせいで、
手の指や手のひら、手の甲の
血の巡りが悪くなって、
水分が心臓に返らなくなるので
どんどん水分がたまってきます。
それが浮腫です。
手首の骨折なのに、
手の指までぶくぶくに腫れてしまうのは、
これが1つです。
ついでにもう一つ、
重力に従って、内出血が指に降りてきて、
これがまた浮腫を悪くします。
手首の骨折の痛みと腫れに必要な処置は?
それでは、腫脹と浮腫
これを抑えて、良くするのに必要なことは何でしょうか?
痛みと腫脹を抑える、良くするには?
腫脹を抑える。
それはすなわち炎症を抑えることになりますが、
大切なのは
骨折部のしっかりとした整復(元の位置に戻す)と、
固定です。
これは病院で医師がやりますので、
任せるしかありませんが、
さらにできることとしては、
患部の安静と
アイシング(患部を冷やす)と
挙上(心臓より高く挙げる)になります。
これは外傷の初期治療で言われる、
RICE療法と同じことです。
浮腫を抑える、良くするには?
浮腫の基本も、
水を心臓に返すことなので、
RICE療法が基本です。
手を心臓より高く保ち、
可能な部位は圧迫する。
そして、さらに重要なのは、
手首の骨折ですので、
基本、指は動かせます。
多少痛いと思いますが、
積極的に指をしっかりと動かす。
それも完全に握り、完全に開く
という動きをゆっくりでも繰り返す。
これによって、筋肉が使われて、
血の巡りがよくなりますし、
腱が滑ることでも、
周囲の血の巡りを促します。
軽症なのに手首の痛みや腫れがいつまでも残るケース
また、軽症なのに
診断が遅れて、治療が遅れてしまって痛みや腫れがいつまでも残ってしまう
というケースがあります。
多いのは捻挫や打撲だろうと思って、病院にいくのが遅れてしまうケースですね。
ということで、見逃しやすい手首の骨折「ひび」について解説します。
手首に「ひび」が入ったときの典型的な症状と「ひび」と打撲で迷ったときの要注意症状についてです。
手首は手関節(しゅかんせつ)と呼ばれますが、実際は多くの骨が絡んだ関節です。この関節は非常に安定しているので脱臼するよりも骨折する方が遥かに多い関節です。そのため、「打撲と思っていたら折れていた、「ひび」が入っていた。」なんてことはよくあります。
そんな手首の「ひび」を見逃さないための症状に関する知識をお伝えいたします。
手首のひびの典型的症状とは?
「ひび」と言っても、医学的には骨折です。骨が折れてしまっていることには変わりありません。ただ、ずれがほとんどない軽症型の骨折であるというのは言えるでしょう。(部位にもよりますが)
ということで、典型的症状は骨折の軽症型の症状です。
瞬間的な痛み
まず一般的な骨折と同じで、受傷した瞬間は痛みがあります。これは当然ですね。ただ、打撲と区別がつかない程度の痛みのこともあります。
手首を動かすと痛い・・・でも動かせるかも
その「ひび」が入った骨が関連する関節は動かせば痛いはずです。しかし、ズレのある骨折に比べれば軽度で、動かせることは動かせるという状態かもしれません。
腫れや内出血はあっても少しだけ
打撲だけでも腫れたり内出血したりしますが、一般的にはズレのある骨折では内出血や腫れは大きいです。
しかし、ズレがない「ひび」はそれも少ないことが多いです。
手首の変形はない
ズレがない骨折=ひび ですから、手首の変形はありません。変形があれば骨折や脱臼を疑って救急外来でもどこでも連絡をして受診すると思いますが、それがないというのも落とし穴ですね。
注意深く触れば圧痛あり
「ひび」が入ったところは当然押せば痛いです。しかし、手首の骨は小さい手根骨もありますから、少し「ひび」とはズレたところを押すと押しても痛くない!?と勘違いしがちです。
手首の打撲ではなく「ひび」を疑う要注意な症状は?
つまり、手首の「ひび」で注意すべきは軽症のために打撲や捻挫と勘違いしないようにするということです。
そのポイントを2つお伝えいたします。
骨の叩打痛
まず骨の叩打痛(こうだつう)です。
「ひび」でも骨が折れれば、振動に弱いです。「ひび」が疑わしい骨の一番痛い場所からちょっと離れた場所を叩いて振動が伝わったときに痛みが走れば、その骨に「ひび」が入っている可能性があります。
裏から押しても痛い 骨性圧痛
また、打撲であれば押して痛い場所、つまり圧痛部位は手首のどちらか側・・・つまり、手のひら側、手の甲側、親指側、小指側など一側面であることが多いですが、骨の「ひび」、つまり骨折の場合は、その骨を360度どこから押そうが痛いとうことが言えます。
これを骨性圧痛(こつせいあっつう)と呼んだりします。
このような手首のヒビだけであっても治療が遅れると、
痛みや腫れがいつまでも残ることがあるわけですが、
それどころか、骨折じゃないと思って、手首を使っていたら、
だんだんとヒビ程度だったのが、ずれてきてしまって、手術が必要になってしまう・・・
なんてことすらあり得るわけです。
ここからは手術を入院して受けるという場合の流れについて、さらっと解説しておきます。
そもそも手首の骨折で手術をした場合は、
入院が必要なのか?日帰りはできないのか?
