筋肥大を狙うなら回数は? 低負荷でも筋肥大が起こるという新事実

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サッカー選手
おお、筋トレやってるねぇ!
野球選手
野球は筋肉量がモノを言うのさ!
サッカー選手
どんくらいの回数がいいの?
野球選手
お?知らないのか?常識だぜ。
だいたい10-12回くらいで限界になるのがいいんだ。

 

 

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。。
記事ご覧いただきありがとうございます。

 

筋力トレーニング、ウエイトトレーニング、
レジスタンストレーニング・・・
様々な呼び名がありますが、

いわゆる筋トレ

この筋トレの目的はなんでしょうか?

大きく分けて
2種類あるはずです。

 

1つ身体を大きくすること。
それもスポーツにおいては、
パワーを発揮するための
大きさである必要があるので、
ただ太るわけにはいかない。

そうなると筋肉量を増やすこと
つまり、筋肉を太くする(筋肥大)必要があります。

 

 

もう1つは、筋力を高めること。

スポーツにおいてパワーは大切な要素です。

野球であれば
大きな放物線を描く大ホームラン
150km/hを越える剛速球

サッカーであれば、
爆発的な加速でディフェンダーを置き去りにするフォワード
ロベルト・カルロスばりの弾丸シュート
あたり負けしないフィジカル

 

こういったレベルに到達するには、
一つ一つの筋肉が発揮するパワーを高めていく必要があります。

それを最大筋力と言ったりしますが、
単純なダンベルを持ち上げる筋トレであれば
持ち上げられるダンベルの重さのマックスが最大筋力を表します。

 

その最大筋力は原則的には、
筋肉の断面積、すなわち太さに比例します。

ですから、筋力を高めるためにも、
筋肥大は必要になってくるわけです。

筋肥大に最適と言われる回数・セット数・頻度

かなり以前から言われていますが、

  • 10-15回程度で限界になる重量、負荷で
    限界になる回数までしっかりやる
  • それを1-3分の休憩(セット間インターバル)をはさみ、3セット
  • 週に2回から3回

これが一般的なやり方になります。

もう少し詳しく解説していきます。

筋肥大に最適と言われる回数

一般に高負荷で低回数しかできないトレーニングは、
神経系の能力も発揮した爆発力が必要なので、
筋肥大よりも最大筋力向上に向いていると言われています。

それが6-10回程度の繰り返し回数となって、

逆に筋肥大になると、もう少し回数を増やしたほうが効率が良いと考えられています。

 

しかし、30回も40回も続けられる軽い負荷だと、
筋肉に対する1回1回の負荷が足りないために筋肥大もあまり起きません。

 

そして、回数以上に重要と言われるのが、

自分の限界まで追い込むこと
できることなら、限界が来ても、サポートしてもらって、
もう数回、限界を超えて回数を行う

それくらいが効果が上がる筋トレだと言われています。

筋肥大に最適と言われる重量

重量や負荷の大きさについては、
トレーニング種目によって大きく変わりますが、

回数のところを読んでいただくとわかるとおり、
設定した回数が限界になるくらいの重量が適切と言えます。

そのため、筋肥大については10-15回くらいで限界に来る負荷
ということになります。

筋肥大に最適と言われるセット数

セット数は一般的に3セットが推奨されています。

一気に休まず3倍分の回数をやるとすれば、
それは軽い負荷じゃないとできないですよね。

ですから、ちゃんと10-15回で限界に来るまでやったら、
しっかり休んで(次に述べるインターバル時間を取って)、
次のセットでまた重い負荷で筋肉に刺激を加える

ということです。

筋肥大に最適と言われるセット間インターバル

セット間の休憩の目安は1-3分くらいと言われていて、

シンプルに短ければ短いほどキツいですが、
キツくてもしっかりとした重量の筋トレを回数を減らさずに行えれば、
それが一番効果的です。

しかし、短すぎれば、回復が追いつかず、
2セット目、3セット目と回数が減ってきてしまい、

全体としての回数、負荷が減ってしまうので、
キツい割に効果が少ないという状態になってしまいます。

 

