仙骨骨折 治療法と期間の目安と注意すべき後遺症 専門医解説

  1. 骨折の症状と治療
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今回は仙骨骨折(せんこつこっせつ)の治療法と治療期間の目安を解説していきたいと思います。

仙骨骨折は骨盤骨折(こつばんこっせつ)の一部ですが、この診断を告げられたら、ちょっと混乱しますよね。どんだけ重症なんだろう!?手術が必要なの?治るのか?などなど。

画像引用元(一部改変):運動器外傷治療学 第一版 医学書院

ひとくちに仙骨骨折と言っても、仙骨は大きな骨ですから、部位によっても重症度は違ってきて、重症度が違うと治療も治療期間も全然違ってきます。

さらに仙骨骨折の注意すべき後遺症を知識として知っていただき、まさに治療中の方はどのように防いでいくか、治療が進んだ人はどのように対処すべきかということにつながるような記事にしたいと思います。

仙骨骨折は骨盤骨折の1つで時に命にも関わりかねない重症なものもあります。それゆえ、後遺症というモノも大きな心配の1つになると思います。

 

後遺症を残さないためにも仙骨骨折後の治療が大切です。

ただ、しっかり治療しても、重症度によってはかなり高確率で残ってしまう後遺症もあります。過度に不安になる必要はありませんが、知らないことが不安を強めることもありますので、ザッとでも頭に入れておいていただければと思います。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

仙骨骨折の治療法と治療期間の目安

いよいよ、仙骨骨折の治療法と治療期間の目安ということになりますが、実際の仙骨骨折は骨折部位や骨折のずれ具合によって重症度がぜんぜん違います。

そのため、いくつかの重症度や部位毎にポイントを解説してみたいと思います。

軽症型は痛みに応じた日常生活可

まず軽症型です。

これは骨折のズレが少なくて安定しているということと、 骨折部が関節(特に仙腸関節)に及んでいないということが前提です。

この場合には痛みに応じて無理のない範囲で日常生活を早めから送れます。

骨がくっつくまでは1.5–2ヶ月くらいかかるのはどの骨折でも共通ですが、安定している場合には1ヶ月くらいでだいぶ痛みはひいてくれることが多いです。

仙腸関節部分は歩行に注意が必要

骨折が仙腸関節に及んでいる場合は、その骨折が及んでいる側の脚に体重をかけるのは危険です。

骨が安定する(くっついてくる)までは松葉杖などによる免荷(足をつかない)が必要になります。そこからだんだん、リハビリ担当の療法士(理学療法士)の指導の下、かける体重を増やしていくというのが一般的です。

重症型は手術も含め集中的な入院治療が必要

重症型はいろいろなケースがありますが

  • 骨盤輪の破綻(仙骨の他にも恥骨などの骨折がありずれているなど)があり不安定
  • 骨盤の中の内臓の損傷がある
  • 骨折が大きく大量出血が予測される状態

などが代表的です。

仙腸関節の脱臼を伴った重症型の骨盤骨折 画像引用元(一部改変):運動器外傷治療学 第一版 医学書院

 

このような場合は

  • 入院安静
  • 入院して精密検査(骨折の程度、内臓の損傷や出血の程度をCTなどでチェック)
  • 貧血の有無のチェック=採血
  • 貧血や脱水に対する点滴や輸血
  • 損傷部位(骨折や内臓)に対する必要な手術

などが必要になります。

 

骨盤骨折の手術は複雑な形の骨盤を元に戻して固定する必要があり、難易度も高く時間もかかる大手術になることが多いです。

画像引用元(一部改変):運動器外傷治療学 第一版 医学書院

治療期間の目安は骨がくっつくまでの期間がベース

治療の期間ですが、

まずベースは骨がくっつくまでの期間です。

これは軽症であれば受傷してから、手術した場合は手術してから1.5から2ヶ月というのが目安ですが、

当然、重症な場合はもう少し伸びます。

また、内臓損傷や大量出血があった場合にはその治療期間もありますし、また安静期間が長ければ、その後のリハビリも治療期間に加えないといけません。

そのため、重症の場合は全治3ヶ月から6ヶ月というのが幅広いですが1つの目安ではないでしょうか。

仙骨骨折を早く治すためのポイント

そんな重症度によっては相当長びく仙骨骨折を早く治すためのポイントですが、

安静度はしっかり守る

1つは当然ですが、骨折に応じて医師から指示される安静度というものを守ると言うことです。

安静度というのはいろいろあって、

  • ベッド上で足を持続的に牽引する
  • ベッド上安静
  • 車椅子まで
  • 股関節はできるだけ動かさない
  • 体重をかけてはいけない(免荷)
  • 体重を1/3だけかけていい(1/3部分荷重)
  • 体重を2/3だけかけていい(2/3部分荷重)
  • 歩行はいいが走ってはいけない

