足首捻挫

足首の靭帯が伸びる? 切れるとは違う?靱帯損傷の治療法を専門医解説

更新日:

スポーツ現場でよく耳にする「靭帯が伸びる」という言葉ですが、特に足首の靭帯で捻挫をしてしまったときに使われます。

実際に靭帯というのは伸びることがあるのでしょうか? 靱帯断裂とは違うのでしょうか?

そういった基本的なことから、では、足首の靭帯が伸びることに対してどのような治療があるのか、完治期間はどれくらいなのか?ということについて解説いたします。

こんにちは、整形外科医でスポーツメディカルコーチの歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

足首の靭帯についておさらい

靱帯は関節が外れないように支えてくれているスジ

足首に限らず 靱帯(じんたい)の主な役割は

関節が外れないように、 グラグラしないように 想定外の方向や範囲の動きをストップしてくれる そんな支えとなっているスジ

と言っていいと思います。

それに対して、 筋肉自ら収縮して、 関節を動かすことができるスジ

は、その筋肉の先端、 骨にくっつくところのカタいスジ (=筋肉の一部)

と言えます。

足首の大切な靱帯を紹介

それではそんな靱帯の中で、 
足首における大切な靱帯を
覚えてしまいましょう。

この足首の靱帯は 外側と内側の靱帯が特に重要で、 足首の捻りの動きに対して 適度にブロックしてサポートしています。

外側の靱帯は3+1

足首の外側の靱帯は3+1個が 重要と覚えます。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第一版 医学書院

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第一版 医学書院

3というのは、 腓骨(ひこつ)の先端である外果(がいか) (=そとくるぶし) にくっつく3つの靱帯のことで、

  • 前にくっつく前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)
  • 下にくっつく踵腓靱帯(しょうひじんたい)
  • 脛骨との間の脛腓靱帯(けいひじんたい)

の3種類です。

さらに、もう少し前の、 足の甲に近いところを走るのが +1になる

二分靱帯(にぶんじんたい)

です。

この4つを覚えておけば十分でしょう。

内側の靱帯は1つ

それに対して、内側の靱帯は 1つ覚えておけば大丈夫です。

それは三角靱帯(さんかくじんたい) といって、

うちくるぶしである 脛骨先端の内果にくっつきます。

画像引用元:スポーツ外傷・障害の理学診断・理学療法ガイド 第2版 文光堂

画像引用元:スポーツ外傷・障害の理学診断・理学療法ガイド 第2版 文光堂

足首の靭帯が伸びるとは?

「足首の靭帯が伸びる」と言ったときに、実際に、靭帯がびよーんと伸びているのか?

というと、

そんなゴムみたいな組織ではありません。

実際には最低でも部分断裂が起こっている

この足首の靭帯はおさらいしたように、外側と内側にくっついていて、足首が捻られる動きの時に、靭帯がピーンと張って、脱臼しないように踏ん張ってくれています。

しかし、強い力にはそれも耐えきれず、 いわゆる「捻挫」を起こしてしまいます。

 

これは靭帯でカバーできる力を越えたときに、一部、靭帯が切れてしまっている。要は部分損傷が起こっています。

時に重症なケースでは靭帯の完全断裂にまで至っていることがあります。

部分断裂が治っても元通りではない≒伸びる

部分断裂にしても、完全断裂にしても靭帯には自己修復能力(自然治癒力)があります。

その結果、靭帯が切れっぱなしで、関節がグラグラという状態にはならずに治ってくれるわけですが、

それでも、完全に元通りというのは難しいわけです。

 

もともと靭帯というのはキレイで多少の柔軟性とそう簡単には切れない強さを持っているわけですが、

損傷してしまったあとは、その損傷部はすこしいびつな線維である「瘢痕(はんこん)」と呼ばれるもので置き換わります。

この「瘢痕」はもとの靭帯よりも少し柔軟性も強さも劣ります。

 

そして、損傷の大きさによっては、

もとの靭帯+損傷部の置き換わった瘢痕

の長さが

もともとの靭帯の長さより長くなっていることが多いです。

 

そうです。これが「靭帯が伸びる」と表現される正体と言っていいかもしれません。

靭帯が伸びると切れるの違い

ここまでを整理いたしますと、

 

