五十肩の治し方

五十肩の治し方:整体が危険な理由と唯一有効なマッサージとは?

投稿日:

今回は五十肩の治し方として、「いわゆる整体」・・・それはつまり、関節を無理矢理バキバキやるような古典的な整体が五十肩では特に危険であるということと、もみほぐしたり、さすったりするマッサージの中で唯一、有効だと考えられるマッサージ部位について解説したいと思います。

それを理解するには五十肩というものについて、いったい、五十肩とは何なのか?

これを深く知っていただくことが大切だと思いますので、前半はそういった基本的な内容になっています。

 

五十肩(四十肩)・・聞いたことがないという人は少ないであろう、聞き慣れた言葉です。もちろん、四十というのは年齢を表しているわけですが、五十肩(四十肩)とは何なのか?ということに対してどれだけの人が明確に答えられるかというと、かなり限られるのではないかと思います。

ということで、まずは五十肩(四十肩)とは?ということで解説したいのですが、肩とはなんぞや?という部分から個人的な見解まで、ちょっとクセのある解説をしてみたいと思います。

 

こんにちは、肩を専門とするスポーツ医整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩とはなんぞや?

まず肩とは?というところから入りたいと思います。

肩とは何でしょうか?

腕の付け根・・・ですよね。

哺乳類の進化前でいえば、前脚の付け根でもあります。

進化の過程で二足歩行になって、この前脚は腕となり、体重を支える役割からモノを扱う役割に変化しました。

そのなかで付け根、つまりベースである肩の役割も大きく変わりました。

シンプルに言えば、強さより柔らかさが必要になったということですね。

下のモノや上のモノなどに手を伸ばして、掴んだり、モノを投げたり、何かを叩いたり、引っ張ったり、多様な腕の動きを肩を中心に行うことが必要になっていったんですね。

肩は最も大きく動くゆえに不安定

そして、肩はすべての関節の中で最も幅広く、多方向に動く関節となりました。それを達成するために形をどんどん変えていき、肩の受け皿側の骨、軟骨の形は非常に浅いお皿になりました。
それが肩甲骨関節窩という部分です。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

浅いお皿(肩甲骨関節窩)に丸いボール(上腕骨頭)が乗っているような形状なので、非常に幅広く動かせる代わりに、非常に不安定で、ボールがお皿から落ちれば、要は脱臼です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

つまり、大きく動かせる代わりに脱臼しやすい関節になってしまったわけです。

大きな動きを損なわず安定させる役割を担うのが?

そんな中で、他の関節に比べれば遥かに脱臼しやすい関節なのは事実ですが、それでもほとんどの人は脱臼しませんよね。

それは、外れないように頑張ってくれている軟部組織(柔らかい組織)があるからなんですね。

それが腱板(けんばん)というインナーマッスルと関節包(かんせつほう)という膜になります。

腱板(インナーマッスル)

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

腱板というのは肩の深いところにあるインナーマッスルの総称です。この筋肉がしっかり働くことで、肩関節のボールを受け皿に引きつけるようにして安定化しています。

関節包(かんせつほう)

関節包というのは関節を包む膜で、所々分厚くなって関節包靱帯(かんせつほうじんたい)という名前で関節が外れないように支えてくれています。

この腱板と関節包(関節包靱帯)が骨のような硬い組織じゃなくて、軟部組織だからこそ、柔軟な幅広い動きを損なわずに脱臼しないようになっているんですね。

でも、それゆえ、その腱板や関節包は生まれてからずっと涙ぐましい苦労をしていると言えます。

どんな関節にも寿命がある

人に寿命があるように、関節にも寿命があります。

膝は軟骨が先に限界になる

例えば、膝であれば日々の体重を支える負荷に対して限界がくると軟骨がすり減ってきます。そして最終的には人工関節の手術が必要になることがあります。

肩の場合はそれが腱板であることが多い

肩の場合はその限界の1つが腱板であることが多いんですね。限界というと言い過ぎですが、腱板が耐えられずに切れてしまうという腱板断裂は想像以上に多くの人に起こっています。