など、状態に応じて主治医から指示が入ります。

 

入院中であれば大丈夫ですが、自宅ではつい動いてしまう・・・なんてことがありがちです。

よく外来で「つい動いちゃったら痛みが強まっちゃいました・・・」なんていう人がいます。これは治療期間を延ばす1つの要因ですし、骨折がそのせいでずれれば、イチからやりなおしなんてこともあります。

動かしていいと言われたらビビりすぎない

しかし、逆に僕が

「ここまではやっていいよ」

と言っても、

「怖くて寝てました」

なんて、極端な人もいます。

 

安静にすればするほど関節はかたまり、筋肉はやせ細り、治療期間が延びてしまいますから、主治医はそのバランスを見て指示をしているので、動かしていいと言われたことは痛みが明らかに増さない限りは少しずつでも動かしていくことが大切です。

 

仙骨骨折の注意すべき後遺症と予防法

それでは仙骨骨折の注意すべき後遺症とその防ぎ方ということを解説していきたいと思います。

骨折部の痛みが続く

まず骨折部の痛みが続いてしまうということですね。

これには主に3つの原因があります。

  • 骨がくっつかない結果の痛み(遷延治癒、偽関節)
  • 骨の変形による痛み
  • 筋力低下による痛み

骨がくっつかない結果の痛み(遷延治癒、偽関節)

骨折ですから骨がくっつかないと治らないわけですが、

骨がくっつくのが明らかに遅れているのが遷延治癒(せんえんちゆ)

骨がくっつく力がなくなった、つまり待ってもくっつかないと判断された状態が偽関節(ぎかんせつ)

と言います。

特に偽関節というのは、偽(にせ)の関節と書くくらいですから、骨折部分が動いちゃうわけですね。不安定なわけです。

とすると、本当の関節じゃないわけですから痛いんですね。

これを防ぐにはしっかりと骨のくっつき段階に合わせた安静度(座っていいのか?体重をかけていいのか?走っていいのか?など)をしっかり守り、時に修正していくこと。

骨折が重症で不安定なら、手術でしっかり安定化させる。

など、治療の基本に忠実にやるということですね。

骨の変形による痛み・仙腸関節障害

骨がくっついたとしても骨の変形が残れば、痛みの原因になり得ます。

特に仙腸関節に及ぶ骨折にズレがある場合は、少しでも戻して、しっかり固定する手術がこの変形による痛みのリスクを減らします。

画像引用元(一部改変):運動器外傷治療学 第一版 医学書院

筋力低下による痛み

安静度を守ることが大切と言いましたが、それは「状況に適した安静度」のことであって、何でもかんでも安静にしようってことではありません。

むやみに安静にしすぎてしまうと、お尻周り、下半身の筋力が低下して、その筋力不足が原因で筋の相対的負担が強まり、痛みに繋がってしまうということがあります。

脚の神経症状

仙骨は脚にいく神経の出口ですから、仙骨骨折によって神経を傷めてしまうと、脚に神経症状が出てしまいます。

脚の神経症状というのは、脚の痛み、しびれという感覚の異常であったり、脚に力が入らないという運動神経の異常があります。

この予防には、まず仙骨骨折の時点で脚の動きやしびれなどがないかを確認することが大切です。神経症状がありそうであれば、骨折のどの部分が原因なのか?(外傷ですから、ときに仙骨骨折部以外にも原因が隠れていることがあります)を探します。

これらは主治医を中心とした医師の仕事ですが、患者さんやご家族も気付いたことがあれば医師や看護師に伝えましょう。

膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)