そういう意味ではセット間インターバルは1-3分を目安に、
回数を減らさない限りで追い込んでみる。

というのがストイックに効果を上げる方法です。

筋肥大に最適と言われる頻度

筋トレは週に2-3回という頻度が望ましい
というのは有名ですよね。

それは
筋トレ後に筋力、筋線維が回復するのに48-72時間かかると言われていて、
それだけ時間をかけて回復した結果は、筋トレ前より強くなっている

これが俗に言う超回復ですね。

この超回復を毎回起こしていって、筋肥大を起こしていくことが、
基本中の基本と言えます。

 

もう一度、要点をまとめると、

  • 10-15回程度で限界になる重量、負荷で
    限界になる回数までしっかりやる
  • それを1-3分の休憩(セット間インターバル)をはさみ、3セット
  • 週に2回から3回

ということになります。

 

 

しかし

近年、これにこだわる必要はないと
言われてきています。

低負荷、高回数でも筋肥大するというデータ

 

たとえば、この文献では、

Low-Load Bench Press Training to Fatigue Results in Muscle Hypertrophy Similar to High-Load Bench Press Training
Riki Ogasawara1,2, Jeremy P. Loenneke3, Robert S. Thiebaud3, Takashi Abe1,4

International Journal of Clinical Medicine, 2013, 4, 114-121

上で述べた、一般的な方法【高負荷・低回数】と、
もっと低い負荷 最大筋力の30%程度の負荷で、
限界までトレーニングする方法【低負荷・高回数】

これを比較しています。

 

 

その結果ですが、

筋肥大はどちらも同じくらい起こった

ということです。

それを示したのが以下のグラフです。

 

ベンチプレス低負荷ベンチプレスを【高負荷・低回数】で行ったケースと【低負荷・高回数】で行ったケースで、
上腕三頭筋は【高負荷・低回数】で11.9%、【低負荷・高回数】で9.8% 筋肥大し、
大胸筋は高負荷・低回数】で17.6%、【低負荷・高回数】で21.1% 筋肥大したというデータです。

上記文献より引用

 

 

今までは低負荷ではいくら数をやっても、
筋肉は太くならない

というのが定説でしたが、
それを覆したという意味で大きな意義があります。

 

 

少し詳しく文献を見てみると、

 

もう一つ重要なデータとして、
最大筋力は【高負荷・低回数】の方が伸びたということです。

これは、実は
【高負荷・低回数】のトレーニングを6週間やり、その後12週間、
トレーニングを行わない期間(休養期間)を経て、
【低負荷・高回数】のトレーニングをやる

という実験だったので、
最大筋力が休養期間の間に元には戻らず、
少し強くなったままで【低負荷・高回数】のトレーニングに移ったこと。

これが最大筋力は【高負荷・低回数】の方が伸びた一つの原因ではないか?
と文献では述べられています。

 

 

しかし、最大筋力を上げるには、
神経系も鍛える必要があります。

ですが、【低負荷】では、
それが難しいのだろうと考えられます。

 

というように、少し注意点があるものの、
【低負荷・高回数】でも筋肥大は起こるというのは事実です。

 

 

これはある程度納得のいく話ではないでしょうか?

 

たとえば、競輪選手を思い浮かべてください。

異常なほどに脚が太いですよね。
ものすごく筋肥大が起こっているわけです。

もちろん、多くの選手はウエイトトレーニングを行っていますが、
ウエイトトレーニングを行っていない選手も競輪選手の中にはいます。

たとえば、武田豊樹選手は
ウエイトトレーニングをまったくやっていないと
インタビューでおっしゃっていますね。
http://keirin.jp/pc/dfw/portal/guest/info/ss_official/2010/interview/takeda.html

 

自転車を限界まで全力でこぐという、
【低負荷・高回数】トレーニングの結果、
脚が異常に太くなったと考えるのが自然です。

(武田選手は競輪の前にスケートをやっていますが)

負荷の高低に関係なく総負荷量(重量×回数)が筋肥大に影響する可能性

2010年にMcMaster大学のBurd NAらが発表した論文によると、

低負荷の筋力トレーニングを疲労困憊までやった場合と、高負荷の筋力トレーニングを疲労困憊までやった場合のタンパク合成量(筋肥大量のミクロ版のようなもの)は短期的には低負荷の方が多く、長期的には両者とも同じくらいだという結果が出たようです。

