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【医師解説】開放粉砕骨折の3つのポイント 複雑骨折とは違う? -タイガー・ウッズ選手のニュースから-

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この記事を書いた人
歌島 大輔ADMINISTRATOR
景翠会 金沢病院
整形外科専門医 / 認定スポーツドクター / CSCS(米公認トレーナー) / 苫米地式コーチ 補
肩 / スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療 / 手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

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20201年2月23日から24日にかけて、ゴルフのタイガー・ウッズ選手が交通事故で脚を負傷し、手術中という報道が流れました。即手術になっている時点で、そういうことかなと思っていましたが、続報で「開放性粉砕骨折」という診断名が流れました。今回はこの開放性粉砕骨折について解説します。この解説を聞いていただくと我々、整形外科医が何を考えて骨折を治療しているかがかなり深く理解できると思います。

ではさっそくいきましょう!

開放性粉砕骨折の3つのポイント

1.開放性粉砕骨折≒ダブル複雑骨折の意味

 

開放性粉砕骨折という名前ですが、聞き慣れない方が多いかもしれません。

しかし、複雑骨折という言葉はいかがでしょうか。僕も医師になる前から複雑骨折という言葉は知っていた気がします。この複雑骨折。実は一般的に知られている意味と、本来の医学的な意味が全然違ったりします。僕が医師になる前に持っていたイメージもそうでしたが、もしかしたら、今も尚、多くの方が抱く複雑骨折のイメージは骨がバラバラになっている骨折ではないでしょうか。ポキッと骨が2つに割れてしまうのを単純骨折としたら、バラバラになっているのを複雑骨折というイメージですね。実はコレって粉砕骨折という名前が正式で、複雑骨折は医学的で違う意味なんです。

それが複雑骨折=開放骨折ということなんです。では、開放骨折とは何なのか?と言うと、骨折部分が外の世界に開放されてしまった骨折という意味です。その反対は閉鎖骨折です。あえてそういう表現はしませんが、ほとんどの骨折はこの閉鎖骨折で、骨折部は皮膚や皮下組織、筋肉などに包まれて、外の世界とは繋がってないわけです。しかし、開放骨折はわかりやすい例では骨折した骨が皮膚から飛び出してしまうように、外の世界と骨折部が交通してしまった状態です。ただ、タイガー・ウッズ選手の骨折が骨が飛び出していたかどうかは別です。というのも、定義としては外の世界と骨折部が交通した状態ですから、飛び出さずとも皮膚に傷があって、その傷が骨折部まで繋がっていれば開放骨折です。この開放骨折を複雑骨折と医学的には言うんですね。

ですから、開放性複雑骨折というのは、世間一般で言う複雑骨折である粉砕骨折と、医学的に正しい複雑骨折である開放骨折が同時に起こってしまったという意味でダブル複雑骨折と言いました。実際にはダブル複雑骨折なんて言葉はなく、解説のための造語ですから、ご理解いただけば、名前は忘れていただいてい大丈夫です。

では次のポイントです。

2.最重症の骨折と言われる意味

この開放性粉砕骨折は整形外科医にとっても強烈な緊張感を感じさせる最重症の骨折です。骨が皮膚から飛び出して、バラバラになっていれば、最重症というのは一見して納得できるかもしれません。

ただ、その意味は見た目以上に重症ということです。なぜなら、骨折が治りにくいということだけではないんですね。もちろん、粉砕骨折ですから、それだけで骨折をキレイに元通りというのは厳しいです。

しかし、開放骨折の場合は2つの厳しい要素が加わります。それは骨折部が外の世界と交通しているってことは、つまり、骨折部と外の世界を本来は隔てている、筋肉、筋膜、皮下脂肪、皮膚、すべてがダメージを受けているということです。これを軟部組織損傷と言います。それどころか、神経や血管も損傷していると、より自体は深刻です。骨折が治るには骨がもとの形で固定されることと、周りの軟部組織からの血流、血の巡りが大事とされています。しかし、軟部組織にもダメージがあるので骨折の治癒も厳しいわけですし、もちろん、筋肉の損傷などがあるわけですから、筋力の回復や関節の可動域の回復も厳しくなります。

さらにもう一つ、外の世界と交通しているということは、骨折部に細菌が侵入してしまったことを表します。ということは、骨折部分を含めて膿んでしまう、化膿してしまう、細菌感染を起こしてしまうリスクが高いんですね。その感染に対抗する骨折部周り、傷周りの免疫力も軟部組織損傷によって落ちてしまっているので、化膿するリスクは普通の傷の比ではないんです。どんだけ悪条件が重なっているんだっていうくらいに厳しいのが開放性粉砕骨折ということになります。

では、最後

3.治療はすべてを一気に完璧に治そうとしない

ここまで、どれだけ開放性粉砕骨折が大変な骨折かと説明しましたが、当然、我々整形外科医はその大変さに絶望している場合ではないので、治療に全力を尽くすわけです。そのポイントは1度ですべてを一気に治そうとしないっていうことです。

「大変な骨折だから、準備を万端にキレイに骨を繋げるインプラントを揃えて手術をしよう!」なんてことをしていたら、外の世界から侵入した細菌がどんどん中で繁殖してしまします。ですから、緊急手術が必要なんです。タイガー・ウッズ選手の最初のニュースですでに手術中という報道があった時点で、「ああ、開放骨折なんだろうな」と想像したのは、そういう理由です。できるだけ早く手術をして、まず最終戦は骨折部を大量のキレイな水で洗い流すことです。その上で、できるだけでいいので骨折部をもとの形に近づけて固定します。ここでバラバラな骨折をパズルを合わせるように時間をかけて元に戻そうとすれば、手術は長時間になります。そんなことをしれいれば、ダメージを食らった周りの筋肉や血管などは持ちません。さらに、その骨折を固定する金属インプラントは当たり前ですが免疫力はゼロ、つまり、化膿しやすい最たるものなので、最初の緊急手術でそういうインプラントを入れて骨折を固定することは化膿するリスクを高めてしまうことになります。そこで創外固定という、傷の外の正常の皮膚からインプラントを挿入して骨折部を固定する方法を取ることがあります。そうなると皮膚の外にインプラントがあって、ビックリされますが、そういう事情でやむを得ず、行うことがあるんですね。その後、化膿していないことを確認して、本格的なインプラントを挿入する手術を行うこともありますし、化膿が疑われれば、傷の中を洗う手術を何回か行うこともあります。

最悪なのは骨まで化膿してしまったり、血の巡りが悪くなってしまったりして、脚を切断しないといけないという事態すらありえる骨折なので、優先順位として化膿しないこと、血管や神経を守りつつ軟部組織の回復を促すこと、骨をできるだけ真っ直ぐにすること、そして、最後に骨折をキレイに元通りに近づけることという考え方になります。そう考えたときに緊急手術以降、何回か手術が必要になることもあるということなんですね。

タイガー・ウッズ選手の骨折やその治療がどのようになっているかは報道されている以上のことは知りませんので、安易なことは言えませんが、開放性粉砕骨折というのはこういうものだという一般的なお話をいたしました。これだけ重症な骨折を考えると、タイガー・ウッズ選手の復帰時期の心配もありましたが、まずは日常生活を不便なく送れるようになるのか、時間がかかれど現役復帰ができるのか、ということから考えるレベルだと言えます。もちろん、これまでも何度も窮地から復活されているタイガー・ウッズ選手ですから、今回の大ケガからも復活されることを願っております。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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