半月板損傷の症状をチェックしてベストな治療に繋げる方法

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今回は半月板損傷の症状チェックリストを使って、
あなたの膝の症状が半月板損傷に近いかどうかをチェックいただき、

もし半月板損傷だとしたらどういう治療があるのか?
手術は?

というようなお話まで解説します。

あなたの膝の痛み・・・原因が気になりますよね。 骨折や変形性膝関節症のようにレントゲンですぐわかるものならまだしも、半月板損傷はMRIという精密検査が必要です。

そのため、まず最初にレントゲンを撮って、「骨には異常なさそうですね」ということで終わってしまいかねませんが、 そんなときに、このチェックリストで確認してみてはいかがでしょうか。

6つのリストのうち3つ以上当てはまるようでしたら あなたの膝の痛みはもしかしたら半月板損傷かもしれません。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

膝の仕組みを基本から

まず膝という関節の仕組みをおさらいしていきましょう。

大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)

膝という関節は太もも側の大腿骨スネの骨である脛骨からなります。

スネの骨には外側に細い腓骨がありますが、この腓骨は膝の関節面は形成していません。

内と外の2つの関節面

この膝関節ですが、上の大腿骨と下の脛骨が向かい合っている関節です。それも側と側でそれぞれ向かい合っているという形状をしています。

大腿骨は内顆外顆と呼ばれる丸みを帯びた軟骨面があり、また、脛骨は脛骨高原(けいこつこうげん)と呼ばれる、比較的平坦な関節面を内側、外側に大腿骨の内顆と外顆を乗せるように持っています。

内と外のクッションである半月板

この内と外のそれぞれの関節面で体重を支えるわけですが、軟骨と軟骨が向かい合って、体重をダイレクトに支え合えば、どんどん軟骨はぶつかり合ってすり減っていってしまいます。

そのためクッションが必要なわけですね。

これは背骨の椎間板(ついかんばん)のような役割といってもいいと思いますが、これが膝においては半月板(はんげつばん)であるいうことですね。

これが内と外の関節面にそれぞれありますので、内側半月板(ないそくはんげつばん)外側半月板(がいそくはんげつばん)の2種類があるということになります。

半月板損傷とは?

ではこの半月板が損傷してしまうというのはどういうことなのでしょうか?

様々な切れ方をする半月板

膝にかかる様々な負荷や衝撃を吸収してくれるクッションですから、一発の強い外傷もあれば、繰り返しのオーバーユースによる損傷もあり、いろいろな切れ方をしてしまいます。

various types of injuries to the meniscus of the knee

もともと半月板という名前ですが、どちらかというと三日月に近い形をしています。この半月板が縦に切れたり(縦断裂)、横に切れたり(横断裂)、スライス状に切れたり(水平断裂)、切れた一方がバケツの柄みたいになって、ときに不安定にはまり込んでしまったり(バケツ柄状断裂)、それらが複合的に混ざっていたり(複合断裂)します。

また、加齢性の変化や長年のオーバーユースでだんだんと脆くなって切れていってしまう変性断裂という状態もよくあります。

頻度が高い内側半月板

内側と外側でいうと、内側の方が頻度が高いです。

どうしても膝の軟骨のすり減りもそうですが、体重のかかり方は内側に負荷がかかりやすいんですね。

見逃せない円板状半月

しかし、外側も見逃せない状態があります。それが円板状半月板と呼ばれる状態で、生まれながらに外側半月板が三日月状でなく、むしろ満月に近い状態になっている人がいます。

