今回は開放骨折の治療について、
救急室や緊急手術の後、
どのような流れで治療していき、
順調なケースではどういう治療期間となるのか?
手術は必要になるのか?
後遺症は残るのか?
など、多くの方が不安に感じる点について
お伝えできればと思います。
こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。
応急処置から約2週間:感染との勝負
細菌感染のリスクが高いと説明しましたが、
この勝負は応急処置でしっかり洗った後も
続きます。
さらに2週間程度は
抗生剤(抗生物質)という
細菌を殺す、抑えるという薬を
点滴で投与していきます。
それと同時に、
キズの処置、観察を続けていきます。
応急処置で、もしキズを縫って閉じていたとしても、
キズ周りが赤みを強く帯びてきたり、
膿がでてきたり
と感染を疑う状態の時は、
再手術でキズをあけて、
中を洗います。
このようなキズの観察で細菌感染を
早めに見つけるということ
さらに、
採血をして、炎症反応という
細菌感染があれば上がってしまうデータが
上がってこないかチェックします。
炎症反応は外傷でも上がりますので、
開放骨折直後は高いです。
そのため、むしろ順調に下がってきているか
という視点で見ていきます。
これも炎症反応が途中で上がってしまうと、
感染を疑います。
この2週間で、
キズもきれいに閉じて、
採血データもほぼ問題なし
という状態になれば、
次の段階です。
応急処置後2週間以降
キズが落ち着いて、
感染がないと判断できれば、
いよいよ、骨折部の積極的な治療もできます。
これはある程度、ズレがあって、
しっかり手術的に戻す必要があるような骨折
開放骨折の場合はほとんど、
このケースですが、
この場合には
骨の中や傍らに
金属インプラントを使った
固定手術を行います。
金属インプラントは
細菌がつきやすいので、
細菌が繁殖しているうちは留置できません。
そのため、この時期まで待つということです。
金属インプラントによる
固定手術は
部位毎に通常の手術と大きく変わりません。
ただ、大きくキズを開かなくてはいけない
プレートという板状の金属に
たくさんのスクリューを入れられるインプラントより、
小さいキズで、開放骨折のキズとは
別のキズから手術できる、
髄内釘というインプラントを使用することが
比較的多いかと思います。
開放骨折では後遺症は残るのか?
順調であった場合の手術までの流れでしたが、
実際は順調にいかないことも多いのが開放骨折です。
特に感染のコントロールがつかないこと
軟部組織、キズの回復に時間がかかること
などが比較的多いです。
そうすると、さきほど述べた約2週間というのも、
さらに伸びてしまいますし、
骨折の固定手術も満足いくものにならない
ということにも繋がります。
そういった意味で、
通常の骨折より開放骨折は
後遺症も残りやすいというのは事実です。
代表的な後遺症をいくつか重症順に列挙いたしますと、
骨髄炎
感染がコントロールつかず、
骨の内部にまで細菌が繁殖した状態です。
偽関節
骨髄炎の結果、
骨がくっつかないということもあれば、
骨をくっつける固定手術が
遅れた結果、
いい位置にしっかり固定できなかった結果、
骨がくっつかない
ということもあります。
骨が最終的にくっつかなかった状態を
偽関節と言います。
変形治癒
骨はくっついたが、
元の状態とは異なり、
変形が残った状態です。
関節拘縮
固定まで時間がかかること、
骨折周りの損傷が大きいことから、
関節がかたくなるということは
かなり多い後遺症です。
痛みの残存
痛みも、
固定まで時間がかかること、
骨折周りの損傷が大きいことが理由ですが、
残りやすい後遺症です。
このように非常に重症型の骨折ではありますが、
主治医はできる限り後遺症を残さず、
もしくは少なくできるように
治療方法を考えていますので、
わからないことや不安なことは
主治医に質問してみてください。
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