こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。。
この視野の広げ方というのは、
多くのサッカー選手が悩むところです。
そもそも視野なんてのは、
人の視覚能力ですから、
目の障害がなければ、大差ありません。
にも関わらず、視野の広い人、
狭い人と称される人がいるのは、
何故でしょうか?
それは、サッカーに必要な視野というものをしっかり定義すればわかることです。
サッカーに必要な視野とは、
フィールド上の自分の周り360度の範囲の中にいる
選手の位置、選手の動き、雰囲気などを捉えられる範囲
と言えます。
つまり、ある瞬間に目に入る範囲は人の目の機能としての視野ですから変わりませんが、
サッカーに必要な視野はより抽象的な概念になります。
ですから、視野の広い人、狭い人がいるのは当然と言えば当然ですね。
ここでひとつ、面白い研究がありました。
引用しますね。
カリフォルニア大学バークレー校の博士研究員であるジェイソン・フィッシャー氏は、短い時間で注意の対象物を変化させた場合の知覚に与える影響について検証を実施。その結果、人がある時点で認知している内容はその瞬間に目にしたものだけではなく、それ以前のおよそ15秒間にわたって見てきた内容がミックスされたようなものであるということが判明しました。報告書ではこの一時的な認知能力を「continuity field(連続視野)」と呼び、われわれがいかにして対象物に注意を払っているのかを説明するものであるとしています。
つまり、そもそも人が「今」目で見て認識している世界は、
見てから脳で情報処理をする時間が必要なので0.5秒くらい過去を見てることになっているわけですが、
そういうレベルではなく、15秒前のことも今見ている世界に影響を与えている。
これは誤解を恐れずにシンプルに言うと、
人は連続的な過去から今までを、今この瞬間にミックスして見ていると言えます。
とすると、
中田英寿選手、小野伸二選手、中村俊輔選手、
遠藤保仁選手など、歴代の視野の広い選手たちの共通する特徴である
「首振り」の意義がより、強烈になります。
過去からの連続した映像を今の認知として捉えられるわけですから、
「首振り」で情報を収集する意味は大きいですよね。
ただ、当然ですが、「首振り」って誰でもできますよね。
でも、視野の広さに差が出る…
いろんな要因がありますが、
結果としてみれば、結局視野の狭い人って、
言われて「首を振りますが」また、振らなくなるんですよね。
それは「ただの首振り」と
「視野を確保するための首振り」(視野振りと名付けました^^)の違いにあると考えます。
もちろん、「視野を確保するための首振り」(視野振り)を身につけたいわけですよね。
ということで、その身に付け方を提案します。
視野振りを身に付けるトレーニング「視野振りトレ」
このトレーニングは言わば、視野振りをしなければ話にならない状況を作るトレーニングです。
よくボールを受ける瞬間に首振りを加える基礎練習はやられますが、
あれこそ「ただの首振り」トレーニングです。
そうではなく、「視野振りトレーニング」にするには、
背後からボールを奪いにくる選手と背後にパスをしなくてはならないという制約が必要です。
例えば、このような形式でやってみましょう。
5人一組で、カラーコーンをこのように三角形に3つ置きます。
その中央にボールを受ける選手Aとボールを奪う選手Bがいて、
1つのカラーコーンの間に1人ずつ、つまり3人配置します。(C,D,Eとします)
そして、ルールは最初はC,D,Eの誰かがボールを保持し(この場合はCとします)、Aにパスをします。
この時、ボールを奪うBはもちろん、D,EもできるだけAの背後に隠れます。
そして、Aはボールを受け取ったら、必ずDかEにパスします(Cに戻してはいけません)。
そのパスをBインターセプトとするか、トラップ時にボールを奪いに行きます。
これが1セット。
例えば、Bは奪えずに見事AはDにパスを通したとしましょう。
そしたら、すぐにAとBは役割を交代します。
つまり、BがDからボールを受けて、CかEにパスをする。
それをAが阻止するという図式です。
これを間髪入れずに繰り返し、
- パスを通したら1点
- ボールを奪われたり、ミスパスで-1点
として合計点数を競います。
この練習のミソは「視野振り」しないと、敵も味方も見えないところです。
ここまで徹底することで「首振り」して情報を得ないとどうしようもないという状況を作り出し、
「視野を確保するための首振り」(視野振り)を習慣化します。
そして、すぐに攻守の役割を交代することで攻守の切り替えの速さの意識作りにも役立ちます。
是非、視野の広い選手だらけのチームを作ってみてください。
この視野振りトレーニングの発展バージョンなども変わる快感クラブでは提案していきます.
サッカーのパフォーマンスにブレイクスルーを起こす秘訣
さて、この練習を考案したのは僕ですが、僕はサッカー素人です。
たまにフットサルをやる程度で、指導経験もありません。
しかし、脳科学とスポーツ医学という武器を使って、
パフォーマンスを圧倒的に上げるブレイクスルーを起こせると思っています。
それは全てのスポーツに関わる医師ができることかと言えば、そんなことはないです。
スポーツ医学に加え、脳科学の知識を織り交ぜ、
かつ、それらをスポーツパフォーマンスという一見、少し違う領域に活かす。
その能力は自分の少し特異的な部分のような気もしています。
でも、実はコツがあります。
そして、同時に、今回のような実践的な提案にしろ、
もう少し抽象的な指導にしろ
現場の選手、指導者のフィードバックを集めて、
より改善していく必要があります。
ですから、医療の専門家も、現場の選手、指導者、両親もみな、
混ざり合ったコミュニティが必要だと感じています。
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