画像引用元:整形外科専門医になるための診療スタンダード 下肢 初版 羊土社

これはクッション性が強くて、一見良さそうですが、逆に力の分散が上手くいかず、かなりの頻度で切れます。 

半月板損傷を疑う症状のチェックリスト

それでは早速、膝の半月板損傷を疑う症状のチェックリストへとまいりましょう。

膝に体重がかかったときに痛い

まず基本の症状ですが、膝に体重がかかったときに痛みが走るということです。

これは膝の角度によって痛かったり、痛くなかったりしていいです。

半月板損傷の位置によって、痛い角度と痛くない角度があって当然です。

膝の内側か外側どちらか一方が痛い

次に膝の痛みと言っても、内側か外側のどちらかが痛いと言うことです。

真ん中が痛かったり、時に内側が、時に外側が・・・ というのとは違って、必ずどちらかが痛いということですね。

膝の伸ばし具合が左右違う

次に膝の可動域制限というもの、つまり動かせる幅が狭くなるという症状の中でも、伸ばし具合を左右で比べるというのがチェックポイントです。

痛い方の膝の伸び具合が悪いというのが半月板損傷の特徴の1つです。

うつぶせで膝を投げ出して、伸び具合を左右で比べるというのがわかりやすいです。

画像引用元:整形外科臨床パサージュ 下肢のスポーツ外傷と障害 第一版 中山書店

膝の関節裂隙(かんせつれつげき)を押すと痛い

膝の圧痛部位、つまり押して痛い部位も特徴的です。これが膝の関節裂隙にあるということですね。

関節裂隙とは大腿骨と脛骨のちょうど間で、骨が触れず、わずかな凹みとして関節が触れる位置のことをいいます。

関節裂隙は内側、外側、さらにそれぞれ前から後ろまでありますので、丁寧に触れていくこと、押していくことが大切です。

片足立ちで足を固定したまま体幹を回すと痛い

半月板損傷は体重がかかるという物理的には軸圧(じくあつ)と、その軸を中心としたスピン、つまり回旋運動が原因となります。

そのため、片足立ちで足を完全に地面、床に固定したまま(つま先ととかかとが動かない)、体幹を回す、膝頭を回すことは痛くてできないかもしれません。

膝のクリックを感じることがある

膝のクリックというのは、膝の曲げ伸ばしや、歩いているときに、音や音が鳴ったような感覚や振動とともに引っかかりを感じる症状です。

これも特徴的な症状ですので、思い当たる節はないでしょうか?

 

さて、これらのチェックリストで3ついじょう当てはまるようであれば、
半月板損傷の可能性も十分にありそうです。

となれば、整形外科を受診してみましょう。

担当医の判断も同様に、半月板損傷が疑わしいとなれば、MRI検査を行うことが多いと思います。
多くの病院ではMRIは予約の検査なので、日を改めてての検査とその説明になります。

そこでもし半月板が傷んでいますね・・・となった場合にはどういう治療があるか?

というお話にうつります。

半月板損傷の痛みに対する治療法まとめ

半月板損傷の痛みに対して、どう対処すべきか、対処法そのものについて解説いたします。

痛み止めの内服

まず痛み止めの内服ですね。 これは消炎鎮痛剤(しょうえんちんつうざい)と呼ばれる薬が基本的に使われます。

半月板損傷の痛みの原因の1つである半月板周囲の炎症を抑える作用があります。

ただ、半月板が急に引っかかったりするような瞬間的な痛みには効果は不十分かもしれません。

外用剤・湿布

外用剤とは塗り薬や貼り薬のことですが、これも消炎鎮痛剤です。

これを皮膚から浸透するように効かせる薬ですが、飲み薬より効果は少なめです。副作用も少ないのと、いい意味で効く気がするので、使う人が多いと思います。

痛みが強くない場合にオススメの選択肢ですね。

膝の関節の中へ注射

次に膝の関節の中への注射です。 関節注射というものですね。

これは膝の関節の中にヒアルロン酸を注入することが多いです。それによってヒアルロン酸の炎症を抑える作用を期待するのがメインですね。

他に局所麻酔薬を入れたり、ステロイド薬を入れたりもします。

局所麻酔薬短時間の効果でよければ、一番、痛みを落ち着かせる効果が期待できます。麻酔薬ですからね。

ステロイド強烈に炎症を抑えますが、副作用も少なくありません。膝での報告が多いのですが、ステロイド関節症と呼ばれるような、逆にステロイドの注入しすぎによって関節炎や関節の変性(軟骨のスリ減ったり、溶けてしまったりなど)を起こしてしまうことがあります。

