
肩の前面が痛い・・・
そんなときはこの上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)かもしれません。
上腕二頭筋と言えば、力こぶの筋肉ですが、この筋肉が肩の痛みの原因になり得るんですね。人の身体は不思議なモノです。
ということで、今回は上腕二頭筋長頭腱炎とは?という基本的なことから一般的な病院でやる治療についてまでを解説いたします。
こんにちは、肩を専門とするスポーツ医整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。
それではいきましょう!
上腕二頭筋はいわゆる力こぶの筋肉
上腕二頭筋はさきほども言いましたが、いわゆる「力こぶの筋肉」ですね。肘を曲げて力を入れるとコブができますよね。これです。

Close up of man's arm showing biceps
上腕二頭筋のはたらきは肘の屈曲と前腕回外
この上腕二頭筋のはたらきは「肘を曲げる」ということがまず第一の働きです。そして、補助的には「前腕回外」と言って、手のひらを上に向ける回転運動を上腕二頭筋も担当します。
上腕二頭筋には長頭と短頭がある
この上腕二頭筋は「二頭筋」というくらいですから、2本の頭があります。それが長い「長頭」と短い「短頭」という名前がついています。
今回はそのうち「長頭」のお話ですね。
ちなみに「短頭」は肩甲骨の烏口突起(うこうとっき)という場所にくっついていますが長頭と違って肩の関節の中には入り込んでいません。
上腕二頭筋長頭は肩で急カーブしている
上腕二頭筋長頭ですが、この長頭は細いスジ(=腱)となって肩の前面を通って、肩の関節の中に入ってから急激に内側にカーブして肩甲骨の関節窩(かんせつか)の上にくっつきます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂
この急カーブが1つ問題なんですね。
上腕二頭筋長頭腱は結節間溝で炎症を起こしやすい
上腕骨という骨の肩関節近くには結節間溝(けっせつかんこう)という凹みがあって、その凹みを上腕二頭筋長頭腱は通ります。この出口で先ほどの急カーブが来るので、この結節間溝で炎症が起こりやすいです。
それは強い力をいれたり、繰り返す肩や肘の動きで、結節間溝付近で上腕二頭筋長頭腱のスジが擦れるような負担がかかるということですね。
上腕二頭筋長頭腱炎の症状は肩前方の痛み
これが上腕二頭筋長頭腱炎の典型的な状態です。
そのため、結節間溝部分に動かしたときの痛みや、押しての痛みなどが出現します。
漠然と肩の前の方が痛い、肩を動かすと痛いとおっしゃる人が多いです。
上腕二頭筋長頭腱炎の診察テスト
Speed test スピードテスト
また、診察のときには、Speed testという診察テストをやります。これが陽性の時は、下のイラストのように肘を伸ばして手のひらを上にして肩を力を入れて抵抗に負けないように挙げていってもらうと痛みが走ります。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂
Yergason test ヤーガソンテスト
感度は低いですが、肘を曲げた状態で前腕を回外していく力に診察する人間が抵抗していくテストでも痛みが出ることがあります。
上腕二頭筋長頭腱炎の治療
この上腕二頭筋長頭腱炎の治療としては、
- 安静
- テーピング
- ストレッチ
- 注射
- 手術
など様々な選択肢があり、それぞれ組み合わせながら行っていくことになります。
詳しくはこちらをご参照ください。
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上腕二頭筋長頭腱炎の完治へ向けた治療(注射など)を解説
今回は上腕二頭筋長頭腱炎という肩の前側の痛みに対する効果的な治療法について解説いたします。 上腕二頭筋長頭腱炎のテーピングやストレッチなどをこちらのサイトでも解説してきておりますが、実際にどのような考 ...
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まとめ
今回は上腕二頭筋長頭腱炎について解説いたしました。長ったらしい名前ですが、肩の痛みの原因としてかなり高い確率で隠れているものと考えています。
肩の前面が痛いというようなときには、この可能性もありますので、まずは整形外科医の診察を受けてみてはいかがでしょうか?
少しでも参考になりましたら幸いです。