一般的には高負荷の方が筋肥大しそうですが、同じ「疲労困憊」という条件をつけると、負荷量×回数=総負荷量は低負荷の方が高くなりやすく(その分時間がかかりますが)、結果として短期的には低負荷の方がタンパク合成量が多く、長期的にも高負荷に匹敵するタンパク合成量だったという結果です。

ですから、こと、筋肥大ということにおいては、

高負荷・低回数

vs

低負荷・高回数

の戦いは引き分けということになるかもしれません。

【低負荷・高回数】をトレーニングプランに活用する

勘違いしやすい【低負荷・高回数】のデメリット

ここで多くの人が勘違いしてしまうのが、

低負荷でいいなら楽勝じゃんか!

と、考えてしまうことです。

 

従来の【高負荷・低回数】に比べ、
【低負荷・高回数】は
時間的にも体力的にも精神的にも、
むしろ相当にキツいです。

実際にやってみればわかります。

 

 

どちらも大原則として、
限界まで追い込む
ということがあります。

 

それであれば、短時間で限界に達する方が
「キツいことは早く終わる」ことになります。

 

それを低負荷で、その低負荷すら
耐えられなくなるくらいの限界まで
何回も何回も繰り返して追い込んでいくトレーニングは、
ある意味「苦行」です。

 

つまり、この時間的、体力的、精神的なキツさが、
この【低負荷・高回数】のデメリットです。

ですから、「楽」という視点は全く見当違いです。

【低負荷・高回数】のメリット

では、メリットはないのか?
というと、もちろんあります。

 

1つは、負荷が軽いので、
筋肉や関節にかかる負担が少ないわけです。

その結果、トレーニングによる
怪我のリスクは減ります。

これは怪我のリハビリ期や、
中高齢者のトレーニングには非常に大切なメリットですね。

もう一つは、
ある程度複雑な動きを作る筋肉の筋肥大も狙えるということです。

 

つまり、今までのウエイトトレーニングマシーンや、
フリーウエイト(ダンベルやバーベルなどで重力を活用)
でのトレーニングでは高負荷をうまくかけられなかった
動きについてもトレーニング可能ということです。

 

これは、筋肉で言えば、
関節を回旋(スピン)させる筋肉。

肩や股関節のインナーマッスルなどが
代表的ですが、
こういった筋肉の筋肥大も十分に狙えるということになります。

 

ここまでは筋肥大を起こすために負荷の量や回数、頻度などをどうしていけばいいか?

ということについて解説してきました。

 

これらを深く理解して、自分なりのトレーニングとしてアレンジしていくには、
もっと根本的な筋肥大の仕組みを知っておくことは有益です。

そして、意外と多くの専門家も説明していない根本だったりするので、
ぜひ、頭に入れておいてください。

意外と知らない筋肥大が起こる本当の仕組みを解説

ということで、筋肥大が起こる本当の仕組み、根本的なお話をしていきます。

一般的に筋肥大は筋力トレーニング+休息=超回復

一般的には筋肉が太くなるということは、筋線維が太くなる、ということになります。

そして、筋力トレーニングで筋肉に負荷をかけ、筋肉に微細な損傷が起こり、休息を十分に取ることで、微細な損傷は回復し、それも元の状態以上に強く回復して、太くなっていく。

それを超回復と言うわけですね。

これがどんな本にも雑誌にも書いてある超回復、筋肥大の仕組みです。

 

これ自体、間違いではまったくないのですが、さらに深く、根本に迫る必要があります。

なぜ超回復が起こるか?と言えば、ホメオスタシスのフィードバック

その根本とはホメオスタシスです。

ホメオスタシスというのは恒常性維持機能とも言う、人間の根本的な仕組みです。
このホメオスタシスがあるからこそ、さまざまな環境変化の中で、
人間は生き残ることができます。

例えば、体温です。

冬の北海道でも夏の沖縄でも、体温はほぼ一定ですよね。
でも、外気温は下手したら40℃くらい違うわけですから、エネルギー保存の法則からすれば、おかしな話です。

そのおかしな話を実現しているのがホメオスタシスで、

夏の沖縄にいるときはせっせと汗をかいたり、体を動かすのをセーブしたりして、体内から熱を放散しますし、冬の北海道にいるときは汗はかかず、身体を小刻みに震わせながら、体内に熱を生み出して、ためていきます。

これって実は身体はかなり大変なことをしているわけですが、自然と意識せずやっています。

これがホメオスタシスのチカラです。

ホメオスタシスのフィードバックを起こすトレーニングとは?

