肩の骨折

肩の骨折の種類と手術に使うインプラントをわかりやすく解説

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肩の骨折と言っても、肩関節だけでも肩甲骨と上腕骨という2つの骨があり、
さらにどちらの骨も少し複雑な形をした骨で、骨折にもいくつか種類があります。

これらの骨折の種類について解説し、
後半では肩の手術で使うインプラントについてご紹介します。

肩の骨折をしてしまったときに、「手術が必要です。金属を使って固定します。」という説明があって、さらに丁寧な医師であれば、絵を描いたり、模型を使ったりして説明してくれるでしょう。

それでもやっぱり、短い時間の説明で初めて知る手術について十分な理解を得ることは難しいですし、われわれも、イチカラ解説できるはないので、申し訳ないと思うこともあります。

ということで、肩の骨折手術の基本的な考え方、インプラントなどの器具についても解説いたします。

 

こんにちは、肩を専門とする整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

上腕骨骨折の大分類

まずは上腕骨骨折の大きな分類を解説します。長い骨ですから、折れる部位によっても治療やリハビリポイントが違います。

上腕骨近位端骨折=肩ちかくの骨折

まず肩に近いところですね。これを上腕骨近位端と言います。近位というのは身体の中枢に「近い位置」ということですね。

この部位には上腕骨骨頭(こっとう)、解剖頚(かいぼうけい)、外科頚(げかけい)、大結節(だいけっせつ)、小結節(しょうけっせつ)など複雑な形状をしているのが特徴です。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

特に特徴的な大結節骨折についてはこちらで解説しております。

大結節骨折のアンカー手術とリハビリテーションを解説

上腕骨大結節骨折(じょうわんこつだいけっせつこっせつ)とは?ということで解説いたします。聞き慣れないと少し複雑な名前ですが、骨にも細かくいろんな部位があり、部位によって治療法が違いますから、肩の骨折、 ...

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上腕骨骨幹部骨折=上腕の真ん中辺りの骨折

次に真ん中あたりの骨折ですが、これは骨の幹(みき)ということで骨幹部(こっかんぶ)という名前が付いています。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

この骨幹部は特に複雑な肩ではなく、棒状、円筒状です。シンプルでいいんですが、近位端、遠位端に比べれば細いので、ズレやすい、不安定になりやすいというデメリットがあります。

上腕骨遠位端骨折=肘ちかくの骨折

肘近くは、上腕骨の中で中枢から「遠い位置」ですので、上腕骨遠位端と言います。

こちらは肘関節を構成するので、肩関節を構成する近位端同様、複雑な形をしています。

上腕骨近位端骨折の基本を解説した動画

上腕骨近位端骨折の基本をこちらの動画でおさらいしましょう。

肩甲骨の役割を部位毎に解説

次に肩甲骨という骨の役割を解説いたしますが、肩甲骨というのは非常に複雑な形をした骨で、その複雑な形にはそれぞれ意味があります。

その代表的な部位と役割を解説いたします。

肩甲骨関節窩 関節の受け皿 と そこに連なる頚部

まず肩甲骨の関節窩(かんせつか)という場所です。これは肩関節を構成する半分です。肩はボール&ソケットと呼ばれ、球状の上腕骨頭とやや凹んだ平らに近い受け皿側の肩甲骨関節窩から成る関節です。

そのため、肩甲骨関節窩は肩関節の1/2を占める非常に大切な部位と言えます。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

ここが折れてしまえば、関節の形はおかしくなり、軟骨に段差ができてしまえば、スムーズな関節運動はできなくなり、軟骨はどんどんすり減り、痛みは残り・・・

なんていうことになりかねません。

また、この関節窩と肩甲骨体部の間に薄細い部分が有り、これを肩甲骨頚部(けいぶ)と言います。肩甲骨の首にあたる部位ですね。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

ここの骨折は角度がズレると、関節窩の角度が変わることになるので、肩関節の角度が変わることになります。
つまり、ダイレクトに肩に関わる骨折と言えるでしょう。

肩峰 三角筋付着部・肩鎖関節

肩峰(けんぽう)は肩甲骨で一番外側に張り出した部位です。肩というと、この骨を触る人が多いと思います。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

この役割としては

  • 三角筋の付着部
  • 肩鎖関節を形成する

という二つがあります。

三角筋というのは腕を前から横から後ろから挙げる筋肉として非常に重要なわけですが、この筋肉の始点という役割があります。

また、肩鎖関節という肩甲骨と鎖骨から成る関節も、実際は肩峰と鎖骨から成る関節と言えます。

肩甲棘 三角筋、僧帽筋付着部

次に肩甲棘(けんこうきょく)ですが、これは肩甲骨の後ろに長く出っ張る部位です。先ほどの肩峰や次に烏口突起などもそうですが、骨の出っ張りはほとんどが筋肉の付着部になっています。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

肩甲棘で言えば、先ほどの三角筋とさらに肩甲骨と背骨をつなぐ僧帽筋の付着部になっています。

烏口突起 腱・靱帯の付着部

烏口突起(うこうとっき)肩甲骨の関節窩に次いで重要と言えるかもしれません。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

それは、多数の筋と靱帯が付着しているからです。

筋肉で言えば

  • 小胸筋(しょうきょうきん)
  • 烏口腕筋(うこうわんきん)
  • 上腕二頭筋短頭(じょうわんにとうきんたんとう)

