リリカという薬は整形外科でしびれや神経痛などに対して処方されるもので、
近年、処方量は増えています。
もともと、整形外科領域では「しびれ」や「神経が原因の痛み」(神経障害性疼痛)
に対する治療薬はかなり限られていました。
それも、なかなか効果がはっきりしない。
しかし、リリカが発売になってからは、
そんな限られた薬しかない中で悩んでいた患者さんの症状が
かなり改善するということがありました。
その一方でリリカを飲み始めて、
さまざまな副作用のせいで、やめてしまう患者さんも結構多いです。
そんな副作用の中で気になる人はかなり気になるのが
「太る」つまり体重増加という副作用です。
この太るという副作用から入って、
リリカはやめるべきか、続けるべきか、
そもそもどうして効果があるのか?
などなど、リリカについてまとめていきたいと思います。
リリカで太るという副作用の確率
google scholar で検索するとヒットするんですが、
この多施設でデータを集めた論文で、
太る、体重増加という副作用の発生頻度も示されています。
リリカは1日150mgという量が一般的な投与量なんですが、
効き具合が足りなければ300mgに増やすことがあります。
そこで、
150mgの場合は1.1%の人にしか起こらなかった体重増加が、
300mgだったら16.9%と、一気に頻度が上がります。
意外と高頻度ですね。
リリカで太ったとしたらやめるべき!?
リリカで太ってしまったら、
飲むのをやめないといけないのか?
という疑問があると思います。
薬の添付文書にはこう記載されています。
本剤の投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。特に、投与量の増加、あるいは長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。
これはつまり、太ったらやめなさい
ではなく、太ったら食事や運動で対処しましょう。
というのが製薬会社が推奨し、厚生労働省も認めた対処だということです。
リリカを飲み続ければ太り続けるのか?
リリカのせいで太ってしまっているとしたら、
このまま飲み続ければ太り続けてしまうのではないか?
という不安があるかもしれません。
しかし、僕が調べた限りでは、もしくは、リリカを多くの人に処方した経験から、
際限なく太り続けた患者さんは聞いたことがありません。
それはホメオスタシスという人間誰もが持つ機能が関係していると考えています。
人は自分の脳が描くセルフイメージ(自分はこういう人間だ)
を維持するように自然と行動が向かいます。
ですから、太った場合は、
リリカをやめたくなるかもしれませんが、
リリカを続けても、食事量を調整したり、質を調整したり、運動をしたり、
という対処を自然とすることで、
際限なく太り続けるということは、なかなか考えにくい
ということになります。
リリカの離脱症状に注意
リリカで太ったからといって、やめなくてもいい
というお話をしましたが、
同時にリリカは基本的には対症療法と言って、
症状を和らげるタイプの薬であって、
根本的に何かを治す薬ではないので、
やめたいという希望がある患者さんに対して、
絶対に続けなさいと言うこともありません。
(というより、あらゆる治療において、命に関わらない限り、
僕が患者さんに強制することはありません)
ただし、自己判断でリリカを一気にやめてしまう
というのは避けるべきです。
なぜならリリカには離脱症状という
急にやめた場合の副作用もあるからです。
添付文書には、
本剤の急激な投与中止により、不眠、悪心、頭痛、下痢、不安及び多汗症等の症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、少なくとも1週間以上かけて徐々に減量すること。
という離脱症状の記載があります。
眠れない、吐き気がする、頭が痛い、お腹を下す、不安が強まる、汗が過剰に出る・・・
言い換えただけですが、なかなか困る症状が多いですよね。
リリカには25mg,75mg,150mgと3種類ありますから、
意外と細かく減量していくことができますので、
やめたいときは主治医と相談しましょう。
太る以外のリリカの副作用は?
太る以外のリリカの副作用についても、まとめておきます。
僕ら整形外科医がリリカを処方するときに気をつけて、説明するのは、
「ふらつき」です。
特に高齢者の方の「ふらつき」は即、転倒につながり、
骨折してしまったりすることがあるので、注意したい副作用です。
それに類似した副作用として、
めまい、眠気、意識消失なんてものも報告があります。
これらの副作用が出てしまったときに、
もし運転中とか、危険な作業中だったとしたら、大惨事になりかねないので、
リリカを飲むときは運転や危険な作業、集中力を要する作業は
避けるような注意が必要です。
その他、可能性が低いものや、リリカと関係があるか不明のものまで列挙していくと、
心不全、横紋筋融解症、腎不全、血管浮腫、低血糖、間質性肺炎、ショック、皮膚粘膜眼症候群、
劇症肝炎・・・
ここら辺までは重症な副作用です。
重症なんですが、これらを全て気にしながら飲んでください。というわけではないです。
さらにもっともっと副作用は添付文書に列挙されていますが、
僕ら医師でも全て把握している人はいません。
ですから、
特に注意するべき頻度が高く、危ない
ふらつき、めまい、眠気などを注意しつつ、
その他もリリカを飲み始めたり、増やしたタイミングで、
出現した体調の変化などがあれば主治医に相談するというのが基本になるわけですね。
そして、僕ら医師も添付文書を時には確認しながら、
念のため減らしたり、中止したりするかどうかを考えていくことになります。
リリカがどのように効果を表すのか?
最後にそもそもリリカがどのように効果を表すのか?
という基本的なことをおさらいしておきます。
ちなみにリリカは商品の名前で、
薬の名前(一般名)はプレガバリンと言います。
このプレガバリンは適応としては
- 神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)
- 線維筋痛症(せんいきんつうしょう)に伴う疼痛
という2つが挙げられています。
シンプルに言うと、
神経が関わっている痛みとしびれに対して使うのがリリカだと言えます。
その効くメカニズムは
過剰に興奮した神経から放出される「痛み信号」を抑制するということになります。
ここでもホメオスタシスを知っていると理解が深まります。
ホメオスタシスの最も根本は生命維持です。
その生命維持に関わりかねない異常は排除したいので、
過剰反応してでも排除させる行動を促します。
その過剰反応が「強い痛み」だったりするわけです。
でも、いくら過剰反応して「強い痛み」を発しても、
自分では如何ともしがたい原因だってあるわけです。
例えば、腰椎椎間板ヘルニアによる神経障害性疼痛だとしたら、
自分でヘルニアを引っ込めることはできません。
その状態で 「リリカなんて対症療法だから飲まない! 我慢する!」
ということで痛みを感じ続けていると、
逆にその痛みがある状態にセルフイメージが固定されて、
ホメオスタシスはその痛みがある状態を維持しようとします。
これを「脳が痛みを覚える」と表現するわけです。
そういう意味では神経障害性疼痛を抑えるために
リリカなどの薬を飲んだり、神経ブロック注射をするなどは、
単なる一時しのぎ以上の意味はあると考えています。
まとめ
今回はリリカの太るという副作用から
副作用、効果が出るメカニズムまで 整形外科医の視点から、
できるだけわかりやすくお伝えしたつもりです。
参考になりましたら幸いです。
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