剥離骨折の症状と全治までの治療期間は?専門医がシミュレーション

  1. 骨折の症状と治療
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今回は剥離骨折をしてしまった場合の、
全治まで治療期間はどのくらいでどんな治療をするのか?

 

もう少し詳しく言うと、

剥離骨折の中でも
手術を必要としないケースの治療について、

どういった視点で医師は治療をして、
どのくらいの期間で治療完了するのか?

ということを解説いたします。

 

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

 

今回の剥離骨折とは英語ではavulsion fractureのことを指します。
ただ、元来、avulsion fractureは裂離骨折(れつりこっせつ)
と言う言葉が正しいとされ、
剥離骨折という言葉は間違って使われている。

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と言葉の使い方に厳しい先生が指摘されるケースは
よく見てきました。

現段階では日本整形外科学会は
どちらの用語も認めておられます。

用語集の解説を引用いたします。

【avulsion fracture】
この語は第 5 版増補までは「裂離骨折」としていたが,第 6 版では「裂離
骨折,剥離骨折」と 2 通りの言い方を認めた.元来 avulsion fracture は骨折
機序に重きを置いた用語で,筋腱付着部の骨が引っ張られることによる骨折を
意味する.本用語集では従来からこれを「裂離」と呼び,母床から離れている
かどうかに重きを置いた「剥離」とは区別してきた.また手術操作としての
「剥離」と同じ日本語になることを回避する意味もあった.しかし現実には
avulsion fracture を「剥離骨折」と言う習慣が根強くあり,審議の結果,2 つ
を併記することにした.この判断については,会員から賛否両論が寄せられた
が,第 8 版では変更せず,継続課題とした.
整形外科学用語集 第8版 日本整形外科学会編

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剥離骨折とは?その定義は?

さきほど引用した文にもカンタンに定義がありますね。

筋腱付着部の骨が引っ張られることによる骨折を
意味する.

とありますよね。

これですね。

 

筋肉と骨の関係を整理しておきますと、
筋肉の多くはという、
より筋張ったものに変わって、骨にくっつきます。

そして、筋肉が収縮することによって、
つまり縮むことによって、
その両端にくっついている骨が近づくように
動く。

これが筋肉が、骨を、関節で動かす仕組みです。

つまり、筋肉が縮むたびに、
筋肉が骨にくっついている部分は
引っ張られるわけですね。

この力が急激に加わった場合に、
筋肉が骨にくっついている部分が
剥がれるように折れます。

そのため、剥離骨折と呼ばれるわけですね。

 

 

ただ、一般的な使われ方としては、
もう少し、広い意味で使われていて、

筋腱付着部以外に、

靱帯付着部も引っ張られて折れてしまうことが多く、
それも剥離骨折と呼ぶことが多いと思います。

靱帯も骨と骨をつなぐものですが、
筋肉のように自分で縮むことはできません。

その代わり、捻挫や脱臼しそうになったときに、
骨と骨があらぬ位置にいってしまわぬように、
ピンと張って耐えてくれるスジです。

これが捻挫や脱臼では
耐えきれずに切れてしまうことが多いわけですが、
靱帯が切れずに
骨ごと剥がれてしまうこともあるわけですね。

そのため、ここでは、

軟部組織の付着部に引っ張られて
剥がれるように折れてしまった骨折

これを剥離骨折

とします。

剥離骨折の特徴:小さい骨片で見逃しやすい

剥離骨折の定義から、
その特徴を考えてみましょう。

骨がくっついているところが
剥がれるように折れるわけですから、

そのくっついているところだけ
剥がれるわけです。

剥がれた骨は必然的に
小さいものになります。

ですから、靱帯損傷や
肉離れと間違いやすいというのが
注意点です。

実際、肉離れや靱帯損傷と
同じようなメカニズム、原因で
起こる骨折ですから、
当然と言えば当然ですね。

剥離骨折の症状

剥離骨折の症状は、
間違えやすいと言ったように、

捻挫、靱帯損傷、
肉離れなどと似たような症状になります。

つまり、
関節を捻ってしまったり、
急に筋肉に負担がかかった瞬間(踏ん張るなど)、

そういったときに痛めてしまう。

捻挫や肉離れとの違い

では、捻挫や肉離れとの違いは
どこで判別できるのでしょうか?