仙骨から出る神経は脚だけでなく、膀胱や直腸など排泄に関わる臓器の働きも司っています。

 

とすると、排尿、排便の異常(漏らしてしまったり、なかなか出なかったり・・・)が出てしまうこともあります。 これを膀胱直腸障害と言いますが、これもまずは「気付く」ことが大切です。

骨盤の内臓障害

骨盤の中には膀胱、腸、生殖器、大血管など大切な臓器があります。骨盤骨折のときに、これらの臓器損傷が合併していた場合はその臓器の障害が残る可能性があります。

これらの障害を残さないためには、やはり初期の治療が大切です。それぞれの臓器に対応する専門の医師による治療が大切です。

そういう意味でも骨盤骨折は総合病院による集中的な治療が必要になることがあるということです。

仙骨骨折の後遺症が残ってしまった場合の対処法

これら仙骨骨折の後遺症が残ってしまった場合の対処法についてまとめます。

骨折部の痛みが続く

骨折部の痛みが続いてしまうということに関しては、さきほど3つの原因があるとお伝えしました。

それぞれの対処法について解説します。

骨がくっつかない結果の痛み(遷延治癒、偽関節)

遷延治癒の場合はまだくっつく見込みがあるので・・・待ちます。

治癒が遅れている原因というのがあるはずなんですが、それは骨折がもともと重症ということの場合や骨折部に負荷をかけすぎている場合をまず考えます。

長期に安静にしすぎるのは筋力低下の面でオススメできませんが、骨折部に痛みが走るような動きはできるだけ避けるような工夫は必要ですね。

偽関節はかなり稀ですが、偽関節になってしまった骨をくっつけようとすれば、別のところから骨を移植しないといけません。大手術です。

骨の変形による痛み・仙腸関節の痛み

仙腸関節部に変形が残ってしまったときの痛みであれ、体幹の筋力強化によって仙腸関節を安定化させたり、仙腸関節に炎症を抑えるような注射をすることがあります。

筋力低下による痛み

筋力低下が原因であれば、シンプルですね。トレーニングです。ひたすらトレーニングです。

痛くてトレーニングできないという人もいるかもしれませんが、同じ筋肉を鍛えるにしても方法がいろいろあります。痛いトレーニング種目もあれば、痛くないトレーニング種目もあるかもしれません。

ベストは理学療法士の指導のもとのトレーニングですね。主治医にも相談してみましょう。

脚の神経症状

脚の神経症状が残ってしまった場合の対処法ですが、

しびれや痛みは神経障害性疼痛という痛みになりますので、専用の薬があります。といっても、すごく効くというほどではないので地道に継続していくことになるかもしれません。

改善しないと不安になると思いますが、神経障害は回復に半年、1年とかかることもあるくらいの長期戦ですので、よく患者さんにお伝えするのは、

「治すのは自己治癒力に任せて、あまり治れ治れと強く念じたり、一喜一憂しないようにしましょう。気付いたらあまり気にならなくなっていた。っていうのが多くの回復した人の感想です。」

言い方を間違えて無責任に思われるといやなんですが、神経の過敏状態は回復によくないですから、リラクセーションが重要です。

膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)

膀胱直腸障害が本格的に残ってしまったら、泌尿器科や肛門科などの専門医とともに対処法を検討することになります。

重症の場合は尿道カテーテルや人工肛門が必要な人もいます。

骨盤の内臓障害

骨盤の内臓障害については起こりうる障害が多岐に渡るので一概に対処法を述べるのは難しいですが、これもやはり各臓器に対応した専門家がいますので、専門科をまたがって治療していくことが必要になります。

まとめ

今回は仙骨骨折の治療法と治療期間の目安について解説いたしました。

今回の治療に関する知識をベースに治療を受けていただくと、理解も進んで不安が減って、治癒にポジティブな影響があると思います。

やはり、知らないことは不安ですからね。そういう意味では、主治医に積極的に質問することも大切だと思います。

 

さらに仙骨骨折の注意すべき後遺症とその予防法、対処法について解説いたしました。

かなりツラい後遺症もあったと思いますが、これらを防ぐのにやはり大切なのは初期の治療です。重症な仙骨骨折であれば集中的に治療がしっかりできる病院で治療を受けたいところですね。

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