肩関節脱臼

肩関節脱臼を防ぐための筋トレを中心にわかりやすく

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今回は肩関節脱臼を防ぐための筋トレというテーマですが、
肩関節脱臼を防ごうと思う人のほとんどは一度脱臼したことがある人です。

一度も脱臼したことがない人が脱臼を防ぐために筋トレをしようと思うことは少ないので、
特に読んでいただいて得られるものが多くなると思われるのは、
脱臼をしたことがある人、

特に繰り返してしまう、癖になってしまっている人です。

その状態を反復性肩関節脱臼と言うのですが、
その反復性肩関節脱臼の原因から治療まで一通り解説したいと思います。

肩の脱臼がクセになってしまった状態についてはこの記事でまとめて理解してしまいましょう。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

反復性肩関節脱臼とはクセになった脱臼のこと

反復性肩関節脱臼とはこの肩関節脱臼が反復性に起こってしまう状態です。つまり、肩の脱臼がくせになっちゃったという状態です。これは非常に厄介ですよね。

最初は外傷やスポーツでの激しいプレーのときに外れてしまって、それ以後、また同じようなスポーツでのプレーで外れてしまうという状況からだんだんと日常生活でも外れて、しまいには寝ているときに外れるなんて恐怖体験まで・・・なんてことがよく起こります。

反復性肩関節脱臼の原因・メカニズム

この反復性肩関節脱臼の原因というか、そのメカニズムについては主に2つの病変の名前がカギになります。

Bankart病変(バンカート病変)という受け皿側の損傷

一番の原因がバンカート病変(Bankart lesion)と呼ばれる状態です。肩関節は受け皿側の肩甲骨とボール側の上腕骨からなる関節ですが、これは肩関節の受け皿側の骨にくっつく関節唇(かんせつしん)という軟骨が骨から剥がれてしまったり、切れてしまったりという状態になって、受け皿側の前側の壁がなくなっちゃうような状態です。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

前側の壁がなくて、ゆるゆる状態なので、すぐに前に上腕骨頭という腕側の骨(ボール側)が外れちゃうわけです。

Hill-Sachs病変(ヒルザックス病変)というボール側の損傷

もう一つ、ボール側、つまり上腕骨の病変としてヒルザックス病変(Hill-Sachs lesion)というのが起こります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

これは上腕骨頭の後ろ側の骨、軟骨が削れてしまう状態を言います。脱臼の時に受け皿側の前にボール側が外れることが前方脱臼ですが、この外れたときにボール側の後ろが受け皿側の前とぶつかり、削れていきます。

このヒルザックス病変が幅広くできてしまうと、

肩を外旋していったときに、
このヒルザックス病変を支点に、
また外れてしまう

ということが起こってしまいます。

反復性肩関節脱臼の治療 根本的には手術しかないが・・・

この反復性肩関節脱臼のメカニズムというものを理解いただくと、根本的な治療は手術しかないということがわかります。

なぜなら、傷んでしまった関節唇も削れてしまった上腕骨頭も、筋肉ではなく鍛え直すことはできないからです。

そうは言っても、少しでも脱臼を防ぐための方策はあります。

脱臼肢位の理解を深める

まず一番大切なのは、「どうすれば外れてしまうのか?」ということを頭と身体で覚えるということです。

ほとんどの前方脱臼は肩関節の

外転 + 外旋 + 伸展

という動きで外れてしまいます。

この動きを徹底的にしないようにするということが脱臼を防ぐ一番のポイントです。

外転 + 外旋 + 伸展

というと、複雑ですが、

要は腕を肩くらいの高さで、後ろにもっていく、もっていかれるというような動きです。

イメージとしては右肩であれば、右背中側の方に手を持っていこうとするなら、身体ごとしっかり右後ろを向いて、腕だけ背中側にもっていかないということです。つねに右肩の後ろの方のゾーンには嫌なイメージを持っておくことがオススメです。

インナーマッスルを鍛える

また、鍛え直すことができないと言いましたが、肩を補助的に安定化して、脱臼を防ぐ力を持っているのがインナーマッスルです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