このホメオスタシスという視点をわかりやすくするために、
ホメオスタシスという機能を擬人化してみます。

要はあなたの中にホメオスタシスという人格、キャラクターがいると考えましょう。

よくやるのが安易なキャラ設定ですが、「ホメちゃん」というキャラにしてしまうことですね。

 

で、このホメちゃんは本来、生き残ることを主眼に進化してきました。
要は昨日まで生き残った自分をなぞらえようとするんですね。

そこでいきなり環境や状況が変化すると、
必死こいて、過剰反応ばりに、それに順応しようとします。

それがうまくいくと、環境に「適応」したと言えますし、
逆に環境や状況から逃げ出すように反応すると「拒否反応」となります。

どちらもホメちゃんの意志です。

 

筋トレで言えば、

疲労困憊するまで筋肉に負荷をかける、つまり限界まで筋肉を追い込めば、

ホメちゃんは「やばい!このままの筋肉では耐えきれん!!」

となって、筋肥大のシグナルをバンバンに出します。

 

しかし、同時に疲労困憊が回復する前にまた追い込もうとすると、
ホメちゃんんは「もう無理、この状況からは逃げ出さないと生き残れない!」

と判断(拒否反応)して、一気にモチベーションを落としにかかるか、
怪我をさせるか、体調を崩させます。

 

つまり、ホメオスタシスのフィードバックという超根本を活用した筋肥大法というのは、

ホメちゃんに「このままじゃヤバイ!もっと筋肉を太くしなければ!」
と思わせ続けるトレーニングであると言えるわけですね。

 

それはシンプルに言えば、毎回のトレーニングでは回数や頻度、負荷は何であれ、「疲労困憊まで」「限界まで」追い込む。

そして、その疲労がしっかりと取れた段階で次のトレーニングをする。

ということになるわけです。

 

それが一般的には前半で解説した負荷や回数、頻度だったりするわけですが、しかし、それは鍛える筋肉や日々の生活における負荷や目指すところによって変わってくるということも同時に言えるんですね。

欠かせないのが食事・栄養

そして、いくらホメちゃんが頑張って筋肥大のシグナルを出してくれたとしても、

筋肉を作り出す材料まで勝手に調達してくれるわけではありません。

 

当然、食事は欠かせない要素になるわけです。
食事における根本は筋肉の材料になるタンパク質と、筋肉を増やすシグナルを強化する糖質です。

タンパク質は、体重1kg当たり1.5-2gを必要とすると言われていますが、筋肉の材料になるわけですから直接的に、絶対的に必要です。筋トレのサプリメントの代名詞がプロテインなのもうなずけます。

さらに、糖質(炭水化物)ですが、これは足りなくなった時を考えれば当然です。糖質(炭水化物)が減ると、身体は飢餓状態と判断します。だから、低糖質ダイエットなんかが謳われるわけですが、飢餓状態となると筋肉など増やしている場合じゃありません。むしろ、筋肉も分解してエネルギーに変えていかないと(異化作用と言います)いけなくなるわけですから、筋肥大どころか、筋萎縮を起こします。そういう意味ではタンパク質よりもベースとして大切なのは糖質と言ってもいいでしょう。

まとめ

今回の記事をまとめると、

  • 【低負荷・高回数】のトレーニングでも筋肥大は起こる
  • 【低負荷・高回数】のトレーニングはキツい
  • 【低負荷・高回数】のトレーニングは怪我のリスクを減らす
  • 【低負荷・高回数】のトレーニングは複雑な動きにも対応する
  • 負荷・回数に関わらず総負荷量が決めてと言われてきている
  • ホメオスタシスのフィードバックが筋肥大の根本である

ということになります。
うまく活用して、トレーニングプランを立てていきましょう。

 

 

お読みいただきありがとうございました!

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