軟骨は物言わぬ、腱板は物言う 血流の違い

軟骨は血の巡りの悪い蒼白の組織です。
それに対して腱板は白いスジですが、周囲は血流豊富な滑膜に覆われていて、軟骨に比べれば血の巡りがいいと言えるでしょう。

その違いは、危険サインの出し方に出ます。

軟骨は血の巡りが悪いので、傷んできていても、危険サインの典型である炎症や痛みが出るのが遅れます。膝がいたくなった頃にはすでに軟骨はだいぶすり減っていたということはよくあります。

それに対して、腱板は切れてしまうだいぶ前の変性(ちょっと脆くなったり、みずみずしさを失った状態)で炎症を起こして、痛みを引き起こします。腱板炎という状態です。

そういう意味で
「軟骨は物言わぬ、腱板は物言う」
ということです。

四十肩・五十肩の意味は?(個人的見解)

ここからは僕の見解ですが、物言う腱板(もしくは関節包)が、物言うのが大抵40-50歳代なんじゃないかなということです。

つまり、これ以上無理させると腱板断裂を起こしちゃいますよ!っていうサインを早めに出しているんじゃないかなということです。

実際、腱板断裂はそれより遅れて70,80歳代に多いです。随分と先の心配をしている気もしますが、四十肩、五十肩の反応で関節包を少しずつカタくして(それが重症になったのが凍結肩という状態ですが)、肩の動きを意図的に減らして、将来的な腱板断裂を防ごうとしているのかなと勝手に推測しています。

腱板損傷(断裂)に有効なテーピング方法と判定テストを解説

今回は肩腱板損傷において、 テーピングは有効なのかどうか? 有効とすれば、方法は? ということについて、 肩腱板損傷の基本をおさらいしながら、 丁寧に解説いたします。 こんにちは、肩を専門とするスポー ...

続きを見る

 

 

では、実際に痛みがどこから来ているのか?という原因と

実際に中で何が起こっているのか理解した上で、じゃあ、これはなぜ起こってしまうのかという本当の意味での原因について考察を交えて解説していきます。

五十肩とは?

肩関節周囲炎から凍結肩という一連

この五十肩・・・

実際に肩では何が起こっているのか?

なんで痛いのか?

というと、大雑把に2つの現象が一連の流れで起こっていると考えています。

そのうちの1つが肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)です。
その名の通り、肩関節の周りに炎症が起こるという状態です。

そして、次に起こるのが凍結肩(とうけつかた)という肩が凍結したかのようにカタまってしまう状態です。

肩関節周囲炎と言ってもいくつかある

肩関節周囲炎、つまり肩の周りが炎症を起こしている状態ですが、周りというのは、これまたアバウトな表現です。それには複数の病態が含まれます。

肩峰下インピンジメント症候群

多いのは肩峰下インピンジメント症候群と言って、肩峰という肩甲骨の骨とその下の腱板というインナーマッスルの間のスペースに摩擦による炎症が起こる状態です。

こちらで詳しく解説しております。

肩のインピンジメント症候群の症状と治療を解説

今回は肩関節の痛みの1つの原因である インピンジメント症候群について 解説いたします。 肩の腱板損傷との関連もあるのが インピンジメント症候群です。 そこらへんも含めて できるだけていねいに解説いたし ...

続きを見る

腱板疎部損傷

ちょっとマニアックですが、肩の前方の腱板と腱板の間に腱板疎部というやや薄い場所があります。この腱板疎部の損傷や炎症も痛みの原因になります。

上腕二頭筋長頭腱炎

また、肩の前方の痛みの原因として、多いのが上腕二頭筋長頭腱炎です。これは力こぶの筋肉が肩の関節の中に入るところで炎症が起こります。

上腕二頭筋長頭腱炎とは?その判定テストを解説

肩の前面が痛い・・・ そんなときはこの上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)かもしれません。 上腕二頭筋と言えば、力こぶの筋肉ですが、この筋肉が肩の痛みの原因になり得るんですね。 ...