このインナーマッスルを鍛えることは、それだけで脱臼を防ぐことができるほどの効果はないにしろ、やったほうがいいのは間違いありません。

ということで、詳しく見ていきましょう。

肩が脱臼する主原因は関節唇=鍛えられない

バンカート損傷については、
関節唇損傷のことだと解説いたしましたが、

とすると、関節唇は軟骨であり、
筋肉ではないので、

筋トレでは鍛えられません。

また、拘縮してしまっているわけでもないので、
ストレッチも関節唇には何の意味もありません。

これが、肩関節の脱臼がクセになってしまったときに、
手術が必要になることが多い理由です。

手術についてはこちらをご参照ください。

肩関節鏡手術
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肩脱臼を防ぐリハビリ・筋トレ

そういう意味では、
肩脱臼をリハビリで防ぐのは無理

と一言で片付けてもいいわけですが、

それでも、少しでも再脱臼の確率を下げる、
もしくは、手術後により確率を下げる

という目的でのリハビリはやはり重要です。

補強としてのインナーマッスルトレーニング

鍛えられる肩の安定化組織としては
肩のインナーマッスル、
腱板筋群があります。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

これらの筋肉は肩の深いところにあって、
収縮することで、
上腕骨頭を関節窩に押しつける力(求心力)
を生み出します。

その結果、肩は安定しますので、

このインナーマッスルのトレーニングは重要です。

このトレーニングについては
こちらの記事もご参照ください。

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肩甲骨トレーニング

もうひとつは、
肩関節の無理な動きで外れますから、

相対的に肩関節に負荷をかけないために、

肩甲骨を大きく動かせるフィジカルを
作り上げる
ということです。

代表的な肩甲骨トレーニングは
こちらのCATというトレーニングですね。

体幹を使って腕を後ろに持っていかない

また様々なスポーツ動作、
日常生活動作の中で、

腕を後ろにもっていかなきゃいけない、
もっていかれてしまう

そんなケースはあります。

 

そのときに、体幹の回旋、スピンを使って、
相対的に腕を後ろにしないという
身体のクセをつける

これはすごく効果的です。

こちらの動画はその最たるものです。
※facebookマークをクリックしてfacebookに移動すると
動画をご覧いただけます

この中年男性は、
身体をスピンさせなければ、
ほぼ確実に腕をもっていかれて、
脱臼していたでしょう。

次に肩関節脱臼を防ぐ策として、テーピングという方法も気になるところです。

肩関節脱臼を防ぐテーピング

それでは肩脱臼を防ぐ
テーピングというモノを考えます。

 

いままで脱臼したことがない選手
つまり、初回脱臼のときには
たいてい、ある程度大きな衝撃が加わっています。

この衝撃を完全に吸収して、
脱臼を防ぐのはテーピングではとても無理です。

また、クセになっている選手の脱臼も
ちょっとしたことで外れることが多いので、

このちょっとしたことをテーピングで
完全に防ごうとするのも難しいです。

要は、テーピングだけで
脱臼を防ぐのは難しい、

補助的に使うべき

という位置づけを忘れないでほしいと思います。

 

特に癖になっている人(反復性肩関節脱臼)は
こちらのBankart損傷(バンカート損傷)や、

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

こちらのHill-Sachs lesion(ヒルザックス病変)というような

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

脱臼しやすい状態が作られてしまっているので、
テーピングだけで完全に防ぐのは難しいことが多いです。

脱臼のしやすさと生活スタイル、スポーツスタイルは?

Kinesio taping in physical therapy - therapist placing kinesio tape to patient's shoulder

Kinesio taping in physical therapy - therapist placing kinesio tape to patient's shoulder

そんななかでテーピングをどう使うか?
というのは

個人個人で違います。

その中でも知っておくべきは

  • どれくらいのことで外れてしまうのか?
  • 日常生活ではどのくらい肩を使うのか?
  • スポーツにおける肩の動きはどうか?

