すねの筋肉痛の原因別ストレッチ法 スポーツドクター解説

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すね、つまり下腿は筋肉痛がよく起こる好発部位と言われます。
スポーツドクター、整形外科医として日々、外来診療をしていても、
すねの筋肉痛で受診される人は多くないです。

しかし、すねの筋肉痛を抱えながら、スポーツを続けたり、
日常生活で無理をしたりしたときに、
別の問題・・・例えば、足首を捻挫してしまったり、アキレス腱損傷を起こしてしまったり・・・ということで診察に来られる人がいらっしゃいます。

つまり、放置して無理すると大きな怪我につながることがある
という意味でも、適切な対処ができるといいですね。

すねの筋肉は意外とたくさんあって、それぞれが
ちゃんと役割を持っていますが、

その役割の多くは「足首を動かす」という働きです。

そして、足首というのはご存じの通り、
かなりグルグルいろんな方向に動きますよね。

そして、ときに捻挫をしてしまいがちな不安定な関節でもあります。

そういう側面から歩くだけでも、
また、スポーツなどをすればなおさら、
すねの筋肉には負担がかかり、筋肉痛を起こしやすくなります。

そんな筋肉痛に対する一番基本的な対処法はストレッチです。
負担がかかって緊張状態にある筋肉は縮こまっています。
それを伸ばしてあげて、リラックスさせてあげることで
回復を促すということですね。

そのストレッチを行うためには、
どこの筋肉が筋肉痛を起こしているのかを知らないと
適切なストレッチができませんので、

部位と筋肉の解説も含めて、ストレッチをご紹介していきます。

すねの前外側の筋肉痛の原因とストレッチ

すねの前外側の筋肉の原因となる筋肉とその働き、
そして、ストレッチについて解説します。

すねの前外側の筋肉:前脛骨筋

すねの前外側、つまり前よりの外側にある筋肉は
前脛骨筋(ぜんけいこつきん)と言います。

すね 肉離れ

脛骨というのはまさに脛(すね)の骨で、
すね(=下腿)を構成する2本のうち、太いメインの骨です。

この脛骨の前方についているから前脛骨筋と言います。

前と言っても、真ん前は骨ですよね。
弁慶の泣き所なんて言ったりしますが、

骨のすぐ上に皮下脂肪があって、皮膚があってと、
骨から皮膚までの距離が短くて
ぶつけたら痛い場所です。

その真ん前の骨は内側まである程度幅広く触れるはずです。

ですが、逆に弁慶の泣き所から外側は
筋肉が触れると思います。

それが前脛骨筋です。

 