ということから、
入院するとすれば、
いつ入院して、手術後は
どういった生活をして、
いつ頃退院になるのか?
そういった入院期間のイメージが
できるように心がけました。
もちろん、病院や主治医によって、
方針は様々ありますので、
あくまで、僕の経験からある程度推測した
一般論でしかありませんが、大きく外れないだろうと思います。
手首の骨折で手術をする場合は入院は必須?
まず、手首を骨折して手術が必要となったときに、
入院をしなくてはいけないか?
ということが気になりますよね。
結論としては、ほとんどのケースでは、
入院がオススメではあります。
そのため、逆に
日帰り入院が可能なケースについて、
考えてみましょう。
手首の骨折で日帰り入院が可能なケース
日帰り入院ということは、
前提条件として、
全身麻酔はかけないということになります。
とすると、手術の痛みを抑えるために、
局所麻酔や神経ブロック麻酔といったものをやります。
これは何を意味するかと言うと、
- ガッツリ寝て、起きたら手術終了!とはいかない
- 麻酔の効き具合によっては多少の痛みや違和感は我慢する必要あり
ということになります。
つまり、手術中に骨にドリルで穴を空ける
ウィーンっていう音や、
スタッフ、執刀医の話し声なども聞こえますし、
多くは痛みはほとんどなく手術を遂行できますが、
神経ブロックなどの効き具合によっては
多少の痛みは我慢することもあります。
さらに、ポイントは、
神経ブロックや局所麻酔はタイムリミットがある
ということです。
手術に時間が予想以上にかかったときに、
途中から麻酔が切れて痛くなる
ということです。
ある程度、追加で麻酔もできますが、
麻酔の薬も投与できる量の限界がありますから、
手術に時間がかかる可能性があるような骨折は、
この日帰り手術は最初から選択肢に入りません。
ただ、ある程度、短時間でできる手術で、
かつ、
ガッツリ寝なくてもいい、
多少の痛みは我慢する覚悟がある
という場合に、
日帰り手術も選択肢に入ります。
そうはいっても、
麻酔の効きを気にしながら、
時間を気にしながら手術をして、
術後もしっかり拝見できない日帰り手術より、
しっかり入院して手術を受けてもらう方が、
安心であることは確かですね。
手首の骨折の入院期間の典型的スケジュール
それでは入院生活の典型的なスケジュールについて
解説していきます。
ほとんどは短期間の入院になります。
手術の前の日の午前に入院
多くの病院では、
特に既往症(もともとお持ちの病気など)がなければ、
手術の前の日に入院となります。
その日にやることは、
入院生活のオリエンテーションとして、
病棟の事務や看護師から説明があったり、
主治医から手術に関する説明があったり
(外来で終わっている場合もあります)
麻酔科医師から麻酔の説明があったりします。
また、多くの場合は、
夜9時頃から食事や飲水ができなくなります。
これは、全身麻酔において、
お腹の中が空でないと、
嘔吐してしまう危険があるからなんですね。
ただ、最近は、
水分だけは許可するケースも多くなっています。
手術当日はベッド上で食事なし 耐えましょう
手術当日は、
全身麻酔の場合は
手術前に麻酔がかかって寝てしまい、
起きると終わっています。
その後、病室に戻りますが、
手術後は心電図がついていたり、
頻回に血圧を測ったりと、
少し慌ただしくなりますが、
基本的には患者さん本人は
特にやることはありません。
それどころか、食事すら摂れません。
飲水も基本ナシです。
それは麻酔の影響で、
飲み込みがうまくいかなくて、
むせてしまうことや
吐いてしまうことを防ぐためです。
ただ、全身麻酔の後ですから、
吐き気があったり、
頭がぼーっとしたり、
同じ姿勢をしていたために肩周りや腰が痛かったり、
また、神経ブロックなどの麻酔を追加していれば、
指が動かなかったり、しびれていたり
などがあります。
そういった、通常と異なる状態にはなりますが、
それを冷静に看護師や医師に伝えてください。
経過を見るだけでいいことも多いですが、
薬を使うこともあります。
また、大切なことは、
手首の骨折の手術の後は、
骨折したときと同じか、
それ以上に出血や腫れやすい状態です。
そのため、手首をしっかりと心臓より
高い状態に挙上しておく。
これが非常に重要です。
点滴台に手を吊ったり、
枕で手を上に上げておいたり
などをやりますが、
非常に重要なことなので、
こっそり下ろしたりなどはしないでください。
手術翌日からできるだけ通常の生活に
手術翌日からは、
食事も再開していきますし、
基本、歩行もできます。
ただし、術後数日は、
手首を心臓より高く保つ
ということは徹底していきましょう。
また、指については動かせる状態と思いますが、
痛みが多少あれど、
指はどんどん動かすことが大切です。
手術後、2日から1週間くらいの短期間で退院
退院の目安は
自宅で生活できればOKということになります。
ということは、
翌日から歩けますから、
短期間入院を希望される人は、
翌日に退院される人もいます。
ただ、全身麻酔の翌日というのは、
どうしても本調子じゃないことが多いですから、
僕は翌日は様子見て、
その次の日に帰りましょうとオススメしています。
もしくは自宅に帰ってしまうと、
どうしても患部に負担をかけてしまうとか、
挙上を徹底できないとか、
そういった理由で
1週間くらい入院してもらうこともあります。
手首の骨折では圧倒的に多い「橈骨遠位端骨折」をイメージした内容でしたが、
次にスポーツ選手、特に野球選手のバッターに多い、
有鉤骨骨折の治療法について、
手術はした方がいいのか?