捻挫によって靭帯は多少なりとも「切れる」

その「切れた」部分は自己治癒力によって治るが完全ではなく、

弱くカタい瘢痕によって埋まる。

そして、その結果、靭帯+瘢痕の長さがもとの靭帯より長くなる

それを「伸びる」と表現する。

 

つまり、捻挫によって靭帯が切れた結果、伸びて治る

というのが正確な捉え方だと思います。

足首の靭帯が伸びたときの治療法と完治期間

この足首の靭帯が伸びたときの治療法と完治期間について、気になるところだと思いますので、解説いたします。

足首の靱帯が伸びたときの治療法 

足首の靱帯損傷には 重症度や経過によって 治療法は変わってきます。

そういう意味ではこの治療法は 最も一般的かつ理想に近い治療経過のひとつと思っっていただければと思います。

一般的な治療法は次の3ステップです。

1.しっかり診断と重症度を判定

まずはどこの靱帯をどのくらい傷めてしまったのか?

はたまた、骨は大丈夫なのか? 軟骨は大丈夫なのか?

また治療の経過として、 痛みや腫れの改善具合はどうなのか?

 

 

現状を正確に把握できないのに、 いい治療なんてできませんから、

非常に重要なステップです。

2.挙上+圧迫+安定化+ゆっくり底背屈運動

次に急性期治療といって、

治療の最初のステップですね。

受傷直後の応急処置から 1−2週間くらいの治療です。

まずは応急処置の基本であるRICEです。

知らない人がかなり少なくなってきた かなり有名なものですが、

それでもまだ議論があります。

こちらの動画で解説しておりますので、 ご参考になれば幸いです。

特に大事なのは

挙上:できるだけ高く挙げること

これは心臓との高低差が大切です。

心臓より高くすることで、 足首に炎症の結果たまった水分を 心臓に戻しましょう。

というイメージです。

圧迫

圧迫することで、 これも溜まった水分を追い出す というイメージです。

このRICEをしないと、 足首の靱帯損傷後の炎症の結果、 どんどん足首が腫れて、むくんで、 血の巡りが悪くなって、 治りが悪くなってしまいます。

安定化

次に足首を安定化させるということです。

RICEの中に Rest:安静というのがあります。

これは

Fix:固定 ではないということがポイントです。

固定はせずに安静を保つ

つまり、足首は動かしてもいいが、 過度な負荷は避ける

ということで、

足首を安定化させるサポーターや テーピングを行うことがオススメです。

 

足首を固定することもある

とはいえ、靱帯損傷が重症な場合はギプスやシーネなどを使って、足首を短期間(1-2週間)固定することがあります。

その方が、徹底安静となり、腫れや痛みの改善に望ましいケースがあります。

ゆっくり底背屈運動

足首はある程度動かすことが 靱帯の修復には有利に働くので、

ある程度動かしたいわけですが、

特に初期から動かしたいのは

底背屈、 つまり、つま先の上下運動です。

これをゆっくりでも初期から 少しずつ開始することで 以下の効果を狙います。

  • 腫れやむくみを減らす
  • 関節がカタくならないようにする
  • 靱帯に適度なストレスがかかり修復に有利になる

3.再発予防のリハビリ

そして、急性期を過ぎて、 痛みや腫れが引いてきたら、

さらにリハビリの種目や強度を増やしていきます。

足首を内外にも動かしていきますし、 筋力もどんどん鍛えていきます。

足首の靱帯が伸びたときの完治期間

この足首の靱帯の治癒は 3つの段階、ステージを上っていきます。

炎症ステージ

受傷直後から1週間前後です。

これを僕は炎症ステージと 呼んでいますが、

受傷直後に 靱帯やその周りから 出血が起こり、

腫れていきます。

そして、大急ぎで 身体が治そうと炎症性物質を 足首に運んできて、

さらに腫れていきます。

 

修復ステージ

そして、1週間くらいから2–3週の間に、 靱帯が修復されて、 炎症が落ち着いてきます。

痛みもそれにともなって かなり改善してきます。

しかし、まだ完全な修復ではないので、 足首に過度な負荷、ストレスがかかると 痛みがでて、

また炎症ステージに戻ってしまうことも ありますので、

負荷のコントロールが大切です。

復帰ステージ

そして、足首捻挫の再発予防や パフォーマンス発揮に向けて

リハビリ、トレーニングをやっていく 復帰ステージです。

ここでは靱帯の修復は ある程度完了していて、

その周りの筋肉の強さや 関節の柔らかさ、 関節周りの神経のセンサー感度

これらを向上させていくステージです。

 