この前脛骨筋は具体的には脛骨というスネの骨から
足首の前を通って、足の甲の骨にくっつきます。

ゆえに、この筋肉が収縮すると
足の甲がスネの前方に近づきます。

つまり、足首が背屈(はいくつ)します。
つま先が上に上がる動きですね。

この筋肉が筋肉痛になると言うことは、
この筋肉に負担がかかったということになります。

筋肉痛になりやすい負担は
遠心性収縮と呼ばれる、
筋肉が伸ばされながらも収縮する(力が入る)状態です。

前脛骨筋の遠心性収縮でよく言われるのは、
サッカーのインステップキックという、
よくシュートなどで使われる、足の甲で蹴る蹴り方です。

この蹴り方だと、インパクトの瞬間は
足首は底屈(背屈の逆)していて、
前脛骨筋は伸ばされています。

この状態でボールを押し出すためには
前脛骨筋は強烈に収縮するので、
まさに遠心性収縮が起こります。

そういった遠心性収縮など
負荷が強かったり、繰り返されたりして
前脛骨筋に筋肉痛が起これば、

当然、その前脛骨筋があるスネの前外側に痛みが出ます。

特に筋肉を使う動き(足首背屈方向に力を入れる)と、
筋肉が伸ばされる動き(足首が底屈される)
痛みが出るのが典型的です。

前脛骨筋のストレッチ

この前脛骨筋の筋肉痛に対処するストレッチは
ここまでの解説で答えが出ていると思いますが、

足首を底屈(ていくつ)する、
つまり、つま先を下に引っ張る動きになります。

こちらの動画もご参照ください。

ローラーはボールなどを使ったマッサージも
前脛骨筋の血流を良くして、回復を促し、効果的です。

すねの真横・外側の筋肉痛の原因とストレッチ

次にすねの真横・外側の筋肉の原因となる筋肉とその働き、
そして、ストレッチについて解説します。

すねの真横・外側の筋肉:腓骨筋

さきほどの前脛骨筋のさらに外側にあるのが、
腓骨筋(ひこつきん)です。

すね 肉離れ

腓骨(ひこつ)、これがすね(下腿)の骨の
もう一本で、脛骨に比べてかなり細い骨です。

この骨の外側を走るのが腓骨筋で、
足首の外側を通って、足の甲にくっつきます。

この腓骨筋が収縮すると
足の甲が外側につり上がります。

小指側が上に上がるような動きです。

この腓骨筋が筋肉痛になることは
実際はあまり多くありません。

前脛骨筋や後に述べる、
下腿三頭筋のように

足首のつま先を上下に動かす
(背屈や底屈)
とは違い、腓骨筋が強烈に働くような
足首の動きを繰り返すことは多くないんですね。

また、サッカーの例えで申し訳ないですが、
アウトサイドキックばかり繰り返せば、

腓骨筋の遠心性収縮が起こりますので、
腓骨筋の筋肉痛になるかもしれません。

腓骨筋のストレッチ

この腓骨筋のストレッチは
足首の外側が下に向くような動き、

あまり表現は良くありませんが、
足首の捻挫が起こる典型的な動き、内がえしです。

すねの後側の筋肉痛の原因とストレッチ

次に、すねの後側の筋肉の原因となる筋肉とその働き、
そして、ストレッチについて解説します。

すねの後側の筋肉:下腿三頭筋

スネの後ろの筋肉が一番大きな太い筋肉です。
主に3つの大きな筋肉が走っているので、
下腿三頭筋(かたいさんとうきん)と呼ばれます。

 

しかし、その3つそれぞれにもちゃんと名前があって、

  • 腓腹筋内側頭(ひふくきんないそくとう)
  • 腓腹筋外側頭(ひふくきんがいそくとう)
  • ヒラメ筋

です。

内側頭と外側頭に分かれていますが、
前者二つは、筋肉としては同じ筋肉で
腓腹筋です。

この下腿三頭筋はアキレス腱となって、
かかとの骨にくっつきます。

ということは、かかとを上に引っ張って、
足首を底屈(ていくつ)する働きがあると言えます。

逆に言うとつま先が下に下がる、
つま先立ちの姿勢を作る
というような働きです。

 

また、腓腹筋とヒラメ筋では
上でくっつく場所が違います。

腓腹筋は膝をまたいで上までくっついていて、
ヒラメ筋は膝の下のスネの骨にくっついている(つまり、膝関節はまたいでいない)という違いが大きいです。

これは腓腹筋は足首と膝の二つの関節をまたぐ
二関節筋という特殊な筋肉であるということを表しています。

二つの関節をまたぐために
腓腹筋はより負担がかかりやすいという性質があり、

すねの後側の筋肉痛がある場合は
腓腹筋の可能性の方が高いと言えるでしょう。

つま先立ちを作る働きがある、
ということは、歩いたり、走ったりするときに
地面をつま先で蹴る動きですから、

歩いたり、走ったりするだけで
かなりの負担がかかります。

 

肉離れの好発部位ですから、
本当にただの筋肉痛なのか、
実は肉離れなのか?