がくっついていますし、

靱帯で言えば、

  • 烏口鎖骨靱帯(うこうさこつじんたい)
  • 烏口肩峰靱帯(うこうけんぽうじんたい)
  • 烏口上腕靱帯(うこうじょうわんじんたい)

という靱帯がくっついています。

特に烏口鎖骨靱帯は肩鎖関節の安定性に重要で、これが切れてしまうと肩鎖関節脱臼が重症化します。

肩甲骨体部 インナーマッスル付着部

肩甲骨体部(たいぶ)は肩甲骨の一番大きな部分で、多数の出っ張り「以外」と言ってもいいかもしれません。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

これは比較的折れやすい部位ですが、幅広くインナーマッスルが付着している部位なので、血流のいい筋肉に覆われているという要素が大きく、むしろ骨のくっつきもいいですし、ズレが肩の機能に直接大きく関わるわけでもないので、手術になることは少ないです。

 

 

次に肩の骨折手術がどういうものなのか?どんなインプラント、金属を使うのか?というようなことについて解説いたします。

骨折の手術の基本

肩に限らず骨折の手術の基本を解説いたします。骨折の手術は観血的整復固定術(かんけつてきせいふくこていじゅつ)という名称がつきますが、それは「観血的」=手術で、整復して、固定するということです。この言葉に骨折の基本が含まれます。

ズレをできるだけ元に戻す

まずズレをできるだけ元に戻すということです。これを整復と言います。当然、骨折の治療の一つの目標は元の形で骨をくっつけることですから、ズレを戻さないといけません。

元に戻した状態で金属などでしっかり固定する

そして、元に戻した状態で固定、キープしないと、また、手術後にズレたら何の意味もありません。これを固定と言って、ギプスなどで固定するのを外固定手術などでの固定を内固定と区別したりします。

つまり、金属などを使って、手術で固定することは内固定ですね。

肩の骨折の固定に使う金属・道具

では、この骨折の固定に使うインプラントの解説です。特に肩の手術では多彩な金属が使われ、時には強い糸なんかも使います。

髄内釘(ずいないてい)

まず髄内釘という金属です。

髄内というのは骨髄(こつずい)の中という意味です。骨の構造は外側の硬い殻のような皮質骨とその中の比較的柔らかい骨髄に分かれます。

そして、髄内釘はこの骨髄の中を骨折部をまたいで、ズブズブズブっと釘を入れることで、骨折部を固定してしまおうというものです。

釘といっても、太ければ太いほど固定性は上がるので、比較的太い棒のようなモノが入ります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

メリットは骨の中をズブズブズブっと入れるので、その入れる入り口さえしっかり開ければ、それ以上に傷を大きくあける必要がないという点です。つまり、低侵襲と言えます。

デメリットは関節近くや、関節内骨折のような骨の端っこの骨折は固定は難しいことや、固定が多少アバウトになってしまうことです。

プレート

次にプレートです。プレートとはその名の通り、板状の金属のことですが、板に穴があいていて、その穴からネジを入れることができる仕組みなんですね。

なので、骨に沿ってこのプレートをピタッと当てて、そのプレート越しにスクリューを骨に入れる。プレートを介して、骨折部を固定するということになります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

これはメリット、デメリットが髄内釘の逆のようなイメージです。

骨に沿って当てるということは、そのプレートのサイズ分の傷の大きさが必要と言うことで傷が大きくなってしまいます。(低侵襲手術として、骨の表面を滑らせるようにプレートを挿入して固定する方法もあるにはあります)

しかし、しっかりと骨折部をみながら、プレートを当てることで、ピタッと骨折部を整復することがやりやすくなります。

つまり、低侵襲だけどアバウトな髄内釘に対して、高侵襲だけど厳密な整復固定ができるプレートというようなイメージが基本的なとらえ方でいいです。

スクリュー

スクリュー、つまりネジですね。

これは先ほどの髄内釘でもプレートでも、結局使います。髄内釘にも穴があいていますし、プレートにも穴があいています。この穴越しにスクリューを入れて、髄内釘と骨、プレートと骨を固定するということが基本なので、スクリューは基本中の基本のインプラントと言えます。

しかし、骨折部によってはスクリューのみで固定しちゃうこともあります。多くは骨折した骨の片方が小さいときで、プレートを使うほどでもないというときが多いですね。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

ワイヤー

ワイヤーです。キルシュナー鋼線という名前が付いていて、略してK-wireと呼ばれますが、要は針金です。

スクリューのように太いものを入れると割れちゃうような小さい骨でも、ワイヤーなら数本入れて、固定することもできます。

柔らかいワイヤーと強い糸

また、締結法(ていけつほう)といって、柔らかい針金や強い糸を使って、骨折部位とワイヤー、または骨と腱板、骨と骨など様々なものを結んじゃうような方法もあります。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

まとめ

肩の骨折の種類と基本的な手術の考え方・よく使われるインプラントを解説いたしました。

われわれは骨折部位、骨折型に適したインプラントをチームのみんなと相談したりしながら選び出し、「こういう手術をします」と説明していますが、その基本的な考え方を知っていると、説明も理解しやすいかと思います。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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歌島 大輔

肩/スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療/手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

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