今回はテニス肘の治療に効果的なオススメのサポーターとその正しい使い方について解説いたします。
テニス肘の治療において、関節や筋肉をサポートするサポーターは効果的です。しかし、その意味を正しく理解し、正しい使い方をしないと効果が損なわれるどころか、逆効果になることすらあり得ます。
と言っても、そんなに難しいことはないので、サクッと学んでいきましょう!
こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。
それではいきましょう!
[st-mybox title=”” fontawesome=”” color=”#757575″ bordercolor=”#f3f3f3″ bgcolor=”#f3f3f3″ borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”]テニス肘の基本をおさらい
肘という関節の仕組み
まず肘という関節そのものの仕組み、構造についてお伝えいたします。
上腕骨(じょうわんこつ)と橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)で非常に安定した関節
肘関節は3つの骨から構成されます。
肘から肩にかけての骨である上腕骨(じょうわんこつ)と肘から手首までの骨である橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)ですね。
この3本の骨が複雑な形状でピタッとはまっているのが肘関節です。
主に曲げ伸ばしの動きを担当
この肘関節は主に曲げたり(屈曲)、伸ばしたり(伸展)という動きを担当します。
それ以外の方向にはほとんど動きません。
手首との共同運動で回内外という回旋運動もある
ただ、手首との共同運動として、回内外という運動においても肘が動いています。
回内外の場合は手のひらが上を向いたり、下を向いたりという動きなので、肘というより手首の動きと思いがちですが、実際はその間の2本の前腕骨が交差するように動いていて、手首も肘も少しずつ動いています。
肘にくっつく筋肉
さて、肘関節周囲にはたくさんの筋肉がくっつきます。
そして、くっつく場所によってその働きが大雑把に分類されています。
外側にくっつく伸筋群(しんきんぐん)
肘の外側にくっつく筋肉は伸筋群、もしくは前腕伸筋群(ぜんわんしんきんぐん)と呼ばれ、手の指や手首を伸ばす、反らす筋肉たちです。
自分の腕を触れてみるとわかるかもしれません。 手首を反らすように力を入れて、盛り上がる筋肉を肘まで触っていくと、外側にくっついているはずです。
また、回外筋(かいがいきん)と言って、手のひらを上に向ける回外運動を担う筋肉も外側についています。
内側にくっつく屈筋群(くっきんぐん)
逆に内側にくっついている筋肉は屈筋群、もしくは前腕屈筋群(ぜんわんくっきんぐん)と呼ばれ、手の指や手首を曲げる筋肉たちです。
円回内筋(えんかいないきん)という手のひらを下に向ける回内運動を担う筋肉も内側についています。
という感じで、外側と内側で手の指や手首におけるまったく逆の働きの筋肉がくっついてるわけですね。
テニス肘とは外側上顆炎のこと
テニス肘とはテニスが原因で起こりやすいからそう呼ばれますがテニス以外にも様々な原因があります。
そして、実際の病名は上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)というものです。
外側上顆は筋肉の付着部=enthesis(エンテーシス)
上腕骨外側上顆炎とは、上腕骨という腕の骨の外側上顆という場所の炎症ということですが、
この外側上顆というのが、さきほどまで解説していた肘の外側の筋肉がくっつく場所です。
つまり、前腕伸筋群(手の指や手首を伸ばす、反らす筋肉たち)がこの外側上顆に付着するということになります。
この筋肉の付着部、すなわち筋肉(腱)と骨の境目あたりのことを、日本語ではそのまま「付着部」、英語ではenthesis(エンテーシス)と呼びます。
筋肉の付着部はストレスに弱い
この筋肉の付着部(=enthesis)は筋張った筋肉と、カタい骨というまったく違う組織のつなぎ目ですから、ストレスに弱いという特徴があります。