どういう手術法があるのか?
保存療法はどうなのか?
治療期間は?
といったことについて、専門医の視点から
できるだけわかりやすく解説したいと思います。
有鉤骨骨折の治療は?
この有鉤骨が折れてしまう、
特に有鉤骨鉤が折れてしまうことが多いわけですが、
この治療法には、
シーネやギプスなどによる固定をする方法
手術をする方法があり、
手術にも主に2種類あります。
それは骨をくっつけるためにネジを入れる方法と、
折れてしまった有鉤骨鉤を取り除いてしまう(摘出)方法です。
それぞれについて解説いたします。
有鉤骨骨折の治療法:ギプスなど保存療法
有鉤骨骨折に限らず、
骨折部のズレが小さければ、
一般的には骨折部が動かないように固定すれば
基本的には骨は自然とくっつきます。
そのため、手術せずに治せるなら、
それを第一優先に考えます。
有鉤骨骨折の場合は、
手関節と指の根本のMP関節を
しっかりと固定する必要があります。
保存療法のデメリット:治療期間が長い
ただ、スポーツに多いということと、
指を曲げる腱がある手根管の壁であり、
かつ、小指球筋の付着部である
という特徴から、
この保存加療はデメリットもあります。
まず、筋肉に引っ張られたり、
手根管内の腱の滑走により
(指の第1,第2関節は拘縮予防のため固定しません)
骨折部が完全には固定できないので、
骨がくっつくまでの時間が長くなります。
時に2ヶ月以上必要になることがあります。
その間、手首と指のMP関節を固定していますので、
どうしても関節はカタくなりますし、
スポーツ復帰はさらに遅れます。
3ヶ月以上かかることもあります。
そういった意味で、
保存療法ではなく手術を選ぶ
というケースは比較的多いです。
保存療法が特に望ましいケース
それでも早期に固定を外して、
スポーツ復帰が可能になるケースもあります。
その代表例が、
有鉤骨鉤の先端だけの骨折の場合です。
この場合は骨のくっつきが早く、
1ヶ月程度で固定を外して、
少しずつ動かしていけることもあるので、
ケースバイケースで主治医と相談していただければと思います。
有鉤骨骨折の治療法:手術療法
手術法:骨折部をネジで固定する
まずは骨接合術と呼ばれる手術です。
有鉤骨というのは小さい骨ですので、
小さいネジを1本、
骨折部をまたいで固定するということになります。
これによって、
ギプスなどの固定よりはしっかり強い固定ができますが、
やはり骨がくっつくまで時間がかかるので、
負荷がかかるスポーツ復帰については
ギプスほどではないにしろ、時間がかかります。
手術法:有鉤骨鉤を取り除いてしまう
この有鉤骨鉤を摘出する方法が、
一番早いです。
ある意味当然ですね。
骨がくっつくのを待つ必要がないわけですから。
それでも、取っちゃって大丈夫なのか?
ということが心配ですよね。
骨折治療の原則として、
元の形に戻せるのであればそれを目指す。
ただし、最優先するのは、
骨の形ではなく、その骨の関わる「機能」である。
ということがあります。
つまりは、
骨を元通りにするというのも大事ですが、
それ以上に、
スポーツに復帰して、
いいパフォーマンスを発揮するための手首にする
ということが大切というわけです。
そういう観点から、
この有鉤骨骨折については、
有鉤骨鉤を摘出するという方法が、
時にベストな方法と判断され、選択されています。
実際、術後3-4週間でスポーツ復帰し、
その後、特に後遺症を残さない
という選手が多いのがこの治療です。
もちろん、元の形でないこと、
筋肉や靱帯の付着部であることから、
筋力低下や、
腱の走行異常による痛み、
などのリスクは理屈の上ではありますが、
むしろ、
保存療法や骨接合術で
骨がズレてくっついたり、
偽関節と言ってくっつかなかった結果、
小指を曲げる腱が断裂してしまう
痛みが残ってしまう
という報告が時にあるくらいですから、
主治医と相談の上、
有鉤骨鉤を摘出するという選択肢も
十分考慮に入れていいと考えています。
まとめ
今回は、手首の骨折後の痛みと腫れということで、
それぞれの原因と対策についてお話し、
さらに、手首の骨折とひびのお話や、手術になってしまった場合の入院期間のお話、
また、特殊な骨折の例として有鉤骨骨折についても解説いたしました。
少しでも参考になりましたら幸いです。