ということです。

それに応じて、
テーピングの強さや
タイプが変わります。

当然、脱臼しやすいのであれば、
テーピングは強くして、伸びないタイプを
ガチガチに貼る方が安全ですし、

ただ、肩の動きが多い場合に、
ガチガチにやることは
パフォーマンスに影響が出ます。

そういった感じで、
ベストバランスのテーピングを探る
ということも必要です。

肩脱臼予防テーピング方法1:肩の伸展外旋を防ぐ固定テーピング

実際のテーピングは
肩の伸展外旋を防ぐという貼り方
するのが基本です。

その方法としては、肩の伸展外旋の逆である屈曲内旋の位置でテープをしっかり巻くことで、
その位置から逸脱しにくい(脱臼肢位になりにくい)状態を作るというモノです。

こちらの動画をご参照いただくと、肩を屈曲(やや肘が前に)そして、肩が内旋(手が肘より前に)という状態で巻いているのがわかりまます。

肩脱臼予防テーピング方法2:簡単にキネシオテープ単独で

前述した通り、テーピングだけで肩関節の脱臼(亜脱臼)を防ぎきるのは困難であり、
補助的に使うという考え方が必要なわけですが、

そう考えると、よりパフォーマンスや利便性を重視して、
伸縮性のテープであるキネシオテープを単独で使用して、

できるだけ簡単に貼れるテーピングを考えてみます。

こちらの動画は伸縮性テープの作用を使って、
肩関節の求心力を高めて、安定性を高めるという目的で行っています。

求心力というのは、肩関節を構成する上腕骨頭(腕の骨の一番上の球状部分)が肩甲骨の関節窩(受け皿部分)に押しつけられるような方向のチカラのことです。

この動画よりもさらに肩関節を内旋させて貼るとより脱臼を防ぐ力が高まります。

 

このテーピングは脱臼を防ぐチカラは落ちますが、
肩の動きは大きく損なわれません。

そういう意味では投球動作など肩の幅広い可動域を要求されるスポーツや活動では
この簡単キネシオテープバージョン、

コンタクトスポーツなど、より肩関節脱臼のリスクが高いスポーツには
ガッツリ固定バージョンという使い分けもいいかと思います。

 

 

さらに、より簡便に外からの策で肩関節脱臼を防ぎたいとなると、
サポーターという選択肢が出てきます。

肩関節脱臼(亜脱臼)防止サポーターはおおきく2種類

テーピングと同様に
サポーターも

これ単体で脱臼を防ぐ
というほどの効果を期待するのは難しいです。

あくまで補助的に使う
ということになるでしょう。

肩の外転外旋伸展を制御するサポーター

肩脱臼(亜脱臼)のメカニズムを考えれば、
この
肩の外転外旋伸展という動きを制限する
そんなサポーターがいいと考えますよね。

ただ、これは肩の可動域を制限するわけで、
特に肩の外旋という動きは
上腕の長軸を軸に回旋する動きなので、
サポーターでも制御が難しいです。

 

 

これについては
一般的に市販されているサポーター
というよりは、

病院などで医師の指示の元、
使用するような

装具

という扱いになります。

そのためまずは主治医に
装具について意見を聞きましょう。

 

この装具は他のスポーツによっては
必要となる動きも制限したり、
スムーズでなくしてしまう

というデメリットがあります。

 

肩を外側から圧迫するだけのサポーター

そんなときに、
外から圧迫するということをメインとする
サポーターが多く売られています。

これは上腕を肩甲骨側に押しつけるような
圧迫力を加えることで、
安定性を高めようとするものですね。

これなら動きの制限は少なくなります。
目に見えた効果とまではいかないかもしれませんが、
理論上は多少なりとも効果を期待できると思います。

結論:圧倒的に肩関節脱臼を防ぐ効果が高いのは手術

ここまでいろんな肩関節脱臼防止策をお伝えしてきましたが、
結局、どの策の時にもお伝えしたとおり、
完全に防ぎきることができるものはありませんでした。

それは肩関節脱臼がクセになる原因が、
まさに肩の中にあって、それは手術出ないと治せないからなんですね。

今現在の肩の手術は関節鏡手術が主流になっています。

arthroscope surgery

手術についてはこちらの記事をご参照ください。

肩関節鏡手術
肩関節脱臼の手術時の全治期間を流れに沿ってわかりやすく

今回は肩関節脱臼、特に反復性肩関節脱臼と呼ばれる クセになってしまった状態について、   そのメカニズム、主な原因を解説し、 それに対する手術方法を できるだけわかりやすくお伝えいたします。 ...

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まとめ

今回は反復性肩関節脱臼について、原因(メカニズム)から治療までをまとめて解説いたしました。

脱臼を繰り返してしまうというのは精神衛生上も、肩の将来的な健康上もいいものではありません。手術の成績は安定していますので、選択肢の1つとして検討していいものだと思います。

関連記事も詳しく解説している部分がありますので、ご参照ください。

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歌島 大輔

肩/スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療/手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

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