それゆえ、繰り返し筋肉を使ったり、強烈に強い力が加わったりしたときに、炎症が起こりやすいんですね。
つまり、上腕骨外側上顆炎は筋肉の付着部というストレスに弱い外側上顆という部分が、前腕伸筋群の使いすぎなどによって炎症を起こした状態ということが言えます。
その前腕伸筋群の使いすぎというのが、テニスの特にバックハンドストロークの繰り返しで起こりやすいですが、
他にも単にデスクワークのマウス操作やキーボード操作などでも1日に何時間もやっているわけですから、テニス肘の原因として少なくありません。
ときに滑膜ひだがはまり込んで痛みが出ている場合もあり
この外側上顆炎が治らずに長引いてしまったときに考えるのが、滑膜ひだ障害(かつまくひだしょうがい)というじょうたいです。これは肘の外側上顆近くの関節の中で、分厚く関節の中に張り出してしまった硬めのひだ(滑膜ひだ、フリンジ:fringeと呼んだりもします)が挟まりこんで痛みを出しているというケースです。
テニス肘と思いきや、この滑膜ひだ障害のことがあり、これはMRIを撮ると発見できることがあります。
[/st-mybox]テニス肘の治療におけるサポーターの位置づけ
テニス肘の治療においてどのような位置づけで、どのような意味合いでサポーターを使うといいのか?ということから入ります。
テニス肘の治療の基本は伸筋群の負荷を減らすこと
テニス肘の治療は、その原因から考えれば、主に2つあります。
- 筋肉(前腕伸筋群)の付着部の炎症を抑えること
- 筋肉(前腕伸筋群)の付着部にかかる負荷を減らすこと
このうち、サポーターは後者である筋肉の付着部にかかる負荷を減らすことに貢献します。
テニス肘に効果が期待できるサポーターは2種類
この筋肉の付着部にかかる負荷を減らすという意味合いで効果が期待できるサポーターは主に2種類です。
エルボーバンドで付着部への牽引力をブロック!
1つ目は通称エルボーバンドと呼ばれるモノですが、シンプルに肘のちょっと前腕よりをぐるっと巻くバンドです。
ここでちょっとおさらいです。
筋肉の働きとして、前腕伸筋群が収縮、つまり縮むことで外側上顆と手を引っ張って、手首や指が動くわけです。
つまり、前腕伸筋群が働くときに常に外側上顆付近の筋肉の付着部は引っ張られる、牽引力がかかるわけです。
当たり前すぎる話ですが、
この筋肉の付着部にかかる牽引力をこのエルボーバンドで巻くことで手前でブロックしてしまおうというのがコンセプトになります。
試しに、外側上顆より指4本分くらい手首寄りの前腕伸筋群を手で押さえて手首を動かしてみてください。テニス肘の人は痛みが違うのが実感できるのではないでしょうか。
これがエルボーバンドの効果です。
エルボーバンドのポイントは位置と強さ
このエルボーバンドの正しい巻き方ですが、そのポイントは2つです。
- 上腕骨外側上顆より指4本分くらい手首よりに巻く
- 巻く強さは強すぎず弱すぎず
まず位置ですが、これは筋肉の付着部より筋腹より、つまり手首よりで牽引力をブロックしないと意味がないので、だいたい指4本分くらい手首よりで巻くのがオススメです。
ただ、人によって炎症の範囲が違うので、痛み具合によって微調整しましょう。
巻く強さは、弱すぎれば牽引力がブロックできませんし、強すぎれば血の巡りが悪くなったり、神経を圧迫したりしてしびれてきたり、痛みが出たりします。
そういう意味で強すぎるのは絶対にダメですが、ただ、弱すぎると意味がなくなるということで絶妙なバランスが求められます。 これは人それぞれ違うので試行錯誤していることになります。
手首を固定するサポーターで筋肉を休める
もう一つ、効果が期待できるサポーターとしては手首を固定するサポーターです。
前腕伸筋群の中でも最も負荷がかかり、痛みの原因になるのが手首を反らす手根伸筋です。この筋肉を休ませるために、手首を固定してしまうというのがこのサポーターの役割です。
まとめ
今回はテニス肘、すなわち上腕骨外側上顆炎の治療におけるサポーターの意味合いと使い方について解説いたしました。
気軽に使えるのがエルボーバンドで、治りが悪いときや痛みが強いときには手首を固定するタイプのサポーターを追加するという使い方がオススメです。
少しでも参考になりましたら幸いです。
この記事へのコメントはありません。