続きを見る

凍結肩≒肩関節包肥厚

凍結肩というのは、主に肩の関節包(かたかんせつほう)という関節を包む膜が分厚くなって(肥厚)、カタくなっているため、肩が上がらない、肩が回らないという、可動域制限がメインの症状になってきます。

肩に限らず関節は閉鎖空間になっていて、きれいな関節液で満たされていて、スムーズな関節運動を助けています。

その閉鎖空間の隔壁が関節包というわけです。

特に肩においては、脱臼しやすい形状にもかかわらず、最も幅広く動く関節であるため、常に関節包は伸ばされる刺激、負担を強いられています。

 

そんな中で、先ほども述べたような肩関節周囲炎が起こると、身体の防御反応として、肩を守ろうとします。
その結果、隔壁である関節包は分厚く、カタくなり、「安静にしろ!」というサインのつもりなのか、肩の可動域を狭めていくことになります。

なんでこういったこことが起こるのか?(本当の原因)

なぜこのようなことが、それも年齢にして40歳、50歳にして起こりやすいのか?ということですが、

真相はまだ不明です。

ただ、考えてみると、シンプルに加齢性の変化であれば、もっとご高齢の方に肩の痛みが増えていくことになると思います。

実際に整形外科診療をしていると、高齢の方と40–50歳くらいの方と、肩の痛みで受診される患者さんは、同じくらい多くいらっしゃいます。

しかし、その原因は調べてみると、かなり異なります。

ご高齢の方はレントゲン、MRIを見てみると、腱板が切れてしまっている腱板断裂や軟骨がすり減っている変形性関節症が多くなっています。それに対して、40–50歳くらいの方はそういった明らかな画像上の変化は少ないです。これがいわゆる五十肩ということになるわけですが。

そういう意味では五十肩の原因は、加齢性に関節が脆くなってきている中で肩関節は相変わらず酷使されているという状況に対する危険サインとして炎症を起こし、カタくしているという推測をしています。

要はこれ以上無理して使うと腱板が切れるよ!とか、軟骨がすり減ってくるよ!というサインを発して、少しは肩のことも考えていたわってあげてね!ってことかもしれない

そのように個人的には考えています。

ですから、四十肩、五十肩だから仕方ないで済ませずに、一度、診察を受けて「肩のいたわり方」を一緒に相談してみるのもいいかもしれませんね。

五十肩に対する整体治療の危険性

ここまでマニアックな解説にお付き合いいただいてありがとうございます。

五十肩というのが見えてきたと思います。

 

そんな五十肩で肩が痛い、肩が上がらない、回らない

という人に対して、整体治療をしたらどうなるかを考えてみましょう。

 

整体というのはwikipediaによると

整体(せいたい)とは、日本語では主に手技を用いた民間療法代替医療を指す。日本語としては、大正時代に用いられるようになった用語で、アメリカで誕生したカイロプラクティックオステオパシースポンディロセラピーなどと日本古来の手技療法と組み合わせたものを、「整体」や「指圧」と名付けたのが始まりのようである[1]。現在、俗に用いられる意味では、カイロプラクティック(脊椎指圧療法[2])に似た骨格の矯正(主に脊椎)を目的とした手技療法を指して使われることが多い[3]脊椎骨盤肩甲骨四肢上肢下肢)など、からだ全体の骨格関節の歪み・ズレの矯正、骨格筋の調整などを、手足を使った手技と補助道具で行う技術およびその行為[要出典]を指しているという意見もある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B4%E4%BD%93

ということで、相変わらずわかりにくいわけですが、

要は格の矯正を目的にした手技療法ということだろうと思います。

 

ですから、典型的には首をコキッとして、矯正するような手技がイメージされますね。

 

実際に整形外科医が整体師と関わることは少ないので、
このイメージ通りの整体手技がどれほど行われているのか?は不明です。

 

ただ、ここまで五十肩について学ばれた人であれば、
骨格の矯正という目的そのものが五十肩とは合っていない、
メカニズムとして改善するとは思えないということは、おわかりと思います。

 

さらに、整形外科医としては
あの首をポキッとやる手技も、頚椎を危険にさらすデメリットを越えるメリットはないと思うので、やめていただきたいと思っています。

肩関節を徒手療法で動かしていくとすれば、
やり方によっては炎症を強めてしまいます。

 

肩を守ろうと関節包などを炎症させているのが五十肩とすれば、
そこで無理に肩が動かされたときに、余計に炎症を強めてしまうわけですね。

 

また、炎症が弱まった時期で、凍結肩という硬くなっている時期であれば、
肩を徒手的にも動かしていくリハビリテーションを行うわけですが、
それも整体師、柔道整復師という職業の人は専門外です。

専門は理学療法士と作業療法士ですから、危険と言わざるを得ません。

五十肩の治し方:唯一、有効と考えられるマッサージ

では整体治療ではなく、マッサージだったらどうか?