これが2−3週以降から始まります。 4−8週でスポーツ復帰を目指すのが一般的です。

足首の靱帯断裂(完全断裂)の症状

伸びたという程度より重症の、足首の完全断裂の症状ですが、

部分断裂に比べれば、

  • 痛み
  • 腫れ
  • 内出血

などが強くなる傾向があります。

また靱帯の役割を考えると、 完全断裂では

足首の関節自体が不安定になります。

これは特に捻りの動きに弱く その不安定性によって、

運動中や運動後の痛みや腫れに繋がったり、 捻挫を頻繁に起こしてしまったりします。

いくつ靱帯が切れているか?

ただ、完全断裂でも どこまで不安定性がでるかは ケースバイケースです。

1つの要素は

いくつの靱帯が完全断裂しているか? ということです。

外側の靱帯であれば、

  • 前距腓靱帯
  • 踵腓靱帯
  • 後距腓靱帯
  • 脛腓靱帯
  • 二分靱帯

など多くの靱帯があって、 このうち、1つだけ切れている という状態では、

大きな不安定性は出現しないこともあります。

そういう意味で、 完全断裂でもどの靱帯がどれだけ切れているか?

という点も重要と言えます。

足首の靱帯断裂で手術が必要なケース

足首の靱帯には 自己修復能力があります。

つまり、 捻挫≒靱帯損傷≠手術しないと治らない

ということです。

靱帯損傷も自然と修復される

ということが期待できるわけですが、

それが期待できないこともあります。

それは一般に修復される期間である 受傷後1ヶ月以降に、 足首の不安定性が残ってしまう

つまり、靱帯が治っていないから 足首がグラグラするという状態

これが手術が必要なケースです。

足首の靱帯を縫合する【亜急性期治療】

まずシンプルに 切れてしまった靱帯を縫ってしまおう

ということを考えますよね。

骨から剥がれるように切れることが多く、 アンカーという骨に埋め込むスクリューで 縫う糸を固定します。

最近はアンカーも発達してきていて、 縫い目を作らずに 靱帯に通した糸を固定してしまう というものもあります。

関節鏡下靱帯修復術

arthroscope surgery

僕自身、肩の専門でもあるので、 関節鏡という内視鏡は使い慣れていますが、

この関節鏡のスキルはどんどん発達し、 今では関節の外でも 内視鏡で手術ができます。

この足首の靱帯の手術も、 細めの内視鏡を使って手術をする人が 増えてきています。

メリットは

  • 傷が小さいこと
  • 術後の痛みが少ない
  • 早期に動かせる
  • 復帰が早い

ということが期待されています。

足首の靱帯を作り直す【慢性期治療】

靱帯を縫合するには 切れてしまった靱帯の状態が大切です。

あまりに時間が経ちすぎて、 靱帯の線維が縫えるレベルでないような バサバサ状態だったり、 カチカチ状態だったりすると、 この方法はとれません。

そんなときは

靱帯再建術

という方法がとられます。

「再建」とは作り直す ということです。

いろんな方法がありますが、 主流は似たような組織、 例えば、膝の腱という筋肉の先端部分を 足首に移植してしまう

という方法ですね。

当然、こちらのほうが大きな手術になりますが、 残っている靱帯の状況にかかわらず 手術が可能ですので、

慢性的に足首が不安定で 痛みが残ってしまう、

あまりに頻繁に捻挫してしまう

なんてときに、 様々なリハビリと組み合わせて、 この手術を行うことがあります。

まとめ

今回は足首の靭帯が伸びるということについて、

実際は捻挫をして靭帯が切れて、治る過程で、どうしても伸びてしまうということを解説しました。

 

そして、そうなったときにどのような治療がいいのか?

ということについても解説いたしました。

このように足首の靭帯は伸びて、結果として癖になってしまう厄介なケガです。

ですから、捻挫をしてしまったときには甘く見ずにしっかりと治療することと、さらに、再発予防の視点をいれつつ、これを機にフィジカルの再建(立て直し)を考えていっていただければと思います。

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歌島 大輔

肩/スポーツ領域を得意とする整形外科専門医としての診療/手術・スポーツパフォーマンスアップ、ケガ予防トレーニング等のアドバイス・マインド(脳と心・メンタル)の使い方を指導するコーチングを行っています。

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