という注意が必要です。

その見分け方の一つは、
ストレッチをしてみるということです。

肉離れでは痛みが強くて、
フルにストレッチはできないことが多いです。

筋肉痛では痛みはあれど、
むしろ、イタ気持ちいい感じが多いと思います。

下腿三頭筋のストレッチ

この下腿三頭筋のストレッチの動きは
当然ですが、足首の背屈になります。

つま先を上に向けるという
つま先立ちの逆の動きですね。

https://youtu.be/EEIahHbgIsU

すねの内側の筋肉痛の原因とストレッチ

さて、最後は、
すねの内側の筋肉の原因となる筋肉とその働き、
そして、ストレッチについて解説します。

スネの内側が痛い時は筋肉痛以外も注意

前半の前脛骨筋のパートでもお話ししましたが、

スネの内側は弁慶の泣き所という
骨の上に筋肉がない部分ですから、

内側が痛いというときは
筋肉痛じゃない可能性があります。

痛い場所をよく触ってみましょう。

カタい骨が触れるようなら、
単なる筋肉痛じゃなくて、

例えば、筋肉の付着部や骨膜(こつまく)が
炎症を起こしているシンスプリント
というランナーに多い怪我だったり、

疲労骨折のサインだったりする可能性があります。

ぜひ、整形外科を受診してください。

スネの内側の筋肉:後脛骨筋

とは言え、内側後よりには
後脛骨筋(こうけいこつきん)という筋肉が走っています。

これはスネの後、内側深いところを走り、
足首の内側を通って、足の甲にくっつきます。

この筋肉が働くと、
足の内側が上に上がります。

ちょうど腓骨筋の逆のような動きですね。

後脛骨筋のマッサージ

この後脛骨筋の筋肉痛は
腓骨筋同様、多くはないんですが、

扁平足やシンスプリントとも関連が深い
重要な筋肉なので
マッサージで刺激しておく習慣をつけるのはオススメです。

エクササイズで鍛えておく
というのもオススメです。
よく使うのはチューブですね。

筋肉痛の治療まとめ

ここまで部位毎に治療的な説明も加えてまいりましたが、
そもそも筋肉痛に対してどういう治療があるのか?

ということについて解説します。

 

まず第一に言えるのは、一般的な筋肉痛は放置しても治るものである
ということです。

しかし、筋肉痛になるということは、
筋肉のコンディション、強さ、柔軟性など、
なにかしら準備不足だったり、負担が強すぎたことを表すので、
今後のためにも、できることなら単なる放置以上のことはやっておいた方がいいです。

筋肉痛治療のストレッチの意味

筋肉の柔軟性が低い場合は、
動きの中で筋肉が伸びたり縮んだりするときの負担が、
それだけで高いことを表します。

例えば、筋肉の柔軟性が十分で、安静にした時から+20cmまで余裕で伸びる筋肉が
動きの中で10cmくらい伸ばされたとしても、まだまだ余裕があるわけで負担も強くないです。

しかし、柔軟性が不足していて、+10cmしか伸びないとしたら、
同じ10cmくらい伸ばされる動きでも、もう限界なわけで、筋肉が悲鳴を上げます。

 

ですから、筋肉痛が起こったということは、
柔軟性が低下しているサインかもしれませんから、

まずはストレッチをしていくということの意味は大きいです。

筋肉痛治療のマッサージの意味

筋肉痛治療の時に、よく自分でも揉んだりすると思うのですが、
これは良いのか、悪いのか?

という疑問があると思います。

マッサージ、揉むということの意味は、
筋肉に刺激を加えることになります

その結果、血流、血の巡りが良くなるので、
筋肉痛からの回復は早まる可能性があります。

ですから、前半でもボールやローラーを使ったマッサージの動画もご紹介しています。

 

ただ、痛みが強いマッサージは、
反応的に筋肉が緊張して、逆にカタまって逆効果なので注意してください。

筋肉痛治療のテーピングの意味

筋肉痛治療においてテーピングというものも選択肢に入ります。

テーピングには主に2種類あって、
関節の動きを制限する、固定に近いテーピングと、
筋肉の動きをサポートする伸縮性テープによるテーピングです。

筋肉痛においては当然、後者がオススメです。

今回の記事を参考に、どの筋肉が筋肉痛を起こしているかを判断していただき、
その筋肉に沿って伸縮性テープを貼ると、
その筋肉が無理しないで済むという効果が得られて、

痛みが引いたり、回復が早まったりということが期待できます。

筋肉痛治療の湿布、塗り薬の意味

よく病院で出される、湿布や塗り薬はどうか?

ということですが、

これは湿布であろうが、塗り薬であろうが、
消炎鎮痛剤ですので、

炎症を抑えて、痛みが抑えられるという効果になります。

回復が早まるかどうかは議論が分かれますが、
軽めの痛み止めとして使う分には効果的でしょう。

筋肉痛治療のジョグ(アクティブレスト)の意味

筋肉痛があるときに、逆に軽い運動をすることも
実は推奨されています。

筋肉の血流を良くしながら、回復を早める効果を期待して行うもので、
多くはジョグだったり、ちょっとしたレクリエーション的な運動だったりします。

まとめ

今回はスネの筋肉痛について、
それぞれ前、横、外側、内側、後にある筋肉を
解説しながら、ストレッチやマッサージをご紹介しました。

筋肉痛はたいてい放置しても改善するので、

あまり、深刻に考える人は多くないかもしれません。

 

しかし、この記事をお読みいただいているということは、
より目指すところがあって、放置したくないと思っておられると考えて、
対処法をご紹介してきました。

これを機会に筋肉に対する学びを深めていただき、
よりいいコンディションで運動や日々の活動をしていただく
きっかけにしていただけたら嬉しく思います。

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