一番はレントゲンです。
言うまでもないことですね。

ということで、
疑ったら、病院を受診しましょう。
これが結局一番大事ですね。

ただ、もう一つは、

痛みの部位です。

筋肉や靱帯の真ん中あたりで切れてしまうような
肉離れ、靱帯損傷では、
痛い場所は筋肉や靱帯が切れている
柔らかい部分のはずです。

それに対して、剥離骨折は
骨が折れているわけですから、
骨に痛みがあります。

そこは1つの判別ポイントですね。

ただ、靱帯損傷でも、
筋肉の付着部損傷でも、
骨に近いところで切れるような形だと
同じように骨が痛くなります。

そのため、あくまで、
「疑う」ためのポイントと言えます。

 

剥離骨折はちょっと剥がれただけだから軽症?

最近よく患者さんから聞かれるのは、

「これは剥離骨折ですか?」

という言葉です。

 

「そうですね、俗に言う剥離骨折です。」

と答えると、ホッとしたような表情をされる人が多いです。

 

ただ、骨折は骨折ですから、

剥離骨折だから軽症とは言い切れません。

 

むしろ、剥離骨折は筋肉や靭帯の付着部である
という性質上、
ズレていきやすいというのはむしろ厄介な性質です。

ですから、剥離骨折の骨片がある程度の大きさがあった場合には
手術することも視野にいれないといけないこともあります。

剥離骨折とひとまとめに考えては危険!

剥離骨折は軽症というものと同じように、
剥離骨折に対して、1つのイメージで固めてしまうのは危険です。

剥離骨折は単に骨折の1つの特徴を表しているだけで、

どこの筋肉、どこの靭帯の剥離骨折なのか?

どれくらいズレているのか?

剥がれた骨片はどのくらいの大きさなのか?

というようなことで、治療法も全然違ってきますので、
注意が必要です。

剥離骨折と診断された日:関節を固定

まずレントゲンで、
剥離骨折という診断を言われますね。

これは「裂離骨折」だったり、
「骨が剥がれています」だったり、
医師によって言い方は異なるかもしれません。

そこで、全治に向け、
基本はこの剥離骨折を
くっつけようと考えます。

当たり前ですね。

そこで、骨がくっつくために必要なのは、
折れた骨同士が可能な限り接触、
もしくは近くにいて、
その状態をキープする=動かないこと

になります。

それを達成するには関節を固定することになりますので、

部位にもよりますが、
シーネやギプスによる固定が行われます。

girl with a broken arm

そこは通常の骨折と同じです。

全治まで一般的には診断されてから4-6週間程度

その後は、骨折部位がズレないか、
レントゲンを1-2週間に1回、撮像しながら、

だいたい4-6週間で骨がある程度、くっついたら
固定を外す。

というのが通常の骨折と同じで
一般治療です。

通常の骨折と剥離骨折の治療と治療期間の考え方

ここまで一般論で言えば、
剥離骨折も骨折ですから、

骨がくっつくまでの期間や治療方法に
違いがないような感じですよね。

剥離骨折は肉離れ靱帯損傷
メカニズムは似ているので

少し通常の骨折とは考え方が異なります。

 

さきに、結論を言えば、

通常の骨折よりは
治療自体もゆるめで
治療期間(固定期間)は短い
という傾向があります。

どうしてそうなるかと言えば、

剥離骨折の骨片は主に、
筋肉や靱帯の付着部としての機能が求められる

ということがポイントです。

この付着部としての機能のためには、

多少のズレがあっても、
骨が安定してくれていればOK

もっと言うと、骨がくっつかなくても、
その周りの筋肉や靱帯が修復されて、
しっかりと機能してくれればOK

という考え方があるということです。

 

 

そのため、
捻挫や肉離れなどのように

テーピングだけで経過を見たり、

骨が完全にくっつくよりも前に、
3週間くらいで固定を外したり、

骨が万が一くっつかなくても、
手術をしなくても大丈夫・・・かもしれない。

 

すべてケースバイケースで、
あくまでも一般論ですが、

剥離骨折の治療においては
そういった考え方が
あるということは
ご理解いただいておくといいかもしれません。

リハビリまで含めて全治と言う

このように通常の骨折とは、
多少考え方が違うこともある剥離骨折の全治には、

特にリハビリテーションが重要と言えます。

 

いかに骨折部周囲の関節がカタくならず、
筋力が落ちないようにするか

これが骨折のリハビリテーションの基本です。

 

ある程度骨がくっついてきた段階から、
このリハビリを意識して、

関節を動かしたり、
剥離骨折部が離れない程度に
筋肉を使ったりということが必要になります。

このリハビリを含めた全治期間は

軽症で1ヶ月半、重症で3ヶ月以上かかる

 

それが目安と考えています。

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