膝にかかる負荷を減らす工夫

膝にかかる負担を減らすというのは直接的、かつ、自然治癒力を促せるので、どんなときも第一に考えるべき方法です。

安静

膝に体重がかかったり、スポーツなどで強い衝撃や捻りの動きが加われば、半月板の回復に悪い影響を及ぼすのは当然です。

そのため、安静としてスポーツを一定期間休んだり、もっと徹底するときは、松葉杖などで普段から膝に体重をあまりかけないようにしたりというようなことをやります。

体重コントロール

膝にかかる体重が原因とすれば、即効性はないにしろ考えたい対策です。健康的な範囲内であれば、体重を減らしていくことは直接的な効果が期待できます。

テーピングやサポーターなど

即効性という意味では膝を安定させる目的でのテーピングサポーターなどが効果的です。

入念なウォームアップ

またスポーツ時の痛みということであれば、入念なウォームアップというのも痛みにおいて重要です。

ウォームアップもせずにいきなり試合をやって膝を痛めた・・・なんて経験がある人もいらっしゃると思います。ウォームアップをしていないと、イコール、身体は冷えています。特に関節のような深いところは全然暖まっていません。

その状態では関節のすべりが悪いので、半月板にかかる負荷も強まります。ぎこちない膝の動きになってしまうんですね。

それに対して、ウォームアップを入念に行うと膝の関節内の温度も上がって、新鮮な潤滑油として効果が期待できる関節液が増えます。それによって、半月板も含め膝の動きがなめらかになって、負荷が減ると考えられます。

 

次に本格的な治療である手術についてお伝えします。

半月板損傷の治療法の選び方 手術はすべきか?

半月板というのは血の巡りが悪い組織なので、損傷してしまうとなかなか自然にくっついてくれるのは期待薄です。

しかし、だからといって、損傷=手術というわけではありません。

損傷の程度によっては、そのままでも、半月板がクッションの役割を果たしつつ、保存的治療の結果、痛みが落ち着いてくれることも多々あります。

ですので、ザックリですが、手術すべきなのは、明らかに縫ったり、部分切除しないと痛みが取れないと思われるような重症型の半月板損傷と、リハビリも含めた保存的治療でも良くならない半月板損傷と言えます。

半月板損傷の手術方法

まず半月板損傷の基本的な手術方法について解説いたします。

半月板を縫う(縫合術)

「切れてしまっているなら、 縫えばいい」

画像引用元:整形外科専門医になるための診療スタンダード 下肢 初版 羊土社

これは手術の基本ですね。

しかし、半月板損傷の場合はそう簡単ではありません。

まず膝の関節の中の狭い中で縫うというテクニカルな難しさがあります。これは技術と手術器具の進歩によって可能になってきています。

しかし、半月板というのは元来、血の巡りが悪い組織です。血の巡りが悪いということは自己治癒能力が低いということです。 そして、縫うというのは、それで治ったと思いがちですが、縫った状態では糸に頼り切っている状態です。しかし、糸はいずれほつれたり、切れたり、緩んだりします。

ですから、縫った後に自己治癒力でくっついてくれないと治らないわけですが、半月板の場合はかなりの頻度でそうなってしまうという難しさがあります。

傷んだ半月板を縫って治る可能性が高いのは、

  • 若い人
  • 半月板の根本ちかくの血の巡りがいい場所の断裂

ということが言われています。

半月板をお掃除する(部分切除術)

ということで、半月板が切れているなら縫えばいい・・・ とカンタンにはいかない半月板損傷ですが、

そうなったときに、次の選択肢は、 半月板のお掃除です。

半月板が切れてしまって、動きの中で挟まり込んでしまったり、引っかかってしまったり、過剰に動いて痛みの原因になってしまったり・・・ という、その痛みの原因部分だけ部分的に切り取ってしまうということです。

画像引用元:整形外科専門医になるための診療スタンダード 下肢 初版 羊土社

これを半月板部分切除術(はんげつばんぶぶんせつじょじゅつ)といいます。

半月板損傷に対する手術のメリット

さて、それではさっそく、半月板手術のメリットから説明します。

痛みの原因を直接改善できるので高い効果が期待できる

まず当然のことですが、傷んでしまった半月板を縫ってくっつけるか、部分的に切除して、原因を直接改善するのが手術ですから、単に痛み止めを飲んだり、注射をしたりすることに比べれば高い効果が期待できます。