ということですが、

 

まず、炎症を起こしている肩関節周囲をもみほぐす、
それも強く揉んだりするのは、それも炎症を強める逆効果になりますので、
やめたほうがいいですね。

 

しかし、五十肩のように肩関節に炎症があり、硬くなっている人は、
たいてい、肩甲骨自体の動きがよくありません。

肩甲骨が硬くこわばっているようなイメージですね。

 

ですから、肩甲骨回りの筋肉・・・

それはつまり、肩こりする部位と言ってもいいですが、その肩甲骨周囲筋を中心にマッサージして、それらの筋肉が柔らかくなって、

さらにその筋肉を上手に使えるようなエクササイズも組み合わせれば、

肩関節の動きも改善していって、
自然と炎症も落ち着いていく。

なんていう好循環に入る可能性があります。

 

つまり、唯一有効なマッサージというのは実は肩こりのマッサージと同じ・・・

と極論言えてしまうわけですね。

 

ちなみに組み合わせるべき肩甲骨周囲筋のエクササイズの代表例として
CATと呼ばれるエクササイズの動画をご紹介しておきます。

まとめ

今回は五十肩の治し方として、整体やマッサージに対する考え方をお伝えしました。

その前段階としてかなり詳しく五十肩そのものを深掘りしましたので、参考にしていただければ幸いです。

Mail Magazine

より深い医学情報に加え、タフなフィジカルマインド
そして圧倒的なパフォーマンス・成長必要なすべてをお届けします。

こちらにメールアドレスを入力してご登録ください。

  • ※登録後、メールが届いていない場合は、迷惑メールフォルダに入っている場合がございますので、ご確認ください。
  • ※登録されたメールアドレスには、歌島大輔公式メールマガジンが配信されます。
    不要と判断された場合、メール下部の配信解除URLから簡単に配信を解除できます。

診察のご相談(神奈川/東京/静岡)

肩の診察・相談

今すぐCHECK

こんな方におすすめ

  • 肩を動かすと痛い
  • 腕が痛い
  • 肩が痛くて眠れない
  • 肩が上がらない
  • 肩が回らない
  • 腱板損傷と言われた
  • 肩が脱臼した
  • 鎖骨が骨折した

スポーツ復帰への
診察・相談

今すぐCHECK

こんな方におすすめ

  • スポーツ復帰の不安
  • パフォーマンス低下の不安
  • スポーツに支障がある
  • 肩以外の部位の相談希望

オススメ!

メールマガジン(メルマガ)はこちら

今すぐCHECK

得られる情報

  • 医師と病院の使い方(無料)
  • 革命的スポーツ復帰術動画講座(無料)
  • マインドの使い方有料教材
  • タフなフィジカルの作り方有料教材
  • パーソナルメディカルコーチングの案内
  • 日々の医学情報
  • 有名スポーツ選手の心と身体の秘密
  • この記事を書いた人

歌島 大輔

肩/スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療/手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

オススメ記事

肩関節鏡手術 1

肩という関節の治療を専門としている整形外科医は日本にどのくらいいると思いますか? 実は、整形外科医というのは日本全国に内科、外科に次いで多いんです。 意外かもしれませんね。 内科や外科なんていうのは、 ...

2

スポーツの怪我を予防するときに、まず考えるのは、トレーニングをして、ストレッチをして・・・身体を強く、しなやかにしていこうとします。 これは当然必要なことなんですが、 それだけではスポーツにおける怪我 ...

3

今回は肉離れをどう予防するか?ということの基本的な考え方から、具体的な予防方法までを解説いたします。 肉離れはスポーツパフォーマンスが上がれば上がるほど、リスクも高まると言っていい、厄介なケガです。 ...

4

今回は肩の腱板損傷の特に保存療法におけるリハビリテーションについて解説します。肩を専門とした外来をしていると、当然なんですが、肩腱板損傷の患者さんを多く診察します。 腱板損傷には程度があって、ちょっと ...

-五十肩の治し方

Copyright© 歌島大輔 オフィシャルサイト , 2019 All Rights Reserved.