そうでないと手術なんてしないですよね。

放置すると悪くなりかねない半月板損傷部を改善できる

また、半月板が傷んだ部分は痛みを我慢しながらプレーしたり、生活したりしていると、引っかかったり、ぎこちない膝の動きを誘発して、さらに悪化したり、時には関節のつるっとしたきれいな軟骨にまで悪影響を及ぼしかねません。

そういう観点からも、損傷部に必要な手術的処置をすることのメリットがあると言えます。

要は放置して悪化させるリスクを減らせるというメリットですね。

 

現在はほとんどが関節鏡(内視鏡)手術で小さい侵襲でできる

また、現在はほとんどが関節鏡という関節用の内視鏡で手術ができます。

Arthroscope

膝の半月板の手術であれば1.5cmくらいの小さな傷が2個+αだけで手術ができてしまいます。

膝に長く目立つ手術の痕が残るわけではないということですね。知らない人が見れば、全然わからないか、ケガしたあとのちょっとした「かさぶた」に見えるかもしれません。

これは傷だけでなく、手術後の痛みやリハビリのスピードにもメリットがあります。やはり、大きく切って、開いた手術のあとは、その傷が治るまでなかなか痛みが強かったり、リハビリを遅らせる必要があったりしますから。

半月板損傷に対する手術のデメリット

逆に半月板損傷に対して手術をすることのデメリットも当然あります。

小さいとは言え手術侵襲(つまり、ダメージ)が加わる

まず手術をしない場合に比べて、関節鏡の小さい傷とはいえ、手術の侵襲(物理的なストレスやダメージ)が加わります。

これ自体が大きな問題なることは少ないわけですが、人の身体にメスを入れるということ自体に何の影響もないわけがないというのも事実です。

縫ってもくっつかないことがある

半月板縫合の時にも述べましたが、「半月板が切れているなら、縫えばいい」と、縫ってはみたものの、血の巡りが悪いため、結局くっつかず、縫った糸が異物として残ってしまうという残念な結果になることがあります。

その場合は、半月板損傷の痛みが改善しないばかりか、悪くなってしまうことすらあり得ます。

部分切除後はクッション能力低下

また、部分切除をしたあとは、クッションの役割をしていた半月板が小さくなってしまうわけですから、クッション能力が下がります。

それはつまり、もともとの健常状態に比べればという話ですが、

  • 膝の痛みが残ってしまう可能性があるということ
  • 膝の軟骨のスリ減りが起こってしまう可能性があること

を意味します。

手術してもしなくても重要なリハビリ

そして、手術をしてもしなくても、必ずやるのがリハビリです。これは自宅で自分でやっていただくセルフリハビリも含めます。

膝関節は体重を支え、身体を様々な方向に運ぶという大切な役割を持ち、それゆえの大きな負荷がかかります。この働きと負荷に耐えうる能力を取り戻して、強化していくにはリハビリテーションが非常に重要になります。

ポイントは膝の可動域(曲げ伸ばしの幅)を拡げることと、膝周りの筋力として特に大腿四頭筋とハ

まとめ

今回は半月板損傷を疑うべき症状として6つのチェックリストをご紹介いたしました。 このうち3つ以上当てはまるようでしたら、半月板損傷かもしれません。

  • 膝に体重がかかったときに痛い
  • 膝の内側か外側どちらか一方が痛い
  • 膝の伸ばし具合が左右違う
  • 膝の関節裂隙(かんせつれつげき)を押すと痛い
  • 片足立ちで足を固定したまま体幹を回すと痛い
  • 膝のクリックを感じることがある

病院で精密検査をしてみるといいかもしれません。

もちろん、ひとつの目安でしかなく、1つしか当てはまらなくても半月板損傷であることはあるでしょうし、全部当てはまっても違うこともあるとは思います。

 

そして、もし不幸にも半月板損傷と診断された場合の治療方法についても解説いたしました。

少しでも参考にしていただければ幸いです。

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